やじうまの杜

「Firefox Quantum」にしたらお気に入りのアドオンが動かない……どうしよう?

代わりのアドオンを探そう! 古いアドオンを使い続ける手もなくはない

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「Firefox Quantum」

 先日リリースされた「Firefox Quantum」の反応は上々のようで、動作速度の向上に驚く声がよく聞かれました。しかしその一方で、古いアドオン(レガシーアドオン)が使えなくなったことに対する不満も多く寄せられました。レガシーアドオンが使えなくなることはかなり前から告知されており、弊誌でも何回か取り上げたのですが、それでアップデートして初めて知ったというユーザーは少なからずいたようです。ユーザーインターフェイスデザインの刷新も相まって、あまりの変わりように戸惑う声も聞かれました。

代わりのアドオンを探す

 とりあえず、使えなくなったものをいつまでも抱えていても仕方がありません。まずは代替となるアドオンを探す必要があるでしょう。

 レガシーアドオンを利用していた「Firefox」を「Firefox 57」へアップデートすると、[アドオンマネージャー]画面に“旧式の拡張機能を表示”というメッセージが現れます。これをクリックすると“旧式の拡張機能”という画面にアクセスできますが、ここから代わりのアドオンを探すことができます。

[アドオンマネージャー]画面
“旧式の拡張機能”という画面から代わりのアドオンを探すことが可能

 英語にはなりますが“Extension Finder”というアドオン検索サイトがMozillaによって開設されているので、それを利用してもよいでしょう。

Extension Finder

 また、有志によるまとめサイトも有用です。

“Add-ons for Firefox”

 なお、「Firefox」向けアドオンのライブラリサイト“Add-ons for Firefox(addons.mozilla.org:AMO)”も「Firefox Quantum」のリリースに合わせてリニューアルされています。「Firefox Quantum」に対応済みのアドオンがわかりやすくカテゴリー分けされているので、用途や目的に応じたアドオンをすぐにみつけることができるでしょう。

「Firefox Quantum」のリリースに先駆け、アドオンサイト“AMO”がリニューアル - 窓の杜

 当面の間は旧デザインに戻すこともできるようです。

どうしても古いアドオンを使いたい

 なかには“どうしても古いアドオンを使いたいから自動更新機能を止めて「Firefox 56」を使い続ける”というユーザーもいるようですが、正直、それはお勧めできません。「Firefox」のアップデートにはセキュリティ修正も含まれているので、常に最新版を使うべきだからです。

 どうしても、という場合は代わりに「Firefox ESR」を利用しましょう。

 とりあえず来年半ばまでは、セキュリティアップデートを受けながらレガシーアドオンを使い続けられます。

 また、レガシーアドオンの継続サポートを表明している派生ブラウザーの利用を検討してみるのもよいかもしれません。

 当面は「Firefox ESR」を使いながら、両者をじっくり比較・検討するのがよいのではないでしょうか。

“Australis”以前の「Firefox」の雰囲気を残した「Pale Moon」
“Australis”以降の「Firefox」を継承する「Waterfox」

 しかし、本家「Firefox」と比べると派生ブラウザーはどうしても開発リソースが不足してしまいがちです。十分なサポートが得られるか、プロジェクトが安定して存続するかは依然不透明といえます。今後の動向については弊誌も注目しているので、ぜひフィードTwitterをお役立てください。

なぜ使えなくなったのか、使えなくする必要があったのか

 さて、それにしてもなぜMozillaはこのような大規模なアドオンの切り捨てを行ったのでしょうか。

 それに関しては、有名なアドオン開発者でもあるPiroさんのブログがわかりやすいかもしれません。

 かいつまんで言うと、従来の「Firefox」は自由にカスタマイズできる反面、自由すぎてアドオンが「Firefox」の深部までイジれる状態でした。その結果、内部で“癒着”を起こし、「Firefox」の改善を妨げてしまっていました。

 そこで、コア機能とアドオンをキレイに切り分けて(結合を疎にして)、あらかじめちゃんと決められた方法で連携する(WebExtensions API)方法へ改革されました。これにより、内部の仕様変更がより自由になる、最適化や改善をアグレッシブに盛り込めるようになったわけです。

「Firefox Quantum」以前のアーキテクチャー。自由なカスタマイズがメリット
「Firefox Quantum」以後のアーキテクチャー。本体とアドオンが隔離され、互換性を壊さない本体の改良が容易に。パフォーマンスも向上

 その一方で、“アドオン同士が密接に連携”したり、“アドオンが内部を自由にカスタマイズ”したりといったことはできなくなりました。

 たとえば、拡張機能に機能を追加してほしい場合や不具合を直してほしい場合、これまでは拡張機能の作者にリクエストすれば解決することが多かったでしょう。やる気にさえなれば「Firefox」の奥深くまで探り、トリッキーな解決策をひねり出すこともできなくはありませんでした。アドオンそのものを拡張したり、他のアドオンと連携する機能を追加して解決することも可能でした。

 しかし、今後は“WebExtensions API”が提供していない機能は実装できませんと言われてしまうことが多くなりそうです。また、多機能な重厚長大アドオンをインストールするより、単機能なアドオンを状況に応じて使い分けるのが主流になるでしょう。

 とはいえ、Mozillaの開発チームも現状の“WebExtensions API”に満足をしているというわけではなく、これからも機能拡張を進めていく考えのようです。もしユーザーのニーズが根強いと知れば、実装の優先度を上げてくれるかもしれません。一般ユーザーにも、より積極的にフィードバックを送るなどのアクションをとることが必要とされるのではないでしょうか。

 また、小さな単機能アドオンが主流になることで、アドオン開発者になることのハードルが下がり、裾野が広がることにも期待したいです。

 最後に筆者の個人的な意見になりますが、レガシーアドオンに固執するあまり、より本質的なことを見失ってはいけないと思います。アドオンはブラウザーをより便利にするためのもので、その逆ではありません。アドオンを使うためにブラウザーを選ぶというのは(ごく少数の例外を除いて)“本末転倒”というものです。

 「Firefox」はマルチコア化をはじめとするハードウェア環境の変化に対応するため、身を切る改革を行いました。環境が変われば、ときに自分自身を変える必要が生まれます。使い慣れたアドオンに愛着をもつのはわかりますが、これを機会にブラウザーの使い方を見直したり、今の時代に即した使い方を模索してみるのも一興ではないでしょうか。