「May 2019 Update」でWindows 10はさらに便利に
第1回
大幅にテコ入れされた“Windows Update”
2019年4月29日 11:00
「Windows 10 May 2019 Update(バージョン 1903)」の製品版(RTM)が4月上旬、“Windows Insider Program”の“Release Preview”リングにリリースされた。入念なテストの結果、問題がなければ5月終りにも一般環境へもロールアウトされるはずだ。そこで本特集ではロールアウトに先立ち、「May 2019 Update」で導入された改善や新機能を紹介する。第1回となる本稿のテーマは、“Windows Update”だ。
なお、「May 2019 Update」の導入テストを行いたい場合や、一足先に「May 2019 Update」を体験したいユーザーは、“Release Preview”リングへの参加をお勧めする。具体的な手順については、下記リンクを参照してほしい。
制御性、品質、透明性の向上
前回の「October 2018 update」ではデータ損失の問題が発生し、配信の一時停止に追い込まれた。実際に問題の影響を受ける環境がごくわずかだったが、万が一のことを考えれば、機能アップデートの適用を忌避したり、躊躇してしまう人が出ても仕方がないだろう。
「May 2019 Update」ではこのことを反省し、リリースプレビュー期間を長めにとられている。また、制御性・品質・透明性の3点に力を入れ、安心して「May 2019 Update」を適用できる環境を整えている。
制御性の向上
「May 2019 Update」では「設定」アプリの[更新とセキュリティ]-[Windows Update]セクションのデザインが刷新された。更新の一時停止、アクティブ時間の変更、更新履歴の表示、詳細オプションといったコマンドにアイコンと説明が付与され、「October 2018 Update」と比べ、大変わかりやすくなっているのがわかる。
更新の一時停止コマンドは、“Windows Update”の適用を1クリックで7日間延期する。この期間延長は、年2回の機能アップデートと毎月の品質アップデートの両方で利用可能。また、“Home”エディションはこれまで“Windows Update”の延期がサポートされていなかったが、「May 2019 Update」では7日×5回の最大35日間の延期が可能となっている。長時間かかる処理を行わせている場合や、重要なプレゼンテーションを控えている場合など、“Windows Update”の適用でOSが再起動されてしまうのが不都合な場合は、このコマンドを利用することでアップデートの適用を保留することができる。
加えて、“アクティブ時間”でも重要な改善が導入された。“アクティブ時間”は、いわばユーザーがWindows 10を利用する時間帯(既定は午前8時~午後5時)のことで、これをあらかじめ適切に設定しておけば、その間“Windows Update”はOSの再起動を行わない。
しかし、この機能はあまり認知されておらず、適切に設定されていない環境が少なくない。また、PCの利用時間帯が不規則で、毎日決まった“アクティブ時間”を設定するのが難しいケースも少なくないだろう。
そこで、「May 2019 Update」ではWindows 10がユーザーのアクティビティを学習して、自動で最適な“アクティブ時間”を設定する機能が導入された。これを活用すれば、“Windows Update”によって作業を中断させられたり、再起動で作業の内容が失われるといった事故を避けることができる。
このように、「May 2019 Update」では“Windows Update”をユーザーがコントロールできるようにすることで、アップデートに伴うストレスを軽減している。[スタート]画面やタスクトレイには“Windows Update”が進行中であることを通知するインジケーターが追加されるなど、“Windows Update”が必要であること、“Windows Update”が進行中であることをユーザーに知らせる工夫も盛り込まれた。“Windows Update”と“Microsoft Store”のアップデートタイミングをインテリジェントに調整することで、システムの応答性やパフォーマンスを向上させる仕組みも導入されているという。
また、万が一“Windows Update”で適用した更新プログラムが原因でOSが起動できなくなっても、「May 2019 Update」には最近インストールされたドライバーや更新プログラムを自動的にアンインストールして復旧を試みる機能が導入されている。何度か再起動を繰り返せば、再び利用可能になる可能性は高い。
問題の更新プログラムは自動で30日間ブロックされるため、システムを再び破壊してしまうことはない。
[Download and install now]オプション
Microsoftによると、利用中のデバイスが「May 2019 Update」の配信対象となり、かつアップグレードしても非互換問題が発生しないことが確認されると、[Windows Update]セクションに[Download and install now]というオプションが表示されるようになるとのこと(Windows 10 バージョン 1803 および 1809)。品質アップデートのチェックを行う[更新プログラムのチェック]ボタンと、機能アップデートのダウンロード・インストールを行う[Download and install now]オプションが分離されたわけだ。
これにより、ユーザーは機能アップデートの適用を自分の都合のいいときに行えるようになる。ただし、利用中のWindows 10のバージョンがサポート終了間近である場合は自動でアップデートの適用が行われるようだ。毎月の品質アップデートを受け取るには、機能アップデートの適用を怠ってはならない。できるだけ早めに済ませておくことをお勧めする。
品質の向上
「May 2019 Update」では“Release Preview”リングでのテスト期間を長くとることで品質の改善を図っているが、それ以外にもアップグレードによる事故を防止するための対策がいくつか導入されている。
まず、ユーザーから寄せられる膨大なフィードバックをより分ける仕組みが改善。自然言語処理(NLP)と機械学習(ML)を応用することで、報告の絶対数は少なくても重大な問題をすばやく発見できるようになった。同社によると、顧客から寄せられるフィードバックは1日約2万件にも及ぶが、フィードバックのクラスタリング、分類、ルーティングを合理化・自動化して問題に適切なプライオリティを設定し、最重要課題に関してはエンジニアによる調査を優先的に割り当てることで、重大度の高い問題の検出に要する時間が数日から数時間にまで短縮されているという。
また、アップデートを問題なく適用できるデバイスを選り分け、すばやくロールアウトさせるためのMLモデルも改善。アップデート後のディスプレイやオーディオの問題など、より広範な問題についてモデルをトレーニングできるようになったほか、アンサンブル学習のアプローチを実装することで問題の予測精度を向上し、的確なトラブルシューティングを行えるようになっているという。
透明性の向上
以上のような対策を講じても、問題のすべてを未然に防止することは難しい。そこで大切となるのは、問題が発生してしまった後の対処だ。
その一環として、アップデートされたのが“Windows リリース正常性ダッシュボード”だ。このダッシュボードではアップデートのロールアウト状態や既知の問題といった情報がまとめられ、リアルタイムで更新される。重要なお知らせ、新しいブログ記事、サービスとサポートの最新情報、その他のニュースなども1ページにまとめられ、キーワードで簡単に検索できるようになるほか、“Twitter”、“LinkedIn”、“Facebook”およびメールで簡単にほかのユーザーと共有できる。Windows 10で好評を博している“ダーク モード”への対応も行われる予定だ。
「Windows 10 May 2019 Update(バージョン 1903)」のシステム要件
Windows 10のインストールに必要とされるハードウェアの最小構成は、Windows 7/8.1時代からあまり変わっておらず、機能アップデートのタイミングで引上げらることもなかった。
しかし、「May 2019 Update」ではストレージ容量の要件(32bit版で16GB以上、64bit版で20GB以上)が若干引き上げられ、32bit/64bit版ともに32GB以上が必要となっている。「May 2019 Update」ではアップデートや一時ファイルのための専用領域(約7GB)ストレージに確保される(予約済み記憶域)が、おそらくその影響であろう。
最近のデバイスならばシステムドライブの容量が32GBを切ることはほぼないと思われるが、古いデバイスを再利用している場合には注意したい。