レビュー

無料でどんなマウスでも動作を詳細にカスタマイズできる「X-Mouse Button Control」

キーボードマクロや2ボタン同時押しへの機能付与など複雑な機能に対応

「X-Mouse Button Control」v2.20.2

 「X-Mouse Button Control(以下、XMBC)」は、マウスのボタンやホイールの機能をカスタマイズするツール。Windows XP/Vista/7/8/10/11およびWindows Server 2003/2003 R2/2008/2008 R2/2012/2012 R2/2016/2019/2022に対応する寄付歓迎のフリーソフトで、現在公式サイトのダウンロードページからダウンロードできる。

 カスタマイズできるのは、左・右ボタン、中央ボタン(ホイール押し込み)、進む・戻るボタンの計5ボタンと、ホイールの上回転・下回転、左右チルト。他にもホイールスクロールやマウスカーソルの機能も追加・修正できる。

あらゆるマウスのカスタマイズが可能。日本語化にも対応

 ゲーミングマウスを中心に、メーカー独自のマウスボタンのカスタマイズツールが付属するものもあるが、「XMBC」はWindowsの標準マウスドライバで認識されるものを対象としているため、汎用的に使える。

 初回起動時は英語の表示だが、日本語化も可能。先のダウンロードページにある「Language Packs」リンクから言語ファイルのダウンロードページを表示し、「Japanese (日本語)」から「Japanese2.xmbclp」というファイルをダウンロード、実行すると、「XMBC」が日本語化される。なお、日本語化された後にメイン画面の[適用]ボタンを押さないと、次回起動時に英語表示に戻ってしまうので注意。

ソフト単体だとこのような英語版になるが、日本語化ファイルが用意されている

機能を選択するだけで変更可能。ソフトごとに個別のカスタマイズも

 「XMBC」の基本的な使い方は、カスタマイズしたいボタンやホイールを選び、機能を選択する。選べる機能には、クリックやホイール、チルトに機能変更するほか、ダブルクリック、ドラッグ維持、上下左右のスクロールなど。また特定のソフトの起動や、スクリーンセーバーの起動、スクリーンショットの撮影、メディアの操作、Webブラウザーの操作など、とにかく多岐にわたる。

 既存のボタンの機能を永続的に変更したいというのであれば、変えたいボタンの機能を変更して「適用」ボタンを押すだけでいい。例えば進む・戻るボタンを使わないので機能を無効化したい、といったことなら簡単にできる。

機能を変更したいボタンを選び、使いたい機能を選択する

 これに加えて便利なのが、特定のソフトの操作時にのみマウスの機能変更を適用するというもの。「XMBC」の画面左下にある[追加]ボタンをクリックし、実行中のアプリケーションリストから、マウスの機能を変更したいソフトを選択する。その後、機能を変更したいボタンを選んで[適用]をクリックする。これで選んだソフトに対してだけ、マウスの機能が変更される。

実行中のソフトの一覧が表示されるので、個別に機能を変えたいものを選ぶ

 例えば、実行中のアプリケーションとして「Google Chrome」を選択し、左ボタンを「無効」にする。この状態だと、「Google Chrome」のウインドウでは左クリックが機能しなくなるが、その他のウインドウでは普通に左クリックが機能する。

「Google Chrome」でのみ左クリックを無効にしてみた

 複数のソフトに対して、それぞれ個別にマウスの機能変更を適用することも可能。通常はホイール押し込みや進む・戻るボタンを使わないソフトで、これらのボタンにショートカット的な機能を持たせられる。

キーボードマクロや2ボタン同時押しなど複雑なカスタマイズも

 ボタンに付与する機能の中には、さらに複雑で独自の操作を盛り込める要素がいくつかある。

 「キー・シミュレーション」は、複数のキーボード入力を実行するもの。「1 仮想キーボード・マクロを設定します」とされる枠に入力された文字を一括で入力する。[Ctrl]キーや[Shift]キーとの組み合わせにも対応する。一度の入力でリピート実行をさせたり、リピートの間隔をランダムにするといった機能もある。

キーボードマクロ機能。機能のカスタマイズ項目はかなり多彩

 「ボタン・コーディング」は、マウスの2つのボタンやホイール操作などを同時に行った際に、別の機能を割り当てるもの。左右クリック同時押しや、戻るボタンを押しながらホイール下回転など、2つを組み合わせた際にだけ特定の機能を設けられる。

2つのボタンなどを同時使用した時に、新たな機能を持たせられる

 「ボタン長押し」は、マウスボタンを押し続けた時に、通常のクリックとは別の機能を持たせるもの。例えば通常のクリックと、500ms秒、1000ミリ秒、1500ミリ秒と、押した時間によって別々の機能が発生するようにできる。長押しする時間は調整が可能で、1つのボタンに対して最大3つまで長押し機能を追加できる。

長押しした時間に応じて異なる機能を付与する

ホイールスクロールやマウスポインターの動作もカスタマイズ可能

 このほかホイールスクロールやチルトを逆転させたり、スクロールを行単位ではなくページ単位にしたりといったスクロール関連のカスタマイズも可能。

ホイールやスクロールの挙動もカスタマイズ可能

 またマウスポインターの速度の強制変更や、マウスオーバーでウインドウをアクティブ化、マウスポインターの移動範囲をアクティブウインドウ内に制限、ホイールスクロールの連続入力を破棄など、かなりマニアックな調整項目もある。これらの設定もソフトごとに切り替え可能となっており、使いこなせば相当強力なオリジナル環境を作れる。

マウスポインターの挙動も調整できる。マニアックながら強力な項目が多い

 「XMBC」はメーカー独自のカスタマイズツールと比較しても、機能の多彩さでは勝るとも劣らない。また独自ツールが存在しないようなマウスでも機能のカスタマイズができるのは大きな利点だ。

 ただ設定がほぼ全てテキストによる説明で、難解な設定になってくると直感的にわかりづらい部分が多い。また対応できるのはいわゆる5ボタンマウスまでで、それ以上のボタンを搭載するマウスには対応しきれない。5つを超えるボタンを搭載するマウスは普通、独自のツールを持っているはずで、それほど大きな問題ではないとは思うが。

 深く使いこなすには若干の修練が必要だが、マウスを使った作業の効率化を図りたい人、特にゲーミングマウスのような独自のカスタマイズツールを持たないマウスを使っている人には、かゆいところに手が届く強力なツールだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

ソフトウェア情報

「X-Mouse Button Control」
【著作権者】
Phillip Gibbons 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 11で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト(寄付歓迎)
【バージョン】
2.20.2(23/03/03)