やじうまの杜

「Suno AI」~テキストを入力するとボーカル入りの音楽を生成してくれるAIで、窓の杜のテーマソングを作ってみた

日本語の歌詞にも挑戦、『走れメロス』がパンクロックに!?

 “やじうまの杜”では、ニュース・レビューにこだわらない幅広い話題をお伝えします。
Webブラウザーから利用できる音楽生成AI「Suno AI」

 もう使い古されたフレーズですが、生成AIの進化とそのスピードは止まりません。画像、テキスト、音声、アニメーション……など、あらゆるジャンルの生成AIが流行していますね。

 そして、いまSNSで盛り上がっているのが音楽生成AIの「Suno AI」です。Googleの音声認識モデル「Chirp v2」をベースに、テキストを入力すると歌詞・メロディを生成し、さらにボーカルまで載せた楽曲を生成できます。日本語にも一応対応しているため、それっぽい曲を作って、AIが歌ってくれる、というところが大きな話題となっている要因のひとつでしょうか。



 では今回、早速「Suno AI」を使ってみたいと思います。

 本サービスを利用するためには、ログイン用としてDiscord、Google、Microsoftのいずれかのアカウントが必要です。今回はDiscordのアカウントを使ってログインしてみました。

 Discordのアカウントを使った場合、メールアドレスとユーザー名、アバター画像、バナーにアクセスされる可能性があります。要求される権限は必ず確認するようにしてください。

ログインにはDiscord、Google、Microsoftのいずれかのアカウントが必要です
今回はDiscordのアカウントを使用します。必ず権限をチェックしてください

 本サービスは無料プラン「Basic」と有料プラン「Pro」「Premier」が用意されています。

 無料プランでは1日 50creditsが使用できます。1回で2つのクリップが生成され、合計10creditsを消費するので、毎日5回分の音楽生成が試せる計算です。商用利用については、無料プランではNGとなり、有料プランでは可能となります。

個人向けに用意されているプランは「Basic」「Pro」「Premier」の3つ。無料プランでは1日 50creditsが利用可能で、5回分の音楽生成ができます。

 「Suno AI」には、歌詞の生成も含めAIにお任せする「Create」と、歌詞や楽曲のスタイルを指定できる「Create(Custom)」があります。まずは「Create」から試してみます。

 どんな楽曲を生成するかというプロンプトを入力できるので、今回は「Melodious EDM at 170BPM」(メロディーがしっかりある、エレクトロニック・ダンス・ミュージック、1分間に170拍数の速めの曲)と入力してみました。

 そうすると、まず下記のように歌詞が出力されます。

まずはお試しに「Melodious EDM at 170BPM」というプロンプトを入力してみます。
[Verse]

Dancin' in the dark, with the beat in my heart (beat in my heart)

Can't control my body, movin' every part (movin' every part)

The speakers blasting, melody overtaking me (ooh-yeah)

I'm lost in the rhythm, set my spirit free (set my spirit free)

[Chorus]

Melodious EDM, takin' over my soul (takin' over my soul)

At 170 BPM, losing control (losing control)

The music pumps through me, igniting the fire (igniting the fire)

Let the beats guide me higher, higher and higher (higher and higher)

Rockin' to the melody, feeling so alive (feeling so alive)

Yeah, this fast-paced journey, it's my ultimate drive (my ultimate drive)

 こういう曲を作ってほしいという意図だったのに「Melodious EDM, takin' over my soul, At 170 BPM, losing control」というフレーズが歌詞に……。少し解釈違いな気もしますがよいでしょう。

 さらに2分程度待つと、1分20秒間、49秒間、の2つの楽曲が生成されました。早速、再生してみます。

AIが「Melodious EDM at 170BPM」というプロンプトで生成した楽曲 その1
AIが「Melodious EDM at 170BPM」というプロンプトで生成した楽曲 その2

 生成された音楽を聴いた素直な感想は「意外とありそう~」という印象でした。バーチャルDJとして活動している筆者の主観ではありますが、この曲が大流行するポテンシャルはないでしょうし、音楽フェスで人々を大きく沸かせることはないと思います。ただ、絶対にありえないとも言えない絶妙なラインの音楽であると感じました。

 次に、日本語でプロンプトを入力してみます。

 今回は「窓の杜」のテーマソングを作れないか、とふと思い立ち、「『窓の杜』(まどのもり)は、編集部が厳選したオンラインソフトなどを紹介するサイトです。ニュースや記事を掲載する『窓の杜Webサイト』のテーマソング」という日本語のプロンプトを入力しました。そうすると、下記の歌詞で楽曲の生成が始まりました。

[Verse]

Sittin' at my desk, the screen is bright

Words jumbled up, don't know what's right

My mind is spinning, can't comprehend

The language foreign, I can't pretend (ooh-yeah)

But I won't give up, I'll find my way

[Chorus]

Gotta translate, gotta navigate (navigate)

Through the web that's unknown (that's unknown)

I'll break the barriers, I won't despair (no-no)

I'll conquer this challenge, I do declare (declare)

With determination, I'll embrace (embrace)

 いかにもそれっぽい歌詞なのですが、理解しているのか、はたまた理解していないのか「外国語だからわからない」といったフレーズがあります。

 このように、実際に使う際は英語でプロンプト入力するのが無難だと思います。しかしながら、楽曲のクオリティとしては、こちらも「意外とありそう」という印象です。

Suno AIが生成した「窓の杜」のテーマソング その1
Suno AIが生成した「窓の杜」のテーマソング その2

 最後に、自分で歌詞を入力できるパターンも試してみたいと思います。メニューから[Create(Custom)]を選択します。

 今回は青空文庫から太宰治氏の『走れメロス』の冒頭文章をお借りしました。

AIが『走れメロス』の冒頭部分を歌詞として生成した楽曲 その1
AIが『走れメロス』の冒頭部分を歌詞として生成した楽曲 その2

 音楽スタイルを「punk rock」と指定したこともあり、かなり激しい楽曲になりました。プロンプトの問題はあるとしても、日本語の歌詞をそのまま使うというのはまだ難しい印象ですね。ですが、ひらがなにすると上手くいきやすいなど、ユーザー間でトライアンドエラーが進んでいます。

 ほかにも、いくつか楽曲を生成してみたのですが、「Suno AI」を使った楽曲は独特な違和感を感じたため、現時点でこのAIによって生成された楽曲をそのまま使うことは難しいと感じました。生成された楽曲からインスピレーションを得たり、自分で手直ししたときに何が起きるのか、ということには可能性を感じます。

 いまはさまざまなタスクのサポートに生成AIを使っている方が多いと思います。それらと同様に、作曲のサポートをしてくれる生成AIがDTMソフトなどに搭載される、そんな時代が当たり前に来るのでしょうね。