どれ使う?プログラミング教育ツール

ブロックをつなげてプログラミング「Scratch」 ~奥が深いツールはサンプルのマネから始めよう

 2020年度からついに小学校でプログラミング教育が実施されます。これに伴い家庭でも手軽にプログラミングを学習できるツールが多数登場していますが、どんなツールを使えばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで本連載では家庭でのプログラミング教育にピッタリなお勧めツールを紹介していきたいと思います。

 子ども向けのプログラミング教育に興味のある人なら一度は「Scratch(スクラッチ)」という名前を聞いたことがあるでしょう。「Scratch」は、子どもがプログラムのコードをテキスト入力しなくてもマウス操作などでプログラミングできるように設計されたビジュアルプログラミング言語です。「Scratch」の環境内で動かせるアニメーションやゲームなど、さまざまなインタラクティブ作品を作ることができます。Webブラウザー上で使えるので(「Internet Explorer」には非対応)インストールの手間がありません。また、インターネット接続がない環境で使えるように、アプリ「Scratchデスクトップ」(Windows/macOS対応)も用意されています。

「Scratch」の初めの画面。上部のメニュー左端[作る]からプログラム作成画面に入る

「Scratch」はブロック型のビジュアルプログラミング

 ビジュアルプログラミングのツールは、プログラムに必要な要素がグラフィカルにパーツ化されています。「Scratch」の場合は、プログラミングに使う指示が小さなブロックになってたくさん用意されているので、それらの中から必要な指示ブロックを選んでつなぎ合わせてプログラムを作ります。

「Scratch」の基本的なUI。左側に指示ブロックが格納されていて、中央のエリアにドラッグしてプログラムを作成する。右上のエリアが作品の制作と実行に使うエリア。このプログラムの場合、スペースキーを押すと“10歩”分前に進む。

 ブロックには指示が言葉で書いてあるのが特徴で、文字が読めなければ利用できませんが、日本語の場合ひらがなを使う設定にもできます。ブロックを並べる順序や論理構造の作り方は、一般的なテキスト言語の考え方に似ています。

左上の「Scratch」ロゴの隣の地球マークで言語切り替えができる。この画面はひらがなモード

 矢印やアイコンで表現されているビジュアルプログラミングツールの場合は、文字が読めなくても利用できますが、作れるプログラムの範囲は狭まります。その点、「Scratch」はプログラミング言語そのものという発想で作られているので、簡単な作品からかなり複雑な作品まで幅広く作ることができます。

なんでもできるからこそ最初はチュートリアルを

 幅広くなんでも作れるということは、それだけブロックの選択肢が多いので、慣れないうちは、何をどのように使って良いのかわからないものです。そもそも「Scratch」の使い方や流儀に慣れる必要があります。

作成したプログラムは作品エリアの上にある緑の旗をクリックすると実行される。プログラムの最初には、“緑の旗が押されたとき”のブロックを入れておく

 そこでおすすめしたいのが、まずは豊富に用意されたチュートリアルに取り組むことです。初期画面の上部メニューから[アイデア]に入ると複数のチュートリアルが用意されています。はじめは[さあ、トライしよう!]のチュートリアルから始めると基本的な使い方がわかります。

チュートリアルを選ぶ画面
[さあ、トライしよう!]のチュートリアル。動画や音声で操作方法を解説してくれる。

 使い方がわかったら、[アイデア]ページ中ほどのアクティビティーガイドの中から気になるチュートリアルを選んでチャレンジしましょう。迷ったら[名前を動かそう]から順に挑戦してみてください。ただし、チュートリアルの種類や部分によって、説明画面が英語版だったり、翻訳が日本語字幕だったりするものがあるので少し不安に思うかもしれません。

 そこで、もうひとつ参考にできる手段が[コーディングカード]です。チュートリアルを開くと[コーディングカード]をダウンロードできるので、この内容とチュートリアル両方を参照するとさらにわかりやすくなるでしょう。なお、[コーディングカード]はまとめてダウンロードすることもできるので、印刷したりタブレットに入れて適宜参照できるようにしておくと便利です。

[名前を動かそう]のチュートリアルを開くと[コーディングカード]と[教育者向けガイド]をダウンロードできるようになっている

 「Scratch」は、プログラミングで自由に作品を作るためのツールです。なんでもできるからこそ、まずは模倣から入った方が使い方のイメージをつかめます。チュートリアルの通りに作ってはちょっとアレンジしてみるということを繰り返してみてください。利用者が多いツールなので、書籍やWeb上でサンプルを公開している人も多いですから、参考にできるコンテンツが他にもたくさん見つけられるでしょう。

コミュニティなどの特徴もある

 「Scratch」上にはコミュニティがあり、IDを取得すれば、オンライン上で作品を保存、管理したり、自分の作品を公開することができます。「Scratch」にはオープンソースの考え方に根ざした「リミックス」という文化があり、公開されている作品は、他のユーザーが改変することができます。他の人の作品のプログラムを見て学ぶことができるのが利点です。IDの登録にはメールアドレスが必要なので、子どものID取得や管理は必ず大人が行なってください。

自分のIDで作品を公開をすると、“好き”“お気にいり”“リミックス”“閲覧”の数が表示され、作品にコメントを残してもらうこともできる

 なお、IDを作らなくても「Scratch」を利用することはできます。プロジェクトのファイルをパソコンにダウンロードしたり保存ファイルを読み込むことはできるので、少し試したいという方は、手軽にIDなしでまずは触ってみると良いでしょう。

 「Scratch」はMITメディアラボのライフロング・キンダーガーテン・グループが開発していて、子ども向けプログラミングツールの世界では歴史があリます。そのため、他の多くのツールが影響を受けていて、ブロック型にビジュアライズするアイデアは色々なツールで採用されています。また、「Scratch」自体がオープンソースなので、技術的に「Scratch」をベースにして作られているアプリもあります。

 「Scratch」に慣れていると、他の類似したアプリを理解しやすくなったり、仲間の輪が広がるという効果もあるでしょう。ぜひ、楽しみながらいろいろな作品作りにチャレンジしてください。

「Scratch」内に用意されている素材だけで作った単純なアニメーションの例。音を足したりスプライト内のコスチュームを変えるだけで楽しさが出る