ニュース
「LibreOffice 26.8」、半年に1回の大規模更新で組版・文字体系・Office互換性を集中改善
生成AI機能は「あえて搭載しない」、初の寄付バナーも
2026年8月27日 09:45
The Document Foundation(TDF)は8月26日(中央ヨーロッパ時間)、オープンソースのオフィス統合環境「LibreOffice 26.8」を公開した。2026年2月リリースの「LibreOffice 26.2」に続く半年ごとのメジャーバージョンアップで、 組版の品質 、 世界の文字体系への対応 、ほかのオフィススイートとの 相互運用性 の3点にフォーカスしたリリースになっているという。
段落全体で字間を整える「Paragraph Composer」
組版まわりの目玉は、ワープロアプリ「Writer」に導入された 「Paragraph Composer」 だ。
ワープロアプリの両端揃えでは、1行ずつ折り返しを計算する方式(貪欲法)が一般的で、従来の「Writer」もこれを踏襲していた。しかし、この方式では長い単語が行末近くにくると、単語の間を詰めて組まれた行と、逆にスカスカになった行ができてしまう。
「Paragraph Composer」は連続する複数行にわたって単語間隔のバランスをとることで、この問題を解消している。単語間隔の上限を設定することも可能で、組版の柔軟性が向上した。
このほか、OpenTypeフォントのバリエーション( 可変フォント )がネイティブでサポートされた。文字の太さやプロポーションを調整する軸を含めて、デザイナーの意図どおりに使えるようになった。ベースライングリッドへの整列も、フレーム内のテキストで正しく動作するようになった。編集中にグリッドそのものを表示することも可能で、表示色も調整できる。
「原稿用紙」グリッドなど、文字体系まわりを大幅強化
「LibreOffice 26.8」でもっとも作業量が多かったのは、 双方向テキストと複合文字 の処理だという。
双方向テキスト(bi-directional text:BiDi)とは、左から右(LTR)に書くテキストと右から左(RTL)に書くテキストが混在するテキストのこと。「Writer」では以下の改善が盛り込まれているとのこと。
- 文書やテキストを開いたとき、貼り付けたときに、段落の方向を自動で判別
- 行の折り返しでは、行末のスペースを隣接する文字ではなく段落の方向に従って配置
- 右から左へ記述する文書や、CJKの縦書き文書でも、オブジェクトのリサイズハンドルが正しく振る舞うように
- 双方向制御文字も、ほかの書式記号と並んで表示されるように
「Calc」では、空のセルにRTLのテキストを入力すると、そのセルの方向が自動的に設定される。
日本語環境に関わるところでは、CJKテキストグリッドのオプション名が変更された。実際の機能に合わせて、 「原稿用紙」 のグリッドを有効にするものだと分かる名前になっている。
そのほかにも、インターフェイスの言語とは異なる言語で記録されたフォント名も正しく認識されるようになり、ほかの国で作られた文書も作者が選んだ書体で表示されるようになった。
また、数式アプリ「Math」では西アフリカのマンディング諸語で使われる「N'Ko」と、フラニ語などで使われる「Adlam」向けの名前付き関数・演算子を追加。RTLの数式のために、左向きのベクトルやハープーンも用意されている。
相互運用性:「Microsoft Office」の新しいグラフを壊さずに往復
相互運用性においては、「Microsoft Office」がOOXMLファイルに書き込む新しいグラフ形式――箱ひげ図、じょうごグラフ、パレート図、サンバースト、ツリーマップ、ウォーターフォール――の基本的な“ラウンドトリップ”に対応した点が目玉。
グラフの表示や編集はまだできないが、未対応の種類であることを示すメッセージを表示し、データを壊さない。そのため、「LibreOffice」で開いて保存しても、「Office」でまた開くことが可能(ラウンドトリップ)。ただし、地域マップグラフは対象外とのこと。
また、「Calc」でもXLSXファイル内の参照セルにおける改行の扱いが改善。XLSXのフォームコントロール要素がナビゲーターに表示されるようになった。
そのほかの改善
