生成AIストリーム

AIゲームで開発、本気出したらClaudeが月額100万円を超えた件

フィンランドでAI駆動開発中のゲームをプレゼンする筆者⭐️Gemini加工済みです。雰囲気をご想像ください

 こんにちは、しらいはかせです。本稿は、フィンランド・ヘルシンキからお届けしています。

Claudeが月額100万円を超えた件

 さて、いきなりお金の話で恐縮ですが――今月の「Claude Code」の利用料、ついに月額100万円を超えました!

 これは筆者の会社でいくつか使用しているClaudeのアカウントの一つ。コーディングエージェントに月額7桁円の請求書が届くのは、なかなか刺激的な体験ですので、ここで読者の皆さんと共有しておきたいと思います。

「Claude Code」のコスト画面スクリーンショット:6月1日までの月額利用料が6,000米ドル、日本円で95万円。まだ半月以上残っているのに100万円を超えてしまいそうなことがわかるClaude Codeの設定画面

何にそんなに使ったのか? 答えは『AIならではのゲーム開発』

 このアカウントは筆者の会社、AICU Japanの国際AIゲーム開発事業部が、『AIならではの体験』開発業務で実際に走らせている「Claude Code Enterprise」1アカウント分の話です。このチーム全体(3名)の使用量で計算すると10,000米ドル(約150万円)。まだ月半ばですので、このペースで行くと200万円/月を超えるかもしれない状況です。どうしてこんなに高額なのか?何にそんなに使ったのか? 答えは『AIならではのゲーム開発』なのですが、今回は、AIゲーム開発の最前線でいま何が起きているのか、ディープに紹介していきたいと思います。

『どうせバイブコーディングでしょ?』――いいえ、AI駆動開発です

 『AIでゲーム作りました』という話、最近多く見かけるのではないでしょうか。有名なところでは田村淳さんがこんなツイートをしていました。



 ここまで読んだ読者の中には、こんな声が聞こえてきます。『どうせ何も考えないで“バイブコーディング”でテキトーに作ってるんでしょ?』。……お気持ちはよくわかります! でも本当にそうでしょうか?

なぜゲーム開発は『難しい』のか――Claudeはゲームをプレイしない

 Webサービスや社内ツールの開発に比べて、ゲーム開発はAIになっても難しい挑戦要素があります。しかし、なぜ難しいのでしょうか。改めて整理すると、ゲーム開発にはいくつかの『AIには届きづらい領域』があるからだと気づかされます。

 世界的なゲーム開発会社「Supercell」の本拠地での2カ月にわたるAI開発体験

 北欧の白夜と冷たい空気の中、世界中の“AIゲーム開発者”とサウナと、サウナ以上の熱気ある環境でAIゲームのデモ作品を展示している発表会で、この原稿を書いています。筆者は普段、AICU Japanという会社で『つくる人をつくる』をビジョンに、生成AIやメディアの研究・実践を行っています。今回は、2カ月ほどの期間の研究開発で、『AIを使ったゲーム体験』を世界中の開発者と並行で開発する、という長期のAIイノベーション開発プログラムでした。

たくさんの国から参加したプログラム参加者に向けた感謝を述べる、SupercellのCEO、Ilkka Paananen氏。⭐️Gemini加工済みです。雰囲気をご想像ください
デモデイ発表の様子⭐️Gemini加工済みです。雰囲気をご想像ください

Claude はゲームを『プレイ』しない

 ゲーム開発の本質的なゴールのひとつは『プレイヤーを楽しませること』です。プロトタイプを作って遊んでみて、『あれ、思ったほど楽しくないな……』と気づき、設計から作り直す――というイテレーション(繰り返し)が100回、200回、と発生します。

 AIコーディングアシスタントのおかげで開発は爆速になりました。ところが、Claude はゲームをプレイしません。先ほどの田村淳さんのツイートにもあるように、プレイ感、テンポ、難易度カーブ、爽快感の有無――これらは人間が触って判断するしかない領域です。

 筆者自身、2026年に入ってから毎日のようにゲームから業務システムまでAIコーディングで作り続けている人間です。だからこそハッキリ言えるのですが、バイブコーディングとAI駆動開発は別物です。

