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AIは今年どうなる?CPUやPCメーカーなど5社に聞いてみた

インテル / Emurasoft / GIGABYTE / サードウェーブ / マウスコンピューター

 新年明けましておめでとうございます。

 新年といえば去年の振り返りと今年の展望ですが、今年気になるのは「AI」という人も多いでしょう。そこで弊誌では、AIに関する取り組みをいくつかのソフトウェアベンダーやPCメーカーにお伺いしました。

 コメントをいただいたのは、インテルEmurasoftGIGABYTEサードウェーブマウスコンピューター、の5社(ブランド名50音順)。いただいたコメントはそのまま掲載していますので、各社が考える「今後のAI」の方向性、について参考にしていただければと思います。

インテル株式会社 マーケティング本部 飯田真吾氏
●2024年、AIに関して取り組んだことを教えてください

大きな動きとしては2024年6月に、AIハードウエア、ソフトウエアの開発者を対象に開発者向けのイベント「インテル AI Summit Japan」を開催しました。企業でのAI活用を後押しする「Bringing AI Everywhere」の実現について会社として取り組を発表しました。また9月には「Intel Connection 2024」を開催し、弊社でのAIの取り組みとその進捗についてエコシステムパートナーの方をお招きして「技術とビジネスをつなぎ社会を前進させる」を目的に広く業界の方に向けたソリューション事例や、すべての製品群でどのように今後AIが活用されていくかご紹介しました。

●その反響はいかがでしたか?

エコシステムパートナー企業の皆様、またエンドユーザー企業の皆様から多くのポジティブなお声を頂戴しております。またメディアへの情報掲載により、弊社のAIに関しての取組みを認知していただいたお客様からのお問い合わせも複数いただきました。継続的に情報発信を続けていきたいと思っております。

●2025年、AIに関連した製品・サービスの予定や意気込みを聞かせてください

昨年9月に最新製品となるインテル Core Ultraプロセッサー (シリーズ 2) を発売しました。最新世代の P-core および低消費電力 E-core プロセッサー・アーキテクチャーを採用し、強化された NPU 4.0 AI エンジンが内蔵されています。PCメーカー様より搭載PCが発売されています。エンタープライズ向けには 生成AI(LLM)向けインテル Gaudi 3 AI アクセラレーターが注力製品です。また開発者向けにはシームレスなAI環境のためのOpenVinoツールキットやインテル Tiber デベロッパークラウドにも力を入れていきます。

●長期的に見て、AIに期待することやAIで変わると思っていることを教えてください

AIによりすべての人々の生活をより豊かにしたいと考えております。PCエンドユーザー向けには、今後、エコシステムパートナー様とグローバルに100以上のアプリをご提供する事によって生活の質の向上に貢献したいと考えます。企業ユーザー向けにはAIよる新しいビジネスモデルのサポートと業務効率向上の実現をサポートしたいと考えています。今後の弊社の取組みにご期待ください!

EmEditorの画面

江村豊氏
●2024年、AIに関して取り組んだことを教えてください

EmEditor Professionalには、生成AIを活用して文書作成の効率を向上させるため、様々な新機能を追加しました。

AIによる支援執筆や、AIとチャットが可能なウィンドウ、AIツールバー、AIプロンプトなどを導入しました。例えば、AIツールバーのボタンをクリックするだけで、現在の文書をAIが書き直し、元の文書と校正後の文書を比較表示できます。EmEditorのテキストエディターならではの便利さで、コピーや貼り付けの手間が省けます。また、EmEditorのAI機能はOpenAI APIを使用しており、ChatGPTとは異なり、入力したプロンプトはモデルのトレーニングに利用されません。つまり、会社の文書を安全にプロンプトとして使用できます。さらに、ChatGPT Plusを利用する場合に比べてコストを削減できるのも大きな魅力です。

●その反響はいかがでしたか?

