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Googleが100兆桁の円周率計算に成功、2019年以来2度目の世界記録を樹立
「Google Cloud」の優位をアピール
2022年6月9日 10:00
米Googleは6月8日(現地時間)、「Google Cloud」を用いて100兆桁の円周率を計算することに成功し、世界記録を更新したと発表した。同社は2019年にも31兆4000億桁の円周率を計算し、当時の世界記録を樹立していたが、2021年にグラウビュンデン応用科学大学の科学者が62兆8000億桁を計算したことで記録は破られていた。
円周率の計算にはハイパフォーマンスなCPUはもちろん、それを記録するストレージやデータをやり取りするネットワーク性能が必要だ。品質も重要で、計算や保存、転送の過程では1bitの間違いも許されない。
そのため、同社は今回の挑戦に以下のような環境を構築したという。
- 計算:128個のvCPU、864GB のメモリを持つ「n2-highmem-128」インスタンスを採用。OSは「Debian Linux 11」
- ストレージ:一時ストレージに554TBを見積もる。単一の仮想マシンに接続できる永続ディスクの最大容量は257TBであったため、計算ノードに加え、合計64個のiSCSIターゲットを提供する32台のストレージノード(「n2-highcpu-16」インスタンス)からなるクラスタを設計
- ネットワーク:「n2-highmem-128」がサポートする100Gbps外向き帯域幅を利用。2019年当時はわずか16Gbpsだったので、わずか3年の間に帯域幅が約6倍に増加したことになる。今回、ネットワークストレージに対し読み書きしたデータ量の合計は82.0PBで、2019年の19.1PBから大きく増加
この計算には数ヶ月の時間が必要で、わずかなの性能差でも実行時間が数日、数週間変わってしまうことが事前に予想された。そのため、設定の調整はシビアになるが、その項目はオペレーティングシステム、インフラストラクチャー、実行するアプリケーションに分散しており、さまざまな組み合わせが考えられる。
そこで、「Terraform」を活用してその組み合わせを短時間でテストする仕組みが整えられた。今回の計算プロジェクトには157日(約5カ月)が費やされたが、こうした工夫がなければ約2倍の300日程度かかった可能性がある。
さらに、計算が長期間にわたるため、シェルスクリプトを用いて2日ごとのバックアップを自動化するといった対策も取られている。単に物量に任せるだけでなく、最終的な結果を2台の50TBディスクへ書き出すまでディスクの割り当てを送らせてストレージコストの削減を行うなどの工夫も施されているという。
なお、検算はBailey-Borwein-Plouffeの公式と呼ばれる、計算時と異なるアルゴリズムで実施されたとのこと。実際の計算に用いられたスクリプトは、「GitHub」で公開されている。全桁の結果は、デモサイトで確認可能。
同社は、今回の新記録が「Google Cloud」インフラストラクチャーの高速化の証であるとし、安全でカスタマイズ可能なコンピューティングサービス「Compute Engine」と近年追加・改善された「Compute Engine N2」マシンファミリー、100Gbpsの外向き帯域幅、「Google Virtual NIC」、そしてバランス永続ディスクといった機能をアピールしている。