柳谷智宣のAI ウォッチ!
調べ物のデフォルトは超絶便利な検索特化型の生成AIになるかも! 知っておくべき活用法と利用する際の注意点
Google先生を超える!? 検索特化型AIの実力[後編]
2024年11月20日 09:00
検索機能を備えた生成AIが人気だ。
ライターの筆者も「ChatGPT」だけでなく、「Perplexity AI」を使うことが多くなっている。検索特化型生成AIは、ほかにも「Genspark」や「Felo」といったサービスがあるし、遅ればせながらOpenAIも10月末に「ChatGPT search」機能を公開した。今回は、これら検索特化型生成AIの活用方法と利用する際の注意点を解説する。
検索特化型生成AIは、その場で検索し、ヒットしたWebページの内容をもとに出力を生成してくれる。何かについて知りたいときに解説してもらってもよいし、最新情報でリストや比較表を作成してもらってもよい。筆者が特に便利だと思う使い方をいくつか紹介しよう。
世に情報が少ない最新の情報について調べる
本当に出たばかりの概念や手法などを学ぶ際、普通に検索するだけだと、日本語の情報がほとんど見つからないことがある。まともな情報があるのは1~2サイトだけで、ほかはその引用やコピーばかりということも多い。英語で検索をかけて調べていたが、それにも限界がある。
そんなとき「Perplexity」なら、ばちっと目当ての情報をまとめてくれる。ソースへのリンクが付いているので、欲しい情報があるパラグラフの数字をクリックし、元ネタのWebページを熟読すればよい。
ただし、普通にGoogle検索して見つからない情報なので、適当な内容をひっかけて、それを元に間違った回答をしてしまうこともある。「ChatGPT」を使うときと同じく、出力を精査するスキルは必須だ。
ちなみに、筆者は何かのサービスのローンチ日を調べることも多い。例えば「●●年にスタートした■■は……」などと書くためだ。しかし「■■のローンチ日」とGoogle検索しても、新バージョンのリリース日などがヒットしてなかなか欲しい情報にたどり着けないことがある。そんなときに「Perplexity」ならシンプルに答えてくれるのでありがたい。
その際、ファクトチェックする場合は、個人ブログに「●●年にスタートした■■は……」などと書いてあるソースを“外す”こと。できる限りリリースやニュースといった元ネタで裏取りすることをお勧めする。
手間のかかる比較表もサクッと作成してくれる
検索特化型生成AIは表を作成してくれるのも重宝している。
例えば、スマホの新モデルと旧モデルを比較するスペック表などをサクッと作ってくれるのだ。記事を作成する手間が大きく削減できるだけでなく、個人で購入するかどうか悩んでいる商品を比較する際にも役立つ。
「比較表を作って」だけだと要素が足りないこともあるが、プロンプトで指定すれば事足りる。スマホのスペック比較をする際、通常は価格が入らないが、価格も含めるように指示するだけで出力してくれるようになる。
メーカーがスペック表を公開しているスマホやPCであれば、まだ手作業もできるのだが、例えば、似たような領域のクラウドサービスを比較する際には手間がかかる。そんなときは、検索特化型生成AIに頼めばよい。
試しに「Genspark」で、ビジネスチャットの「Slack」と「Chatwork」を比較してもらった。提供会社、サービス開始年、導入企業数、初期費用、料金、ストレージなど、欲しい情報がずらっと並んでいる。これもレポート作成や記事執筆にとても役立つし、特定の業界への理解を深める際にも助かる。
連呼して申し訳ないのだが、絶対に“ファクトチェック”はすること。生成AIも元ネタを参照して出力しているのだが、そもそもその元ネタの情報が足りなかったり、間違っていたりすることがある。そうすれば、生成AIの出力も間違うことになる。
例えば「Slack」の「無料トライアル」は「なし」となっていた。もちろん「Slack」有料プランの無料トライアルは用意されている。また「タスク管理機能」も「なし」になっていた。Slackは、6月にタスク管理できる「リスト」機能をローンチしており、最新情報では「あり」のはず。参照したソースを確認したところ、間違った内容の個人ブログを参照していたことが原因のようだ。
業界のトレンド分析をして経営や人生の戦略策定や意思決定に役立てる
経営や人生の戦略を立てるために、業界のトレンドを分析したいことがある。
そんなときは、最新ニュースや市場データを複数のソースから集め、業界や市場のトレンドを分析することになるが、なかなかぴったりの情報が掲載されているWebページが見つからないこともある。そもそも、どんな情報をキャッチアップすればいいのか、わからないケースもあるだろう。