バイブコーディングの正体――48時間の“最小限の価値”創出術

 バイブコーディングは、制約を無視して『バイブス(気分)』で勢いよくプロトタイプを作る手法です。設計書もテストもいらない。とにかくAIに乗せて勢いだけで作る。これはMVP(Minimum Viable Product:最小限の価値ある製品)を出すには最強の手段です。

 筆者がよく口にするのは『まず皆さんハッカソンに出てください』というアドバイスです。ハッカソンは通常48時間――金曜夜から日曜夕方といった制限時間で、なにかしらのMVPを作って出す。出せれば勝ち、出せなければ潔く忘れる。『もっと時間があれば』『もっと金があれば』という言い訳は 幻想 です。時間とお金を増やしてもMVPは出ません。バイブスで突破するしかない、という状況に制限時間付きであえて身を置きます。言い換えれば、制約やバイブスを投じても価値が見出せない企画なのかどうか、製品化すべき企画なのか、せいぜい2日ぐらいあれば見抜くことができるということです。

チーム開発の途端、すべてが難しくなる

 ところが注意が必要です。1人でバイブコーディングするのと、チームで開発するのは、まるで別の競技になります。1人で面白いものを作るのと、チームで統制を持って開発するのとの間には、深くて広い谷があります。バイブコーディングは個人の中で完結しますが、チームでは『他人のバイブス+AIコーディングアシスタント』と衝突します。GitHubの使い方、コード規約、ブランチ戦略、レビュー、テスト、本番デプロイ、セキュリティ……。バイブスだけでは、絶対に到達できない領域です。

 ここから先は『AI駆動開発』の領域。AI駆動開発とは、チームでAIエージェントを統制しながら、本番運用に耐えるプロダクトを継続開発することです。

参考

AICU 「Legends Team」の AI駆動開発スタック

 ここでAICUのゲーム開発事業部「Legends Team」が実際に運用している『AI駆動開発スタック』とノウハウをすこし公開します。

  • 開始条件「Claude Code Enterprise」月額2,000米ドルから3人でスタート ――3人は全員、ゲーム開発者として30年近い経験を持つシニア。会話は日本語ですが、開発は英語、レポートは英語です。
  • 個人プランではなく、チームでのトークン共有・監査ログ・SSOが前提のEnterpriseプラン。
  • トークン節約のルール ――『コンテキストは小さく、参照は外部化』が大原則。Claude Code の AGENTS.md にプロジェクト固有ルールを書き、仕様書はMermaid図を中間言語に使用します。
  • 「GitHub」による長期記憶 ――AIエージェントの記憶は揮発します。Issue・PR・コミットログ・AGENTS.md 、ドキュメントをすべてAIの長期記憶として活用。次のセッションでAIが過去の判断を即座に追跡できる構造です。
  • 本番デプロイのガバナンス ――mainブランチへの直接pushは禁止、PR必須、CI通過必須。AIが書いたコードであろうと、人間がレビューしないと本番には出ない。Claude Codeもこのルールに従わせます。
  • 「Cloudflare」でサーバー運用を実質無償化 ――Workers/Pages/R2/D1を組み合わせ、固定費を限りなくゼロに。スパイクに耐え、グローバル配信され、しかも無料枠内で多くのプロジェクトが動きます。サーバー代を心配せずにAIにガンガンデプロイさせるための土台です。

 この『シニア開発者にバイブコーディングだけでなく、AI駆動開発を教育し、国際的にスケールさせる!』という2段ロケットこそが、AICU Legends Teamの特徴です。そしてそこで開発されたゲームのティザーサイトが以下です。

AIがゲーム開発支援できる『ツール開発』がミソ

 上記のようなオンラインゲームの開発では、ゲームのフロントエンドだけでなく、サーバー側などもかなりの作り込みが必要です。そして先ほど『Claudeはゲームをプレイしない』と表現しましたが、誤解のないように補足すると、AIは『プレイヤーになれない』だけで、他の側面では十分に頼れます。たとえば、

