石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
バンダイナムコ「BLUE PROTOCOL」ベンチマークを試す ~ゲーム系ベンチに久々の新鋭登場
2023年6月30日 00:00
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。
国産オンラインゲームのベンチマークに新顔が登場
筆者は遼誌PC WatchでゲーミングPCのレビューを執筆しており、PCの性能を測るためのベンチマークプログラムとして、3Dゲーム系のベンチマークも複数活用している。そこで常に悩むことが1つある。どのゲーム系ベンチマークプログラムを使うか、だ。
最近主に使用しているのは、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」の3つ。どれも国産タイトルで、かつベンチマークテストとして広く使われている。
ほかにも海外製のタイトルを含め、ゲーム系のベンチマークプログラムは色々ある。しかし日本でのプレイヤー数が少なかったり、他のレビュー記事などでの使用頻度が低いものだと、比較対象にならないため使いづらい。新しいものを入れたり古いものを減らしたりした結果、今はこの3つに落ち着いている。
ただ、いかんせんベースになるゲームがどれも古い。「PHANTASY STAR ONLINE 2」は10年以上前にスタートし、大規模アップデートと同時に「NEW GENESIS」と改題したのが2年前。「ファイナルファンタジーXIV」も10年前に始まり、「暁月のフィナーレ ベンチマーク」も2年前のもの。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」はゲームとベンチマークプログラムの双方が5年前だ。
どのテストも最近のゲーミングPCで動かすと、フルHD(1,920×1,080ドット)では十分に高いスコアが出る。最近はディスプレイが4K(3,840×2,160ドット)などの高解像度や、300Hzを超えるような高いリフレッシュレートのものが出てきており、その分だけPCのパワーを食うので、テストとして全く無駄というわけではないのだが。
なるべく新しいベンチマークプログラムに切り替えていきたいのだが、新たなゲーム系のベンチマークプログラムが出てこない。というか、国産のPCゲームでベンチマークプログラムを必要とするものがあまり出てこないというのが実情だ。また出てきたところで、多くのユーザーが利用してくれないのでは意味がない。ゲーム側の人気がないと困るのである。
このような現状において、彗星のごとく現れたのが「BLUE PROTOCOL(ブループロトコル)」のベンチマークプログラムだ。
「テイルズ オブ」シリーズなどバンダイナムコのベテランスタッフも参加
「BLUE PROTOCOL」は、株式会社バンダイナムコオンラインと株式会社バンダイナムコスタジオによる共同プロジェクトチームが手掛けた、新規IPによるオンラインアクションRPG。
基本的には多数のプレイヤーが世界を共有するMMOなのだが、フィールドやミッションなどでは状況に応じて人数が制限される。MMOとMOの間を柔軟にスケーリングする、とでもいうべき構造だ。
このスマホゲーム全盛期において、強力なIPを多数保有しているバンダイナムコが、新規IPでPC向けのオンラインRPGを作ろうというのは、およそ狂気の沙汰と言っていい。艱難辛苦を乗り越えて(きたのだろう、おそらく)サービス開始にこぎつけただけでも、大いに評価せねばならない。
とはいえ本作は全く無名の状態で始まっているわけではなく、オンラインゲーム専業のバンダイナムコオンラインと、家庭用・アーケードなど幅広くゲームを開発するバンダイナムコスタジオから、経験豊富なスタッフが集まっている。例えば本作はセルシェーディングによるアニメ調のグラフィックスが特徴的だが、ビジュアル制作には同社のRPG「テイルズ オブ」シリーズを手掛けたスタッフも参加している。
ゲームとしてもアクション性が高く、キャラクターがカットインする演出などもある。全体としてバンダイナムコらしい、また日本製らしいゲームに仕上がっている。
そしてゲームのクライアントおよびプレイ料金は基本無料。遊んでみたいと思ったら、いつでもプレイ可能だ。動作するPCさえあれば……。
美しいアニメ調グラフィックスを見るだけでも意義あり
ということで今日の本題。「BLUE PROTOCOL」ベンチマークを試してみよう。内容はゲームの映像を様々なカメラワークで見せてくれるというもの。ゲームのプレイイメージというよりはプロモーションムービーに近い印象で、既存のゲーム系ベンチマークプログラムと同様の方向性だ。
本作は「Unreal Engine 4」で開発されており、アニメ調の美しいビジュアルはベンチマークでも十分に堪能できる。ベンチマークなので本作をちゃんと遊べるかどうかを確かめるためのものではあるが、「現在のPCゲームではこんなビジュアル表現も可能になった」というのを知る意味でも一見の価値がある。
筆者のPCでも実際に試してみたところ、CPUがCore i5-13600K、GPUがGeForce RTX 4080というデスクトップPCでは、グラフィック設定のプリセット画質を最高画質にして、解像度を4Kにしても最高評価の「極めて快適」となった。マシンパワーの高さもあるとはいえ、描画の美しさだけでなく軽快さも考慮して開発されているのがわかる。
またCPUがCore i7-10510U、外部GPUは非搭載のノートPCで試したところ、最高画質のフルHDでは秒間3コマ程度のコマ送り状態。画質設定を最低となる低画質まで落とすと秒間10コマ程度まで上がり、いちおうアニメっぽく見られるようになったが、評価は最低の「動作困難」だった。やはりゲームプレイにはそれなりのグラフィックス性能を持つPCは要りそうだ。
「BLUE PROTOCOL」の動作環境は、低画質設定での必要動作環境として、GPUはGeforce GTX 660またはAMD Radeon R7 370。最高画質設定での推奨動作環境は、GPUがGeforce RTX 2070 SuperまたはAMD Radeon RX 5700XTとなっている。3年前のミドルクラスのゲーミングPC程度のスペックで、最新のゲーミングPCならエントリークラスでも足りそうだ。やはり最新PCゲームにしてはかなり軽快に作られている。
ゲーミングPCの性能を測るベンチマークプログラムとしては、最高画質に設定してもなお若干軽すぎる印象もある。ゲームにとってはグラフィックスの質が高い証拠だが、ベンチマークプログラムとしては物足りなさもある。またベンチマーク結果の詳細が英語で書かれているのも惜しい。グローバル展開を意識しているのはわかるが、このくらいは言語設定で対応しておいて欲しい。
国産ゲームのベンチマークプログラムは他にもあるが……
余談だが、PCゲームに詳しい方だと「国産ゲームのベンチマークなら『ストリートファイター』があるだろう!」とおっしゃるだろう。「STREET FIGHTER V ベンチマーク」は3年前に登場しているのだが、格闘ゲームだけにかなり軽量で、エントリークラスのゲーミングPCでも簡単に最高評価が出てしまうため、筆者は採用していなかった。
しかし最近になって次回作「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」が登場している。こちらも傾向としては変わらないと思うが、要求するマシンパワーはいくぶん上がっているはずなので、後日改めて紹介および検証をしていきたい。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:n