そのほかにも、さまざまな改善が施された。近年、他のアプリで採用が進んでいる 生成AI機能はあえて搭載しない 方針で、データが外部に送出されない点をアピールしている。これは機密情報や法的に保護された情報、個人データを扱う組織でも安心して利用できることを意図した仕様だ。
- Calc:ピボットテーブルに計算フィールドを追加。データの入力規則で無効な入力を無言で拒否できるように(v24.2以前の挙動が復活)。セルスタイルが相対フォントサイズに対応。範囲内のセルの順序をランダムに並べ替える[Shuffle]コマンドも追加された
- Impress/Draw:1つの文書内で複数のページサイズを扱えるように。「Impress」ではスライドを名前付きのグループにまとめる「プレゼンテーションセクション」を追加。組み込みテンプレートのいくつかが16:9と4:3の両方で提供され、比率を変えても背景が伸びなくなった
- ユーザーインターフェイス:「Notebookbar」の背景色がアプリごとに変わり、「Writer」「Calc」「Impress」「Draw」をひと目で見分けられるように。スタイルの一覧がNotebookbar・書式設定ツールバー・サイドバーで統一され、各項目がスタイル自体のプレビューで表示される。アプリのテーマ色の変更に再起動が不要となり、ページ設定にはA0~B3の用紙サイズが追加された
- アクセシビリティ:「Writer」の表が、ARIAの仕様に沿って行と列のインデックス情報を報告するように。スクリーンリーダーが表の構造を伝えやすくなる。特殊文字の選択画面もキーボードだけで操作できるようになった
- Base/自動化:「Base」がデザインビューへ切り替えた際にSQLのコメントを保持。PythonスクリプトをMacroマネージャーから直接作成・編集できるようになり、拡張機能のインストールが不要に
- そのほか:キーボードショートカットを個々の文書に割り当て可能に。画像を多く含む非常に大きな文書を「Writer」が大幅に速く開けるように。ヘッダー・フッター・余白を隠す「Draft」ビューも追加された
注意したい変更点
なお、「LibreOffice 26.8」は 寄付バナーを表示する最初のリリース となっている。これはドキュメントを開かずに「LibreOffice」アプリを起動すると現れる[スタート センター]にのみ定期的に表示され、単なる寄付ページへのリンクとなっている。広告やテレメトリー、サブスクリプション、アカウントなどは一切なく、寄せられた寄付は「LibreOffice」の維持に役立てられるという。
また、以下の仕様変更が含まれている点にも注意。
- 「Gentium Basic」「Gentium Book Basic」フォントの同梱が終了。これらを指定した文書は、別途インストールしないとほかの書体にフォールバックする
- 新規文書の既定が、左揃えから「開始」(start)揃えに変更。段落の方向を変えても、明示的に左・右揃えを指定した段落は反転しなくなった
- 「セーフモード」(Safe Mode)が「トラブルシューティングモード」(Troubleshoot Mode)に改称
- 廃止されたJavaアプレットの設定と、SDKの「OfficeBean」サンプルを削除
「LibreOffice」は、クロスプラットフォーム(Windows/Mac/Linux)で動作するオープンソースのオフィス統合環境。オープンなドキュメント仕様「Open Document Format」(ODF)をサポートするほか、「Microsoft Office」とも高い互換性をもつ。ライセンスは「Mozilla Public License v2」で、個人・企業・学校・行政機関を問わず制限なく導入できる。現在、公式サイト「www.libreoffice.org」から無償でダウンロード可能。Windows版はWindows 10(64bit)以降に対応しており、窓の杜ライブラリからも入手できる。
なお、安定性を重視する環境では引き続き「LibreOffice 26.2」シリーズの利用が推奨されている(11月30日までサポート)。執筆時現在の最新版は、7月下旬にリリースされた「LibreOffice 26.2.5」。





















![1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座[第2版] 製品画像:5位](https://m.media-amazon.com/images/I/51skMJ-OVcL._SL160_.jpg)