多くのユーザーからポジティブな反響をいただきました。生成AIの機能を積極的に活用しているユーザーの数は着実に増えていると感じています。

●2025年、AIに関連した製品・サービスの予定や意気込みを聞かせてください

EmEditor Professionalには、生成AIを活用した機能をさらに拡充していきたいと考えています。例えば、文書からメールアドレスを検索する際、これまでは正規表現を使って検索する手間がありましたが、将来のバージョンではAIに「メールアドレスを検索して」と命令するだけで、簡単に検索できるようになるでしょう。

●長期的に見て、AIに期待することやAIで変わると思っていることを教えてください

インターネット接続が不要で、ローカル環境で生成AIを簡単に利用できるようになれば、コストやセキュリティの心配が減り、さらに使いやすくなると考えています。近い将来、これが実現することを期待しています。

日本ギガバイト株式会社 プロダクトリーダー 川村直裕氏
●2024年、AIに関して取り組んだことを教えてください

GIGABYTEはPCパーツだけでなく、ノートPCや周辺機器も取り扱っておりますが、そのそれぞれに、AIを開発やサービスに積極的に活用し、製品に盛り込んでまいりました。

まずノートPCでは、AI Nexusというアプリケーションを導入しました。製品が最高の性能と体験を提供できるよう、パフォーマンス、バッテリー寿命、コンテンツ生成機能等にAI技術を活用しています。PCパーツでは、マザーボードの設計に、AI支援による配線最適化を行ったり、AIが学習して導き出した最適なメモリ設定や、オーバークロック設定をワンクリックで提供するD5 Bionic Corsa、AORUS AI SNATCH等を提供しています。また、AIトレーニングを簡単に実行できるプラットフォーム、AI TOPを発表しています。これはローカルでAIトレーニング、微調整を行うためのソリューションで、AIプログラミングのスキルが十分でなくても実行できるような環境と、機密データに対してより高いプライバシーとセキュリティを提供することができます。OLEDモニターにおいては、AIベースのアルゴリズムを用いた画面保護技術を搭載しています。

●その反響はいかがでしたか?

ノートPCやマザーボードについては、先に紹介したアプリケーションによるパフォーマンスに満足しているとのお声を多数いただいております。AI技術がとてもうまく活かされた結果だと思います。GIGABYTEの研究開発陣もこれを励みに更なるアップグレードを目指していくものと思います。

●2025年、AIに関連した製品・サービスの予定や意気込みを聞かせてください

年頭より、先に紹介しましたAI TOPソリューションを日本でも展開いたします。クラウドAIでは不安の残るプライバシーやセキュリティ面をカバーできるほか、学習のやり直しが発生してもコストが抑えられるなどの利点があると考えております。ノートPCやPCパーツなども引き続きAIを活用した技術を取り込んだ製品を発表していく予定です。今までにフィードバックされた不満点などを、より最適なAIトレーニングにより更なるアップグレードを目指していくことがGIGABYTE開発陣に課せられた任務になるのではないかと思います。

●長期的に見て、AIに期待することやAIで変わると思っていることを教えてください

OSはもちろん、アプリケーションでもAIが普通に組み込まれるようになり便利になっていますが、今後、より高度なAI処理へ進化していくことは誰でも予想できることかと思います。しかしながら、それを処理するためにはハードウェア面の強化も必要となってくるかと思います。AI処理を担うプロセッサーやGPUなどの進化に合わせるように、GIGABYTEも製品を発表していくわけですが、引き続きAIを活用したサービスを製品に盛り込み提供し、より便利に進化していくよう努めてまいります。

株式会社サードウェーブ 執行役員兼技術開発統括本部長 佐藤 和仁氏
●2024年、AIに関して取り組んだことを教えてください

9月のインテルからのCPU発表と同時に、インテルの最新CPU、Lunar Lakeを採用したノートPCを「AIPC」として発売しました。

また、11月には2日にわたり第2回AIフェスティバルを東京・秋葉原で開催しました。ここでもそのノートPCやAI対応のデスクトップPC、ワークステーションを展示し、多くの来場者にご覧いただくことができました。また協賛していただいた各企業様にもAIに関する製品を展示いただき、充実した内容で開催できたと思います。

フェスではそれ以外でも、AIに精通したゲストを招いてのトークショーの他、昨年よりも実施会場を増やした24時間ハッカソン、絵画部門が増設されたAIアートグランプリは、とても高い関心を引きました。AIでどういう世界ができるのかという目的・目標が、参加者とともに共有できたことで、意義あるフェスになったと思います。

●その反響はいかがでしたか?