  • 「Playwright」によるブラウザー操作 ――Web3時代にbotにゲームをプレイさせる技術として急速に普及した技術です。これにより『E2Eテスト(エンドツーエンドテスト)』が可能になります。E2Eテストとは、最初から最後まで(End to End)、つまりユーザーの視点からシステム全体を通して一連の操作が期待通りに動作するかを検証するソフトウェアテスト手法です。
  • ビジョンによるスクリーンショット評価 ――『このUIは読みにくい』『背景に埋もれている』をAIが指摘
  • プロモーションビデオの編集 ――Seedance 2.0による動画生成に加え、「Remotion」や「ffmpeg」の制御コードを書き、字幕・カット割り・BGMミックスまで自動化
  • ガチャ要素(乱数と抽選)、プレイヤースキルの測定、離脱率の計測
  • ローカライズ・QAテスト、多言語化、リプレイログの差分検出、リグレッション検知など

 などなど……。『AI時代のゲーム開発』では最終的なゲームの『面白さの判定は人間』としつつも、それ以外の量産・検証・品質や評価、そしてプロモーションのための素材作りなどもAIがアシストしてくれます。またリリース日は決まっているので、そこに向けてプロダクトを収束させて行くためのプロジェクトマネジメントを行うAIも存在します。この『月額100万かけても、今後AIでゲーム開発を続けていけるか』という耐性作りや、人間が製品として作る『体験やプロダクトとしての価値』にいかに情熱を注いで作っていけるかが、AI駆動でゲーム開発するときの本当の意味での勝ち負けを分けると考えます。

新作サッカーゲームの展示用サイネージの例。プレイ動画とプレイヤーの結果をリアルタイムで分析表示……こんなこともAI駆動開発であっという間に実用レベルで投入できるようになりました

 なお、こんな開発をWebフロントエンドだけでなく、サーバ技術やiPhone内蔵AIである「Apple Intelligence」を駆使した実験も行っていました。クラウドサービスのトークンを使わない方法も実現可能です。これについてはまた別の機会に紹介したいと思います。

世界が注目する日本の『AIインディゲーム市場』

 さて、そのゲーム開発の中でも、いま世界が熱い視線を送っているのが日本のインディーゲーム、そしてAIならではのゲーム『AIインディゲーム』です。

 ちょうど本日、任天堂が「Pictonico!」という新感覚のスマホアプリを発表しました。



 これはAIによる顔画像認識技術によるパーティゲーム化です。スマートフォンアプリとしてリリースする点についても注目です。NintendoDS時代に培われた技術や体験、遊びの文化を持つ『新しいゲームに敏感な日本のゲームプレイヤー市場』が、今後さらなる常識をアップデートしていくと予想します!

 その日本のインディーゲーム最大の祭典が、毎年京都で開催されるBitSummitです。2026年は5月22日(金)〜24日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催されます。海外パブリッシャー、投資家、メディアが集結し、商談ブースは初日朝から満席。日本のインディーゲームクリエイターたちにとって、年に一度の『世界に見つけてもらう』チャンスです。

 そして今年、そのBitSummit会場で、日本のインディー開発者にとってもうひとつ重要なニュースがあります。

Supercell AI Innovation LabがBitSummitに参戦――世界からAIゲーム開発者が集結

 「クラロワ」「ブロスタ」「クラッシュ・オブ・クラン」など、世界中で愛されるモバイルゲームを次々と生み出してきたフィンランド発のゲーム企業「Supercell」が、2026年初頭にSupercell AI Innovation Labという新プログラムを立ち上げました。世界中のAIゲーム開発プロジェクトから少数を採択し、メンタリング・資金・パブリッシング支援を提供するプログラムです。

 オープンな画像生成AIの元祖「Stable Diffusion」を開発したStability AIの東京オフィスを率いたJerry Chi氏が東京ラボをリードしています。



