#モリトーク

理想のソフトを求めて

(12/09/18)

 あなたが考える理想のソフトとはいったいどんなものだろうか。多機能性を重視する人もいれば、使い勝手を優先する人もいるだろう。先週のレビュー記事にて筆者は、アンインストール支援ソフトの“決定版”として「GeekUninstaller」を紹介した。決定版とはつまり、理想のソフトということだ。どのジャンルのソフトにもその時代に合わせて不可欠な機能と不要な機能があり、それが“黄金の組み合わせ”であると筆者は考える。そして、筆者が「GeekUninstaller」を決定版と評した理由も“黄金の組み合わせ”にある。

「GeekUninstaller」「GeekUninstaller」

 64bit版OSにもネイティブ対応する快適な動作、USBメモリでの持ち運び、インクリメンタルサーチ、残骸削除機能といった「GeekUninstaller」の特長は、そのひとつひとつを見ればとくに珍しいものではなく、同ソフト独自の機能があるわけでもない。ところが、これらの機能を網羅した“黄金の組み合わせ”のアンインストール支援ソフトが過去に存在したかといえば、少なくとも窓の杜では取り上げたことがなく、これまで盲点となっていた。

 オンラインソフトの作者が世界中にいることを考えると、盲点になっている“黄金の組み合わせ”はすぐに見つかりそうなものだが、盲点のまま気付かれず、なかなか世に出てこないケースは意外に多いのだ。実際、筆者が窓の杜へ記事を寄稿するためにソフトをテストしていると、『ようやく出てきたか』『こんなソフトを待っていた』と感心させられることがある。「GeekUninstaller」もそんなソフトのひとつであり、アプリケーションのアンインストールという目的に焦点を絞り、余計な機能を追加せず、必要な機能を最適な形で搭載している。

初版公開時の「Google Chrome」初版公開時の「Google Chrome」

 ところで、既存の機能をシンプルにまとめることで理想的なソフトを完成させた、もっとわかりやすい例が存在する。それは「Google Chrome」だ。「Google Chrome」が公開される以前のWebブラウザーは多機能化が進み、少しごちゃごちゃし始めていた。そんなときに登場した「Google Chrome」は当初、機能不足と思われたが、結果的にWebブラウザーのデザインをリセットするような役割を果たし、いまや手本のような存在になっているほどだ。しかも興味深いことに、「Google Chrome」は初版公開から4年が経っても、その基本的な使い勝手がほとんど変わっていない。Google社は「Google Chrome」を公開する前から、Webブラウザーに必要な“黄金の組み合わせ”を知っていたかのようだ。

 逆にWindows MeやWindows Vistaは、機能の組み合わせに失敗した例であり、いくら斬新な機能を追加しても、それをただ足し算するだけでは全体のまとまりがなく、“黄金の組み合わせ”とはならなかった。Windows 8には“Windowsストアアプリ”という新しい要素が加わるが、はたしてそれがWindows 8にとっての“黄金の組み合わせ”となるのだろうか。また、これまでデスクトップ上で動作していたソフトが“Windowsストアアプリ”へ対応した場合、その“黄金の組み合わせ”も変化するはずなので、理想のソフト・アプリを探す楽しみが増えそうだ。

(中井 浩晶)