そうした場合、筆者なら「最近のライター業のトレンドを教えて」と検索特化型生成AIに入力すればよい。「Felo」で聞いてみたところ、AI活用、フリーランス新法、スキルアップ、多様な働き方、といった近年のトレンドを教えてくれた。
「『タイミー』のようなスキマバイトの業界のトレンドと最新ニュースを分析し、インサイトを教えてください」というようなプロンプトを入力すると、メディアに掲載される記事のような出力がさくっと得られる。欲しい情報がピンポイントでわかる上、広告の表示や他のリンクへの誘導などもなく、情報収集がはかどる。生成AIは良い点と悪い点を網羅することが多いので、偏った意見を目にして勘違いしてしまうリスクも軽減できる。
例えば「アーロンチェアを購入しようと思っているが、ポジティブな意見とネガティブな意見をまとめてください」と質問すれば、デメリットもしっかり可視化してくれるので、後悔のない判断が下せるのだ。
Webページやスライド、マインドマップも作成できる
検索特化型生成AIはサービスによって、“検索以外”の機能も搭載している。
「Perplexity」は生成結果をWebページに変換する機能を持っており、そのページを共有することができる。[発見]タブでは、さまざまなカテゴリーの記事が公開されているのだが、意外と面白そうな内容が多い。日本語がイマイチなところもあるのだが、深堀りしたいときはソースのサイトを閲覧すればよい。日々の雑談ネタを得るのに役立つだろう。
「Felo」では生成した結果から、PowerPointのスライドを作成し、ダウンロードできる。専門のプレゼン資料生成AIと比べると、少しクオリティや自由度は低いが、それでもサクッとビジュアル入りのスライドを作れるのは凄い。取引先に出せるレベルではないが、ダウンロード後にPowerPointで修正もできるので、社内資料程度であれば十分に使えそうだ。
加えてマインドマップの作成も可能。ChatGPTでもできないことはないが、「Felo」だとワンクリックで、かつクオリティの高いマインドマップを作成できるのが便利だ。
「Genspark」は「Genspark Autopilot Agent」という機能がお勧め。目的を入力すると、自動的にAIが処理を進めてくれる。非同期AIエージェントなので、処理中は他のことをしていてもOKだ。
例えば今回は「AIが仕事を奪うのかどうか」を聞いたところ、21分も待たされたものの、193の情報源にあたり、9万6,500~15万4,400単語をチェックしたという。平均読書速度から計算すると、12時間分の読書をAIエージェントが代わりに行ってくれたことになる。
結論としては「AIに仕事を奪われる可能性はある」という内容になった。あまりリスクのある断言はしないようになっていると思うので、玉虫色の回答になるかと思ったが、納得の内容となった。このAIエージェント機能は、いまのところファクトチェックにしか使えないが、「データ検索」が近日公開となっているので楽しみだ。
来年には調べ物のデフォルトは検索特化型の生成AIになるかも
検索特化型の生成AIは、いまや手放せないほど便利なサービスとなっている。すでにGoogle検索でも、トップには「AIによる概要」が表示されていることを見ても、この流れは加速していくことだろう。
現時点では、サービスによって参照するWebページの数が少なかったり、信ぴょう性のなさそうなコンテンツをソースとしたりすることもあった。「ChatGPT」のようにチャットでやりとりしながら、成果物をブラッシュアップするといった使い方も難しい。
サクッと望む情報が得られて大きな時短になることもあれば、クオリティが低かったり間違いが含まれており、何度チャレンジしても改善されないこともある。現時点では、1~2度チャレンジし、ダメなら通常のGoogle検索に戻すという使い方をしている。
とはいえ、まだ流行り始めたばかりの検索特化型生成AIでこのレベルなのはすごい。生成AI周りの進化は激しいので、来年にはもう完全に実用レベルになっているはず。Googleが覇権を守れるか、他の検索特化型生成AIが追撃するかは見ものだ。検索AIとしては遅れに遅れた上、クオリティも機能もイマイチなOpenAIの巻き返しも見逃せない。
「Perplexity」や「Genspark」「Felo」「ChatGPT search」、どのサービスでもいいので、すぐに使い始めることをお勧めする。いち早く検索特化型生成AIでの調べ物スキルを身に付けよう。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/