 海外からだけでなく、日本からも AICU Games「Football News Hero」の他、複数の開発者が発表を予定しています。

 冒頭に紹介した『月額100万円超え』の正体は、こうした昼夜を問わずAIエージェントを走らせ続けるシニア開発者たちの異常な集中力にほかなりません。……ところで、これは筆者ひとりの異常事態ではないようです。同じSupercell AI Innovation Labに参加し、Unityで A-LIFE(人工生命)ゲーム「ANLIFE」を開発している中村さんも、「Cursor」経由のOpenAI Codexで月額100万円を超えた、とこっそり教えてくれました。エージェントが「Claude Code」だろうが「OpenAI Codex」だろうが、結末は同じ。AIゲーム開発の現場では、いま『コーディングエージェント月額100万円超え』 が新たな『業界スタンダード』であり、『明確な覚悟がある開発行為』になりつつあるのです。

⭐️筆者注:「ANLIFE」を開発するアトラクチャー株式会社の中村政義さんは、2016年にNHKの番組で宮崎駿監督が『極めてなにか生命に対する侮辱を感じます』と一喝し、激怒した技術デモ映像を作ったという伝説の持ち主でもあります。

 30年近く人工生命と格闘してきたレジェンドたちが、AI駆動ゲーム開発を舞台に世界最高のデスゲームで作品を作っている――この事実だけで、いまAI×ゲーム×インディーの現場がどれほどホットかを物語っているのではないでしょうか。

まとめ

 最後に大事なポイントをまとめます。前回ご紹介した『Claude Mythos』――人智を超えた知能とサイバーセキュリティの歴史的転換点――は確かに大きな話題でした。しかし、いま私たちの目の前で起きていることは、「Mythos」問題よりも大きい問題 かもしれません。

 すなわち、AI駆動開発を全力で回す1人のエンジニアが、日本人ソフトウェアエンジニアの平均人月をはるかに超えていく未来が、もう見えているのです。経済産業省の試算では、日本の平均的なソフトウェアエンジニアの単価は人月100万円前後。「Claude Code 」に月100万円を投じられた開発者は、すでに1人で2人月、3人月どころか『小規模なゲームを1人で開発できるレベルの生産性』を叩き出しています。これは『AIに仕事を奪われる』というレベルの話ではありません。AIを使いこなさない人と、使いこなす人間を受け入れ、投資する側に、『人件費+AI費用』で超巨大な差が開くということです。

 ゲーム開発のレジェンドたちが、AI駆動開発によってさらに新しいゲームを作り続ける実験、これも筆者にとってもたいへん新しい挑戦でした。ベテラン開発者ほど『枯れた技術で安全に作るものだ』という思い込みは、クロ子(Legends Team内での「Claude Code」の呼称)を限界を超えて活用した真剣なAI駆動開発によってあっさり覆されたのです。現在、シニアのゲーム開発者は毎日楽しくClaudeでAIゲーム開発をしています。一方で、結局は『ゲーム発表の直前まで最高の体験を開発し続ける』という業も、ゲーム開発者の動かしがたいサガ(業)です。これはAIになっても置き換えようがありません。

 AICUはBitSummit初日に合わせ、AIを活用したゲーム開発の最前線で活躍するクリエイター・開発者・投資家が集う交流会AI GAME NIGHT IN KYOTOを開催します。会場はみやこめっせ周辺の徒歩圏。開場18時半、19時開始、21時半まで。終了後は会場から徒歩0分のBBQレストランでDeep Meetupとして公式懇親会の延長戦も予定しています。

 関西初のAICUオフラインミートアップでもあります。会場の都合上、定員に達し次第締め切りますのでお早めに!

 AI×ゲーム×インディーは、いま日本から世界に発信できる数少ない『勝てる領域』です。ヘルシンキの白夜の下からこの原稿を書いている筆者も、5月22日には京都に降り立ちます。岸辺から眺めるか、波に乗るか――ゲームとAIの最前線で、ぜひお会いしましょう。

#BitSummit2026 #AIGameNight #AICUGames #Supercell #CreativeAI

しらいはかせ(白井暁彦)X@o_ob

AICU Japan株式会社 X@AICUai 代表/作家/生成AIクリエイター/博士(工学)。

「つくる人をつくる」をビジョンに、世界各地のCG/AI/XR/メディア芸術の開発現場を取材・研究・実践・発信している。