石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
発売後は3割も値上げ? 「Cities: Skylines II」で異例の円安対応
2023年10月13日 11:00
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。
発売後の値上げを告知
都市開発シミュレーター「Cities: Skylines II」の発売が10月25日に迫っている。前作から様々なシステムが改良されるとともに、格段にグラフィックスの質が向上し、見た目にも美しい街を作れるのがとても楽しみだ。
ビデオカードの推奨環境は最近変更され、GeForce RTX 3080(10GB)となった。以前はGeForce RTX 2080 Ti(11GB)とされており、GPU性能はより高くなるが、ビデオメモリはやや少なくてよいという感じだろうか。いずれにせよ高性能なGPUかつ10GB以上の大容量ビデオメモリを要求されるのは間違いない。
筆者としては、GeForce RTX 4070(12GB)辺りがコストパフォーマンス的に狙い目かなと思う。これでも9万円ほどするので、存分に楽しみたい方は早めに準備を進めて欲しい。十分な環境が整えられれば、下のような映像でゲームを楽しめるそうだ。
早めの準備といえば、先日、「Cities: Skylines II」が発売後に値上げされるというニュースが入ってきた。現在は通常版が5,390円で予約販売されているが、発売後には最大3割値上げされるという。どういうことなのか詳しく見ていこう。
円安を受けて3割値上げ。アルゼンチンでは170%の値上げも
情報の出どころは、本作の開発元であるParadox Interactiveの公式フォーラムに投稿されたもの。要点をまとめていく。
日本円で最大30%の値上げ
最終的にいくらに設定されるかはまだ不明だが、5,390円の3割増しなら7,007円となり、約1,600円の値上げとなる。
発売日までは値上げしない
現時点では予約開始時の5,390円で据え置かれており、発売前の予約購入であればそのままの価格で購入できる。
SteamおよびEpic Games Storeでのみ値上げ
その他のプラットフォームには影響しないとしている。おそらくPlayStation 5とXbox Series X|Sを指したものだろう。ただしこれらのプラットフォームでは、発売自体が2024年に延期されると発表されている。つまりPC版のみが先行する形だ。
Mayors! We’re hard at work getting the game ready for release. We've come to realize that we need more time to reach the quality targets we've set for Console. We want to provide the best experience for our players, we’re updating the release window for Xbox & PS5 to Spring 2024.pic.twitter.com/eljCTi0deF
— Cities: Skylines (@CitiesSkylines)September 28, 2023
値上げの理由は為替相場に合わせるため
日本円以外でも値上げが予定されており、アルゼンチンペソは最大170%の値上げを告知している。ロシアルーブルやブラジルレアル、トルコリラなども最大30~60%値上げされるほか、多数の通貨で少々の値上げがあるとされている。合わせてアメリカドル、イギリスポンド、ユーロに変更はないことも明言されている。
3割値上げしても、まだドルで買うより安い
発売前に値上げを告知ということ自体が珍しく、もしかするとユーザーからの反感を買うかもしれない。しかし実際の価格設定を見れば納得せざるを得ない。
世界の中心的通貨であるアメリカドルでは、本作は49.99ドルで販売される。本稿執筆時点での為替相場は1ドル約149円なので、単純計算で約7,449円に相当する。つまり日本円価格が最大幅の3割値上げしたとて、まだドル換算より400円以上安い。メーカーとしては、円で売れてもドルより儲からないわけで、この差は是正せざるを得ない。
為替相場の変動による地域ごとの価格差は、Steamではたびたび問題視されている。最近だとアルゼンチンペソが前年比100%を超えるインフレになっており、Steamでアルゼンチンのアカウントを作成してゲームを購入すると安上がりになる、という事態が起きている。あまりに為替相場の変動が大きな地域に対しては、開発者が自ら該当地域の価格を調整する必要がある。今回もその流れでの値上げとなる。
為替相場による影響は、別にSteamに限ったことではない。Nintendo Switchのオンラインストアでも同様の問題が起きているし、AppleのApp StoreやGoogleのGoogle Play ストアでも、為替相場の変動を受けて価格が調整される。あるゲームが昨日まで100円だったものが、今日は130円になっているということも、以前から当たり前に行われてきた。
今回の「Cities: Skylines II」における値上げ発表は、昨今の円安の状況を鑑みればやむを得ないことであると同時に、わざわざ発売日まで値上げを待ってくれるという優しい対応と言える。販売数の初速を重視したいというメーカー側の狙いもあるかもしれないが、ゲーマーにとってはありがたい救済措置だ。
値上げは海外発の全てのゲームに波及せざるを得ない状況
この話を受けてゲーマーが考慮すべきことは、値上げの流れは本作に留まらないということだ。Steamで欲しいゲームをウィッシュリストに入れ、セールが来るまで待っている人は多いと思う。しかしこれだけ円安が続き、なおも進む傾向が見られるとなると、そう悠長に待てないかもしれない。
簡単に言えば、既に発売されている海外のゲームが、日本円で値上げされる可能性がある。新たに発売されるゲームは、以前より高めの価格設定になるだろう。
仮に他のゲームも同じように3割値上げされるとしたら、以降はセールで3割を超えて値下げされない限り、従来の価格より安く購入できない。待てばいつかは安くなる、という常識はもう通じない。洋ゲーファンが、ゲームにも値上げの波がやってきたと実感する日は遠くないかもしれない。
だが円安は悪いことばかりではない。国内メーカーが作ったゲームの価格にはそれほど大きな影響はないだろうし、国内メーカーのゲームをグローバルで売る際には安価に設定でき、売れ行きに好影響を与えるだろう。日本のゲーム業界にとってはチャンスとも言える。日本の優秀なゲーム開発者や企業が海外企業に安く買い叩かれたりしない限りは、だが。
今回の本題である「Cities: Skylines II」の公式サイトでは、ゲームの紹介動画が順次公開されている。まだ本作を買うか迷っている方は、こちらをひととおりチェックしてみるといいだろう。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/