Blender ウォッチング

ローカル生成AIで画像から3Dモデルを生成する! 「TripoSR」のインストール 最終章

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

バッチファイルからWeb UI用サーバを起動

 今回も前回に引き続き、「TripoSR」のローカルのWindows環境にインストールする方法の解説です。

「TripoSR」インストールに必要なパッケージについて

 前回、「Git」「Visual Studio+Build Tools+Windows 10 SDK」「Python 3.x」「CUDA Toolkit」(GPU利用時のみ)をインストールしました。

 今回はいよいよコマンドプロンプト(CUI)を使用して下記をインストール・ビルドします。インターネットで数GBのファイルをダウンロードすることになりますので「約6GB」のディスクスペースと時間を用意しておいてください。

  • 「TripoSR」
  • 「pytorch」
  • その他依存パッケージ(自動インストール)

多数のツールや設定が必要になり、トラブルも多岐に渡るため、「コマンドプロンプト(CUI)が使用できること」「自力で検索・問題解決できること」を前提とし、ツールの使用方法などの一部の説明を割愛させていただきます。ご了承ください。

また、導入は自己責任でお願いいたします。

「x64 Native Tools Command Prompt」の起動

 前回「Python」外の必須ツールをインストールしましたので、次は「Python」のパッケージ群をインストール・ビルドしていきます。

 これにはインストールした「Build Tools」内の「x64 Native Tools Command Prompt」(以下「x64コマンドプロンプト」)を使用します。

 スタートメニューまたは[Win]+[S]キーから「x64 native」とキー入力して検索して起動します。他のコマンドプロンプトでは後述の「torchmcubes」のビルドで失敗しますので注意してください。

スタートメニューからまたは[Win]+[S]キーから「x64 native」と入力して検索・起動。通常は全部入力しなくてもヒットするはず

「TripoSR」のクローン作成

 「TripoSR」のコードのダウンロードは、GitHubから行います。前回Gitもインストールしたので「git clone」でローカルにクローンをサクッと作成しちゃいましょう。

 上記のページのソースファイルのリストの右上にある、緑色の[< > コード]ボタンからgit clone用のパスを取得し、git cloneの後に指定するのですが、今回は下記に指定した物をご用意しております(料理番組風)。

git clone https://github.com/VAST-AI-Research/TripoSR.git <出力先のパス>

 上記の<出力先のパス>を置きたい場所(D:¥triposrなど)を入れるか、カレントディレクトリの下に置きたい時は無指定でx64コマンドプロンプトに貼り付けて実行してください。この場合は「カレントディレクトリ¥TripoSR」になります。

 出力先のパスはユーザー権限で実行でき、念のため多バイト文字(漢字など)を使用していないパスにします。また、仮想化してパッケージをインストールするため、6GB程度の空きスペースが必要です。

公式のソースコード配布ページ。緑色のボタン(①)をクリックし、「コピーアイコン」(②)をクリックしてgitクローン用パスを取得後[git clone]の後ろに貼り付けて実行

仮想環境の作成

 次に「Python」の仮想環境を構築します。これは既存のパッケージとインストールしたパッケージによるお互いの影響を防ぎ、トラブルを回避するためです。

  1. クローン出力先のディレクトリ(「run.py」のあるディレクトリ)に「cd」で移動します。
  2. [python -m venv venv]を実行します。
  3. さらに[venv¥scripts¥activate]で「有効化」します。

 画面がリセットされてプロンプトの先頭に「(venv)」が付き、上記ディレクトリに「venv」ディレクトリが作成されます。

 なお、以降のインストール手順中でx64コマンドプロンプトを閉じて中止した場合、再開時に「run.py」のあるディレクトリで仮想環境を再度「有効化」してください(作成はしません)。

クローンを出力したディレクトリに移動後[python -m venv venv]を実行し、[venv¥scripts¥activate]で有効化。なお「python」は「py」でもOK

インストール・ビルド用ツールのアップグレード

 インストールやビルドを行うツールをアップグレードします。

  [pip install --upgrade pip wheel setuptools] を実行し、「pip」「wheel」「setuptools」の3つのパッケージが最新版になります。

[pip install --upgrade pip wheel setuptools]を実行し、「pip」「wheel」「setuptools」のパッケージを自動アップグレード

「pytorch」のインストール

 下記リンク先から、必須パッケージの一つである「pytorch」(パッケージ名はtorch)をインストールします。

 このページを少しスクロールすると下図のようなUIがあり、環境をクリックすると、「Run this Command」の項にコマンドプロンプト用のコマンドを生成できます。指定が終わったらコマンド文字列をクリップボードにコピーしておきます。

