石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
Switchで突如話題の「スイカゲーム」をPCで遊びたいが、どうも怪しい
2023年10月6日 11:00
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。
2年前に登場したパズルゲームがダウンロードランキング1位に
先日から「スイカゲーム」というパズルゲームがにわかに人気を集めている。Nintendo Switch向けの作品で、発売は2021年12月と2年近くも前なのだが、9月にはSwitchのダウンロードソフトランキングで1位を獲得。本稿執筆時点の10月2日にもまだ1位のままだ。
いったいこのゲームは何なのか、どこが面白いのか、そしてPCでも遊べるのか、解説していく。
単純なのによくできたパズルゲーム
「スイカゲーム」はSwitch向けに2021年に発売されているが、ゲームとしてはもっと前から存在する。元々はpopIn株式会社が、シーリングライト一体型プロジェクター「popIn Aladdin」で遊べるアプリとして2021年4月に提供したものだそうだ。
これを単体ゲームとしてpopInがSwitch向けに発売したのが、今ブームとなっている作品だ。当時はpopInからニュースリリースも出されている。
ゲーム内容はいわゆる落ちものパズルの一種で、画面上からフルーツを落とす。同じフルーツを2つぶつけると合体し、一回り大きな別のフルーツへと変化する。これを繰り返して最大のフルーツであるスイカを作るのが目標となる。うまく合体できず、画面上部までフルーツが積み上がるとゲームオーバー。
ルールはシンプル過ぎるほどわかりやすいが、フルーツの挙動が物理演算されているのがポイント。落としたフルーツは他のフルーツとぶつかり、跳ねて転がる。思ったところに落ちてくれないし、フルーツが合体した時の勢いで思わぬところに飛んで行ったりもする。
一般的な落ちものパズルと言えば、ブロック単位など操作範囲が決まっていて、そこに綺麗に並べたり重ねたりしていく。しかし本作は物理演算を使うことで、好きなところからフルーツを落とせる。1ドット単位の微調整によって、フルーツが転がっていく場所が変わってしまう。
それでいて、合体したフルーツがさらに1つ上のフルーツと接触して合体するという、連鎖を狙った組み立ても可能。誰でも理解できる簡単なルールに、動きが直感的にわかるが思い通りにいかない物理演算、そしてパズルゲームとしての戦略性もあるという、実によくできたパズルゲームである。
本作が流行した理由は定かではないが、最近になってYouTubeなどのゲーム配信でさかんに採り上げられたことが話題の中心ではないかと思われる。かく言う筆者も、息子が見ていた壱百満天原サロメ嬢(VTuber)のゲーム配信で本作を知った。
さらに本作の価格が240円と安価なことで、配信者だけでなく一般ユーザーも手が出しやすいことから、ランキング1位獲得につながったのではないかと思う。
「スイカゲーム」をPCで遊びたい
さて、ここからがある意味本題。本連載はPCゲームの話題を扱っており、筆者もどうせ遊ぶならPCで遊びたいので、PCで遊ぶ方法がないかを調べてみた。
すると出るわ出るわ。「スイカゲーム」という名前が付いたものもあれば、別の名前で見た目は違うがゲーム内容は同じというものがわんさか見つかる。ゲーム自体がわかりやすいルールなので、ゲーム開発の習作にでもされたかのように、模倣作品がとても多い。
筆者は長年ゲームメディアで働いてきた職業柄、権利関係には敏感だ。「popIn Aladdin」は2022年にAladdin X株式会社に事業譲渡されており、「スイカゲーム」の権利を持っているのはpopInかAladdin Xのどちらかということになる。
記事で紹介する以上は、コピー作品を紹介するわけにはいかない。権利関係の問題がない形で提供されているものがないかを探してみたところ、「スイカゲーム」のタイトルそのままのドメインを取ってWebブラウザーで遊べるものを提供しているWebサイトがあった。
これについてWHOIS検索でドメイン所有者を調べたが、隠されており判明せず。本来の著作権者であれば隠す必要はなく、むしろ自社サイトや商品への誘導があってしかるべきなので、これはコピー作品であろうと判断した。
この時点で、おそらく正規品のプレイ環境はなさそうだなと思っていたところ、Aladdin XのX(ややこしいが旧Twitter)で言及があった。
【注意喚起】
— Aladdin X(アラジン エックス) (@aladdinx_jp)October 2, 2023
弊社開発ソフト「スイカゲーム」に酷似したスマートフォン向けアプリについて
平素より弊社製品をご利用いただき、誠にありがとうございます。この度、弊社が運営するNintendo…
これによると、「スイカゲーム」の開発・運営はAladdin Xが行っており、スマートフォン向けのアプリは提供していないという。PC版やWebブラウザー版に関しての言及はないが、Switch版以外はコピー品と考えてよさそうだ。
ちなみに「スイカゲーム」自体、中国で流行した「合成大西瓜」というほぼ同じ内容のゲームが先に存在する。ゲームシステムの模倣は本作に限らず無数にあり、表向きの画像や音声の素材を変えれば立派に別ゲーム扱いというのもよく見る。先のAladdin Xの注意喚起のツイートにしても、ゲームの類似性ではなく、製品画像や説明文の流用を問題視している。
そもそも、ゲームシステムに著作権が認められるのかどうかは、過去にいくつも裁判が起こされるほど曖昧で難しい問題だ。Aladdin XおよびpopInが「合成大西瓜」のゲームの権利を受けている可能性もなくはないが、そこは確かめられていない。筆者としては、「スイカゲーム」は任天堂が配信を許可しているので、任天堂を信じて権利問題はないと考えている。
遊びたいならSwitchか「Aladdin X」で
ということで「スイカゲーム」を堂々と遊びたいなら、Switch版を買うか、「Aladdin X」シリーズのプロジェクターを買うかということになる。
「popIn Aladdin」は事業譲渡の後に「Aladdin X」シリーズとなり、現在は最新型の「Aladdin X2 Plus」が発売されている。家庭にある引掛シーリングに工事不要で取り付けられ、電源供給も引掛シーリングから取るので配線不要。各種ネット配信サービスに加えて地デジやラジオ(radiko)の視聴も可能だ。
これでお値段は129,800円。大型テレビを買うつもりで考えればかなりお安いし、場所も取らない。そして「スイカゲーム」も遊べるはず。これは結構いいのでは、と当初と違う方に興味が向いてしまった。もしかして、これが「スイカゲーム」の提供の狙いなのでは?
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/