Blender ウォッチング
ローカル生成AIで画像から3Dモデルを生成する! 「TripoSR」のインストール 最終章
2024年5月2日 06:55
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
今回も前回に引き続き、「TripoSR」のローカルのWindows環境にインストールする方法の解説です。
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「TripoSR」インストールに必要なパッケージについて
前回、「Git」「Visual Studio+Build Tools+Windows 10 SDK」「Python 3.x」「CUDA Toolkit」(GPU利用時のみ)をインストールしました。
今回はいよいよコマンドプロンプト(CUI)を使用して下記をインストール・ビルドします。インターネットで数GBのファイルをダウンロードすることになりますので「約6GB」のディスクスペースと時間を用意しておいてください。
- 「TripoSR」
- 「pytorch」
- その他依存パッケージ(自動インストール)
多数のツールや設定が必要になり、トラブルも多岐に渡るため、「コマンドプロンプト(CUI)が使用できること」「自力で検索・問題解決できること」を前提とし、ツールの使用方法などの一部の説明を割愛させていただきます。ご了承ください。
また、導入は自己責任でお願いいたします。
「x64 Native Tools Command Prompt」の起動
前回「Python」外の必須ツールをインストールしましたので、次は「Python」のパッケージ群をインストール・ビルドしていきます。
これにはインストールした「Build Tools」内の「x64 Native Tools Command Prompt」(以下「x64コマンドプロンプト」)を使用します。
スタートメニューまたは[Win]+[S]キーから「x64 native」とキー入力して検索して起動します。他のコマンドプロンプトでは後述の「torchmcubes」のビルドで失敗しますので注意してください。
「TripoSR」のクローン作成
「TripoSR」のコードのダウンロードは、GitHubから行います。前回Gitもインストールしたので「git clone」でローカルにクローンをサクッと作成しちゃいましょう。
- ▼GitHub - VAST-AI-Research/TripoSR
- https://github.com/VAST-AI-Research/TripoSR
上記のページのソースファイルのリストの右上にある、緑色の[< > コード]ボタンからgit clone用のパスを取得し、git cloneの後に指定するのですが、今回は下記に指定した物をご用意しております(料理番組風)。
git clone https://github.com/VAST-AI-Research/TripoSR.git <出力先のパス>
上記の<出力先のパス>を置きたい場所(D:¥triposrなど)を入れるか、カレントディレクトリの下に置きたい時は無指定でx64コマンドプロンプトに貼り付けて実行してください。この場合は「カレントディレクトリ¥TripoSR」になります。
出力先のパスはユーザー権限で実行でき、念のため多バイト文字(漢字など)を使用していないパスにします。また、仮想化してパッケージをインストールするため、6GB程度の空きスペースが必要です。
仮想環境の作成
次に「Python」の仮想環境を構築します。これは既存のパッケージとインストールしたパッケージによるお互いの影響を防ぎ、トラブルを回避するためです。
- クローン出力先のディレクトリ(「run.py」のあるディレクトリ)に「cd」で移動します。
- [python -m venv venv]を実行します。
- さらに[venv¥scripts¥activate]で「有効化」します。
画面がリセットされてプロンプトの先頭に「(venv)」が付き、上記ディレクトリに「venv」ディレクトリが作成されます。
なお、以降のインストール手順中でx64コマンドプロンプトを閉じて中止した場合、再開時に「run.py」のあるディレクトリで仮想環境を再度「有効化」してください(作成はしません)。
インストール・ビルド用ツールのアップグレード
インストールやビルドを行うツールをアップグレードします。
[pip install --upgrade pip wheel setuptools] を実行し、「pip」「wheel」「setuptools」の3つのパッケージが最新版になります。
「pytorch」のインストール
下記リンク先から、必須パッケージの一つである「pytorch」(パッケージ名はtorch)をインストールします。
- ⇨Start Locally | PyTorch
- https://pytorch.org/get-started/locally/
