週末ゲーム

第668回

ふしぎな生物と波動でバトル!シンプルなコマンドによる駆け引きが魅力のRPG「ShrineStory オヤシロ物語」

繰り返し戦って敵を知り、頭脳戦を勝ち進んでいくステージクリア型の作品

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、1vs1バトルで敵を倒しながら物語を進めていくRPG「ShrineStory オヤシロ物語」を紹介しよう。

 なお、本作は有償の同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在はダウンロード版を購入可能。体験版も公開されている。

西暦3426年のトーキョーを舞台に“波動使い”の戦いを描くRPG

波動使いのアキラは寂れたオヤシロを拠点に、波動生物を迎え撃っていく
オヤシロで準備を整え、波動生物との戦いに向かう

 「ShrineStory オヤシロ物語」の舞台となるのは、未知の物質“波動”をエネルギーとする“波動生物”と、彼らを撃退できる“波動使い”が戦いを繰り広げている西暦3426年のニッポン王国トーキョー島。主人公である波動使いの少女“アキラ”はニシタマ市の寂れた“オヤシロ”に派遣され、ここを拠点に波動生物を迎え撃っていくことになる。

 ゲームは話数で区切られており、拠点となるオヤシロで戦闘準備を行い、敵と戦って勝つと話数が進む。負けてもゲームオーバーにはならず、同じ敵に再挑戦が可能。プレイ感としてはコンティニュー無限のステージクリア型といった印象だ。

 戦闘終了後は勝敗に関わらず“お賽銭”が手に入り、装備品を購入して戦力を強化できる。また、ある程度ゲームを進めると修行によってステータスを上げられるようになるが、この修行に必要な“スピリット”も勝敗に関わらず入手可能。もし敵に勝てなくても、再挑戦しながら強くなっていくことができる。

波動をチャージして解放!シンプルなコマンドで戦術的な読み合いバトルが展開

戦闘の基本は3つのコマンド
チャージコマンドや装備品の効果により、波動の値はみるみる上がっていく

 戦闘はターン制のコマンド選択型。ターン内の行動順は基本的にアキラが先手、一部のすばやい敵では逆と固定されている。敵・味方とも基本的に“波動解放”、“チャージ”、“呪い”という3つのコマンドを使用する仕組みで、コマンドの効果が相互に影響し合うことにより、シンプルな作りで戦術的な読み合いバトルを実現しているのが特徴だ。

 コマンドのうち波動解放は、相手に直接攻撃する唯一の手段。キャラクターの上に表示されている“波動”の数値の分だけダメージを与えられる。ただしアキラの波動の初期値は少なく、そのまま波動解放をしても効果は低い。そこで重要となるのがチャージコマンドで、選択すると波動の値を一定倍率で増やすことができる。チャージの倍率は初期状態でも2.5倍と大きく、一部の装備品による追加効果などもあり、最初は10あるかないかというレベルの波動があっという間に数百、数千まで上がっていくのも独特の快感がある。

 チャージを駆使して波動を上げ、波動解放でダメージを与えていくのが基本だが、ここで駆け引きの要素となるが呪いコマンド。発動したターンは必ず先手となり、相手の波動解放を失敗させられる。波動解放後は成功・失敗に関わらず波動が初期値に戻ってしまう仕組みなので、チャージを繰り返して積み重ねてきた波動が無駄にならないよう、解放のタイミングが重要となるわけだ。

 シンプルな3つのコマンドによる戦術性、というといわゆる“3すくみ”が定番だが、本作の場合は“呪いは波動解放に強い”という関係はあるものの全般的には3すくみというわけではない。ポイントは“呪いは連続で発動できない”ことで、これが独特の戦術要素となっている。敵が呪いを発動してきたら、次のターンに波動解放を妨害されることはないというわけだ。これはもちろん逆も同じで、呪いを無駄遣いするといざという時に敵の攻撃を防げなくなる。

さまざまな装備品によりアキラの能力をカスタマイズできる

 こうしたルールのもと、いかに自分の攻撃を妨害されず、敵の攻撃を妨害するか戦術を練るのがバトルの醍醐味。すべての敵はそれぞれのロジックで行動し、ランダム要素は一切ない。単純に行動がパターン化されている敵もいるが、なかにはこちらの状況に応じて動きを読むような行動をしてくる敵もいて、初見では意表を突かれる場面も。負けながら行動を把握し、リベンジしていくことになる。さまざまな効果を持つ装備品を状況に応じて付け替えていくのもポイントで、自分のHPを上げるか敵のチャージ倍率を下げるか……など、同じ敵に対しても色々な勝ち方を見出せるのが面白い。

 また、敵を倒すと戦闘内容に応じてS、S+、S++の3ランクで評価が行われる。S++勝利を目指すと敵によっては、その挙動を把握した上で詰め将棋やパズルのような行動最適化も必要となってくる。そのほか、アキラのコマンドとしては特殊な効果を持つ“必殺技”も用意されており、徐々に溜まっていく“必殺エネルギー”がフルになると使用可能。これを活用するのも戦闘勝利や高評価の鍵だ。

独特の不可思議な世界観も魅力。クリアランクやターン数削減など任意のチャレンジ要素も

 物語を進めると、もう一人の波動使いである謎の少女も登場。波動生物との戦いも激しさを増していく。元々は不真面目が祟って寂れたオヤシロに派遣されてきたアキラだが、物事に対して真摯な面も垣間見ることができ、そんな彼女が大きな困難へ立ち向かっていく展開も見どころだ。アキラを『お嬢』と呼んで世話を焼く波動生物“マヌ”との掛け合いも楽しく、戦いの日々を描きつつも物語は明るくポジティブな印象を受ける。

 ドットグラフィックで表現される可愛らしいキャラクターや個性的な波動生物、チップチューン風のBGMなどにより、独特の不可思議な世界観が演出されているのも魅力。戦闘時のBGMが戦況に応じてインタラクティブに変化するのも特徴で、慣れると曲の変化で戦況を感じ取れるようにもなってくる。マウス操作のインターフェイスはシンプルで明解、操作へのレスポンスなど手触りも心地いい。画面変遷のスムーズさも相まってプレイ感は軽妙だ。リトライも多くなりがちなゲームだが、それがストレスにならないよう配慮されているように感じられた。

 1vs1の読み合いバトルゲーという比較的カッチリとしたゲームデザインながら、負けても強くなることができリトライも容易と、間口の広い作りとなっている。一方でS++勝利の追求や経過ターン数の削減など極めがいのある要素もあり、プレイスタイルに応じた楽しみ方が可能だ。Web上でプレイできる体験版もあるので、興味のある方はまずは体験版からでも、この心地よさと戦術性に触れてみてほしい。

もう一人の波動使いとして、アキラの前に現れる謎の少女。ある使命を帯びているようだが……
珍妙だったり可愛らしかったりと独特の世界観を感じさせるデザインの波動生物達が、ドット絵のアニメーションで描かれる。画面下部に表示される波動生物の紹介コメントも楽しい
前向きで真摯なアキラと世話焼きのマヌによる、ワクワクする戦い描かれていく

ソフトウェア情報

「ShrineStory オヤシロ物語」
【著作権者】
coolstep 氏
【対応OS】
WindowsおよびmacOS
【ソフト種別】
ダウンロード販売 972円(税込み)、体験版あり
【バージョン】
1.1