 前回で「CUDA Toolkit」をインストールした方は、そのバージョンをちゃんと指定しておきましょう。「CUDA Toolkit」のバージョンを忘れた方は、コマンドプロンプト内で[nvcc -V]を実行すると確認できます。

「pytorch」インストールコマンド生成用のWeb UI。「Run this Command」にコマンドが生成されるのでコピーしておこう

 そして上記で作成したコマンド文字列(pip3 install torch torchvision torchaudio --index-url https://download.pytorch.org/whl/cu121 など)を貼り付けて実行します。ちゃんとパスが通っていれば、下図のように多数のファイルを自動的にダウンロード・インストールします。

 なお、本記事では「pytorch 2.2.2」を使用しています。

上記のコマンド文字列で「pytorch」とパッケージをインストール中

依存パッケージのインストール

 他にも依存するパッケージが大量にありますが、ここからは自動的にインストールできます。

  1. [set DISTUTILS_USE_SDK=1]を実行し、依存パッケージの1つである「torchmcubes」のビルドで必要な環境変数を設定します。
  2. [pip install -r requirements.txt]を実行します。

 多数のパッケージのインストールとビルドが自動的に行われます。もしここでエラーで止まる場合は、次の「◆トラブルシューティング」をチェックしてみてください。

[set DISTUTILS_USE_SDK=1]と[pip install -r requirements.txt]で必要パッケージをインストール中。初回だとパッケージがないため、もっと華やかな表示になる(ダウンロードの進捗バーが表示される)はず

トラブルシューティング

 インストールがうまくいかない場合は次を確認してみてください。

  • 「Build Tools」と「Windows 10 SDK」の両方をインストールしているか
  • 「x64 Native Tools Command Prompt」を使用しているか
  • 仮想環境を作成し、「有効化」しているか(後者は忘れがち)
  • 「set DISTUTILS_USE_SDK=1」をちゃんと実行しているか

 上記を確認したら、[pip install -r requirements.txt]を再実行してみてください。

 もしインストールした「CUDA Tookit」と違うバージョン用の「pytorch」をインストールしてしまっていた場合は、「pip uninstall torch torchmcubes」でアンインストール後、「pytorch」(上記参照)と「torchmcubes」(pip install git+https://github.com/tatsy/torchmcubes.git)だけ再インストールしてみてください。

「torchmcubes」のインストールとビルド中。筆者は「DISTUTILS_USE_SDK」の設定を忘れていたためにビルドに失敗する羽目に

使用方法

 Webブラウザーを利用し、GUIによる利用が可能です。なお、以降の起動は「cmd.exe」など「x64 Native Command Prompt」以外のコマンドプロンプトでも可能です。

  1. [python gradio_app.py]を実行します。
  2. しばらくするとローカルURL(http://127.0.0.1:7860 など)が表示されますのでコピーします。
  3. Webブラウザーを起動し、アドレス欄に貼り付けて移動します。

 初回は少し時間がかかるものの、2回目以降は1分程度で立ち上がります。

 GPUの場合はVRAMを、CPUの場合はメインメモリを大量消費します。筆者が試した時にはピークで10GB使用したこともありましたので、空きメモリ容量にはご注意ください。

 コマンドプロンプトを閉じるか[Ctrl]+[C]キーで終了です。

画像では「-W ignore」でワーニングを消しているが、気にならないならこのスイッチは省略してOK

 GUIが不要なら、コマンドプロンプトから直接 『python run.py <画像ファイル名> --output-dir <出力ディレクトリ>』 (python run.py examples/chair.png --output-dir output/など)で、3Dモデルを直接生成することもできます。『--device cpu』スイッチを指定すると、GPUモデルでもCPUが使用できます。

 仮想環境はコマンドプロンプトを終了すると自動的に終了します。

以降の起動についてとバッチファイルによる起動

 上述どおり、起動は通常のコマンドプロンプトで可能ですが、仮想環境を毎回有効化しないといけないのが少し面倒です。

 というわけで、仮想環境のアクティブ化とサーバーの起動を自動設定するため、下記のようなバッチファイルを「triposr.bat」などで作成しておくと便利です。

 下記の例ではサーバーの起動を待ってブラウザーでアクセスすることはできないため、サーバ起動後にブラウザをリロードする必要があります。URLは大抵の場合ループバックアドレスである「127.0.0.1」の指定で問題ないと思いますが、違う場合は書き換えてください。

cd <インストール先のパス>
start http://127.0.0.1:7860
call venv\scripts\activate & python gradio_app.py

終わりに

 お疲れさまでした。予想以上に長くなってしまいましたが、あせらずやってみてください。スペースの都合で「Blender」連載のはずなのに今回名前すら出てこなかったですが気にしないでいただけるとありがたいです……。

 ではまた。