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発表から1年、「Microsoft Dev Box」の一般提供が開始

クラウドベースの仮想開発ワークステーション

Microsoft、「Microsoft Dev Box」の一般提供を開始

 米Microsoftは7月10日(現地時間)、「Microsoft Dev Box」の一般提供を開始した。「Dev Box」は、共同開発(Share Dev)に最適化されたクラウドベースのワークステーション。昨年5月に開催された「Microsoft Build 2022」で発表されて以降、テストが続けられていたが、今回ようやく正式提供にこぎつけた格好だ。

 「Dev Box」はいわば、ソフトウェア開発に特化したクラウドベースの仮想デスクトップだ。同社がこうしたソリューションを提供するのは「Dev Box」が初めてというわけでなく、2016年には「Azure DevTest Labs」という製品を発表している。「DevTest Labs」は開発やテストといったユースケース向けに仮想マシン(VM)をテンプレート化しており、必要に応じて手軽にVMを作成できる。

 しかし、「DevTest Labs」はあくまでも一時的な利用が想定されており、永続的な運用は考慮されていなかった。また、個々のプロジェクトに応じた設定済みの開発環境を用意するのにも一手間を要した。こうした問題を解決するために登場したのが、「Dev Box」だ。

 クラウドベースの仮想開発環境ではすでに「GitHub Codespaces」があり、「Visual Studio Code」と「GitHub」の組み合わせで素早くクラウドネイティブアプリの開発を開始できる。同社は当初、これを「Visual Studio」に対応させるなどしてニーズに応えようとしたが、エンタープライズでの利用に耐えうるセキュリティやコンプライアンス、コスト管理機能を組み込むのが難しかったという。

 そこで代わりに白羽の矢が立ったのが、クラウドデスクトップ環境「Windows 365」だ。「Windows 365」はパーソナライズされたWindowsデスクトップ環境、アプリケーション、設定、コンテンツをクラウドからあらゆるデバイスへストリーミングできる。「Microsoft Intune」とも統合されており、IT管理者による管理も容易だ。

 つまり、「Dev Box」は基本的に「Windows 365」と「Microsoft Intune」の組み合わせをソフトウェア開発向けに最適化したものといえる。しかし、とくに大規模開発固有の要望を満たすためプレミアムSSDを導入したり、設定とデプロイメントの管理を抜本的に見直すといった改善が行われているとのこと。最近では「Visual Studio」チームとも緊密に連携し、「Visual Studio」から「Dev Box」を扱う機能を追加したり、逆にコードとしての構成(config as code)のカスタマイズを「Dev Box」へ積極的に導入するといった技術交流も行われているという。

 「GitHub Codespaces」と比較した場合、「Dev Box」は好みのバージョン管理システムを選べる点や、クラウドネイティブアプリ以外のワークロードにも対応できるといった点で優れる。スピードと機動性を重視するのであれば「GitHub Codespaces」、それ以外の状況にも対応できる柔軟性が必要であれば「Dev Box」を選ぶことになるだろう。

 また、柔軟な価格設定も「Dev Box」の魅力といえる。「Dev Box」は当初、純粋に利用状況に応じた課金が計画されていた。しかし、これはパートタイム利用に向いているものの、フルタイム利用では事前のコスト予測が難しく、コスト変動のリスクもあり採用しづらい。そこで、「Dev Box」では固定された月額料金も用意されることになった。開発者はフルタイムとパートタイムのどちらで「Dev Box」を利用していても、最適な料金プランを選択できる。