製品の発売、フェスティバルの開催、共に大きな反響がありました。どちらもSNS発信で好意的なご意見が多くありました。

中でも落合陽一氏の基調講演“そして神社をつくる”というテーマは「AIってなにができるの?」「今までのクラウドやPCと何が変わるの?」という素朴な疑問を、広い視野で分かり易くお話しいただき大変好評でした。AIハッカソン、AIアートグランプリ、共に前回よりも参加者の増加、クオリティの向上が見られ、AIに対する期待や関心がさらに高まったと感じています。

●2025年、AIに関連した製品・サービスの予定や意気込みを聞かせてください

AIに関連したハードウェアを中心にCPU、グラフィックボードの最新技術をいち早く取り込み、製品化・販売を今後もしていきたいと考えています。それはクリエイター向けモデルだけでなく、ゲーミングPC、一般向けPC、及び法人向けモデル、全領域ですすめていく予定です。

さらに、AI研究や建築設計、プロダクトデザイン、映像制作、ソフトウェア開発やデータサイエンスなど、専門的で高度な要求に応える製品開発に取り組んでいきます。サービスとしては、「AIPCって何ができるの?」といった疑問や高度な知識まで、協力会社やその専門家の話をできるだけ分かりやすい形で発信して、AIPCの魅力を伝えていきたいと思います。

●長期的に見て、AIに期待することやAIで変わると思っていることを教えてください

AIPCでは個々の癖や好みを学ぶだけではなく、思考プロセスやそれに関連した情報を集めることもできるようになります。わかりやすく言えば、PCでの業務における秘書のような提案や、たくさんのメールの中からプライオリティが高いものをより分けて見せてくれるようなことができるのではと考えています。

その際にPC側と会話するようなコミュニケーションが発生するかもしれません。とすると、ノートPCは1画面じゃ足りなくなります。

弊社では、提案型先行試作開発も近年始めており、TGS2024にて2画面PCの試作品“Vtuber PC”を参考展示しました。こちらはまだ試作段階ですが、これからもPCの進化に合わせて、新しい提案や開発を考えていきたいと思います。

Mouse Pro G4

株式会社マウスコンピューター 広報室 小山氏
●2024年、AIに関して取り組んだことを教えてください

AI性能に特化したCPUプロセッサーをオンタイムで製品化いたしました。

9月発売インテル Core Ultraプロセッサー シリーズ2搭載ノートパソコン「Mouse Pro G4」シリーズと、10月発売インテル Core Ultraプロセッサー(シリーズ2)搭載デスクトップです。一例として「DAIV FX-I7G7S」がございます。

●その反響はいかがでしたか?

マウスコンピューターとして初めてのAIPCとなった「Mouse Pro G4」シリーズは、特に法人様にご好評いただきました。本製品は14型ノートパソコンで、全ブランドの中で最軽量の約946gを実現しています。また、LTEモジュールのカスタマイズにも対応しており、営業や出張を行う法人様からご好評をいただいております。さらに、Windows 10のEOSを見据えたリプレースモデルとしても多くのお問い合わせをいただいております。

●2025年、AIに関連した製品・サービスの予定や意気込みを聞かせてください

2025年も、AI性能に特化したプロセッサーなどを搭載した製品をオンタイムで発売できるよう努めてまいります

●長期的に見て、AIに期待することやAIで変わると思っていることを教えてください

ビジネスシーンでは、Windows標準のAI対応アプリの利用、イメージクリエイター、会議などの字幕自動生成など法人様に優位な機能が進むことを期待したいと考えております。クリエイティブなシーンでは画像生成など新たな用途に求められるPC仕様に対する製品化を積極的に行いたいと考えております。