Blender ウォッチング
タブレット版「Blender」でリゾートでのモデリングを実現!? こいつ……動くぞ!
2025年9月25日 06:55
本連載では、無料の高機能3DCG統合環境「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
前回は手持ちのAndroidタブレットに「Blender」をインストールすると意気込んでみましたが、あえなく玉砕してしまいました。今回は別の方面からリベンジしたいと思います。
Meta Quest 2で行こう!
前回、Android版「Blender」を試そうと、手元にあるタブレットに導入を試みましたが、いずれも旧式ばかりで、まともに動作させることができませんでした。
しかし、筆者は気づきました。Android互換OSで、高性能なArm系CPU(とGPU)を搭載する端末であれば別にスマホやタブレットじゃなくていいのでは……私にはまだ「Meta Quest 2」がある!
Meta Quest 2はVR用に作られたヘッドマウントディスプレイ(HMD)で、表示だけでなく、本体のみでもVR用アプリが利用できます。
さらにVR用アプリ以外にも、Android用アプリが利用可能で、「Snapdragon XR2 Gen 1」を搭載、OSもAndroid 14相当(adbコマンド調べ)と、少なくともインストールで足切りされることもないでしょう。試して見る価値はありそうです。
apkファイルのインストール
Quest 2へのapkファイルのインストールには「SideQuest」を使用しました。USBケーブルでPCとQuest 2をつなぎ、前回同様に「blender.on.Android.v0.0.5.apk」をインストールします。
なお、「SideQuest」の利用に際し、開発者登録など色々と準備が必要なのですが、長くなるため説明は割愛させていただきます。
インストールが成功していれば、Quest 2の[ライブラリ]-[正体不明のアプリ]タブに名前があるので、そこから起動できます。
前回のAndroidタブレットの時同様、ファイルアクセスの権限を与えます。前回には表示されなかった初期化画面が表示されました。
無事、見慣れた画面が表示されました。新規インストール時のスプラッシュによる設定もあります。
なお、以降の画像にはリゾートっぽい風景が映りこんでいますが気にしないでください(Quest2のルーム)。
操作方法について
以降はあくまで「Meta Quest 2」での動作確認になります。端末によっては動かない機能や、逆に動作する機能もあるかもしれません。
設定と入力
デフォルトではインターフェイス(ボタンやフォントなど)が大きめに設定されています。見やすくていいのですが、ヘッダーなどの各エリアの端に隠れたインターフェイスのスクロールするのに使用するホイールボタン(中マウスボタン、[MMB])が後述の[ショートカットキーボード]以外にないため、下手にUIを大きくすると、端に隠れたボタンやアイコンにアクセスしづらくなります。
[編集メニュー]-[プリファレンス]-[解像度スケール]([インターフェイスタブ]-[表示])でうまく調節しましょう。
なお、プリファレンスウィンドウは画面全体に表示されます。設定の保存は左下の[≡](ハンバーガーボタン)から[プリファレンスを保存]を実行すると、元の「Blender」の画面に戻ります。
入力方法はいわゆる「タップ」が「左クリック」になります。触れたまま動かすと「ドラッグ」に、現時点では動かさず長押しすると「右クリック」になりますが、右クリックになる前にドラッグすることで、回転などの操作も可能です(後述)。
Bluetoothキーボードとマウス対応
Bluetoothのキーボードやマウスにも対応しており、Quest2でも利用はできたのですが、[Alt]キーや[Shift]キーなどの修飾キーが使えませんでした。他の端末では利用できるかもしれません。
画面の操作
3Dビューポートの回転は右上の[ナビゲーションギズモ]を使うか、左下をタップして表示される[ショートカットキーボード]の[MMB]ボタンを押して3Dビューポート上でドラッグします。[MMB]ボタンは前述のインターフェイスのスクロールにも使用します。
パンは手のひらアイコンを使うか、[ショートカットキーボード]の[Shift]ボタンと[MMB]ボタンを押してドラッグします。
2Dエディターのパンは[MMB]ボタンを使用するか、スクロールバーを使用します。
ズーム
3Dビューポートと2Dエディターの両方で、二本指によるズームができます。
長押しドラッグによる操作
画面に指で触れて動かさずに少し長押した後、右クリックメニューが出る前に指を移動すると、現在のエディターのパン(2Dエディター)や回転(3Dエディター)、インターフェイスのドラッグ(ヘッダーなど)が可能です。しかしタイミングが難しいので、素直に[MMB]ボタンを使用した方が早いかもしれません。
レイアウトについて
- ツールバーやサイドバーを境界にある[<]で開くことができませんでした。対応するキー([T]と[N])を[ショートカットキーボード]などで押して開いてください。
- エディター四隅のドラッグによる分割はできないようです。右クリックメニューで代用してください。
利用可能な機能
画面表示とレンダリング
EEVEEレンダーと「マテリアルシェーディングモード」は残念ながらうまく表示されませんでしたが、Cyclesレンダーは「CPU」でのみ利用可能でした。端末のスペックに依存すると思われますが、さほど重くないモデルならプレビュー表示できそうです。マテリアル編集も可能です。
[F12]キーなどによるレンダリングもできますが、一時ウィンドウからの復帰ができないことに加え、マシンパワーの問題もあってあまりお勧めできません。
モデリングとペイント
編集モードによるモデリングは、キーボードのショートカットを多用するツール(ナイフ、複数選択など)以外は普通に使えます。
スカルプトやペイント系のエディターも、ブラシ半径の変更や画面操作が面倒な以外は利用可能です。
その他の機能
- アドオンはバンドルの一部の動作を確認していますが、すべて動く保証はありません。
- ジオメトリノードは利用可能(上掲)ですが、v3.6ベースなため、v4.0以降で追加されたノードを使った物は動きません。
- グリースペンシルは表示に異常があります(背景が白ではない)。
- コンポジターも動作しますが、v3.6ベースなため、v4.0以降と挙動が違います。
- ビデオシーケンスエディター、動画クリップエディターについては未検証です。
- 「Blender 4.4」以降で保存したファイルではメッシュデータが消えます。
- レンダリング用の一時ウィンドウを表示したまま保存したblendファイルを読み込むと、メインウィンドウへの切り替えが表示できなくなって詰みます。いったん終了させ、読み込み時の設定で「UIをロード」を無効にして開きましょう。