このページを少しスクロールすると下図のようなUIがあり、環境をクリックすると、「Run this Command」の項にコマンドプロンプト用のコマンドを生成できます。指定が終わったらコマンド文字列をクリップボードにコピーしておきます。
前回で「CUDA Toolkit」をインストールした方は、そのバージョンをちゃんと指定しておきましょう。「CUDA Toolkit」のバージョンを忘れた方は、コマンドプロンプト内で[nvcc -V]を実行すると確認できます。
そして上記で作成したコマンド文字列(pip3 install torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu121 など)を貼り付けて実行します。ちゃんとパスが通っていれば、下図のように多数のファイルを自動的にダウンロード・インストールします。
なお、本記事では「pytorch 2.2.2」を使用しています。
依存パッケージのインストール
他にも依存するパッケージが大量にありますが、ここからは自動的にインストールできます。
- [set DISTUTILS_USE_SDK=1]を実行し、依存パッケージの1つである「torchmcubes」のビルドで必要な環境変数を設定します。
- [pip install -r requirements.txt]を実行します。
多数のパッケージのインストールとビルドが自動的に行われます。もしここでエラーで止まる場合は、次の「◆トラブルシューティング」をチェックしてみてください。
トラブルシューティング
インストールがうまくいかない場合は次を確認してみてください。
- 「Build Tools」と「Windows 10 SDK」の両方をインストールしているか
- 「x64 Native Tools Command Prompt」を使用しているか
- 仮想環境を作成し、「有効化」しているか(後者は忘れがち)
- 「set DISTUTILS_USE_SDK=1」をちゃんと実行しているか
上記を確認したら、[pip install -r requirements.txt]を再実行してみてください。
もしインストールした「CUDA Tookit」と違うバージョン用の「pytorch」をインストールしてしまっていた場合は、「pip uninstall torch torchmcubes」でアンインストール後、「pytorch」(上記参照)と「torchmcubes」(pip install git+https://github.com/tatsy/torchmcubes.git)だけ再インストールしてみてください。
使用方法
Webブラウザーを利用し、GUIによる利用が可能です。なお、以降の起動は「cmd.exe」など「x64 Native Command Prompt」以外のコマンドプロンプトでも可能です。
- [python gradio_app.py]を実行します。
- しばらくするとローカルURL(http://127.0.0.1:7860 など)が表示されますのでコピーします。
- Webブラウザーを起動し、アドレス欄に貼り付けて移動します。
初回は少し時間がかかるものの、2回目以降は1分程度で立ち上がります。
GPUの場合はVRAMを、CPUの場合はメインメモリを大量消費します。筆者が試した時にはピークで10GB使用したこともありましたので、空きメモリ容量にはご注意ください。
コマンドプロンプトを閉じるか[Ctrl]+[C]キーで終了です。
GUIが不要なら、コマンドプロンプトから直接 『python run.py <画像ファイル名> --output-dir <出力ディレクトリ>』 (python run.py examples/chair.png --output-dir output/など)で、3Dモデルを直接生成することもできます。『--device cpu』スイッチを指定すると、GPUモデルでもCPUが使用できます。
仮想環境はコマンドプロンプトを終了すると自動的に終了します。
以降の起動についてとバッチファイルによる起動
上述どおり、起動は通常のコマンドプロンプトで可能ですが、仮想環境を毎回有効化しないといけないのが少し面倒です。
というわけで、仮想環境のアクティブ化とサーバーの起動を自動設定するため、下記のようなバッチファイルを「triposr.bat」などで作成しておくと便利です。
下記の例ではサーバーの起動を待ってブラウザーでアクセスすることはできないため、サーバ起動後にブラウザをリロードする必要があります。URLは大抵の場合ループバックアドレスである「127.0.0.1」の指定で問題ないと思いますが、違う場合は書き換えてください。
cd <インストール先のパス>
start http://127.0.0.1:7860
call venv\scripts\activate & python gradio_app.py