石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「マイクラ」がポップなFPSに変身! 無料DLC「ナーフの世界」が子供のFPS入門におすすめ

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

DLC「ナーフの世界」タイトル画面

「マイクラ」でFPS入門

 子供にPCゲームを遊ばせれば、いつかはたどり着くFPS(ファースト・パーソン・シューター。一人称視点で撃ち合うゲーム)の世界。他のプレイヤーと銃でバンバン撃ち合う暴力性や、ゾンビや血しぶきなどの残虐表現は、何歳になればOKとすべきなのか、多くの親が悩むところだろう。

 「スプラトゥーン」って本当にいいゲームだな……とPCにないゲームを羨む気持ちは横に置くとしても(これは厳密にはTPSだが)、FPSというゲームのスタイル自体を否定する必要はない。「マインクラフト」だって弓やクロスボウを持てば立派にFPSだ。

 その「マインクラフト」に、スポンジ弾を撃つアクショントイ「ナーフ(Nerf)」とコラボしたダウンロードコンテンツ(DLC)である「ナーフの世界(Nerf World)」が追加された。内容は、本編の「マインクラフト」とは全く違う、FPSそのもの。難易度的にも映像的にも安心できる、FPSの入門として素晴らしいゲームだ。

マインクラフト × ナーフの世界 DLC

デジタルトイの世界で戦う

「マインクラフト」のDLCとして無料配布されている「ナーフの世界」

 「ナーフの世界」はゲーム内でDLCを検索すれば見つかる。プレイに「マインクラフト」本体は必要だが、「ナーフの世界」は無料だ。内容は、フィールド内に現れる敵をナーフのスポンジ弾で倒していくというもの。

 実物のナーフでは「マインクラフト」関連の商品をいくつも出しており、今回のゲーム内に登場する銃も、実物の商品として発売されている。しかもそれぞれの商品の特徴をふまえており、例えばエンダードラゴンの銃なら、実物が4発連射できるように、ゲーム内では4発同時に発射する。

ナーフのエンダードラゴンブラスター。こちらは実物
ゲーム内でも同じ見た目の銃が用意されている

 ゲームをスタートすると、未来的な基地のような場所が現れる。ここでは戦場となるフィールドへ移動できるほか、操作方法を学べるチュートリアルエリアも用意されている。バトルで手に入れたお金で新たな銃も購入できる。

ゲーム開始地点となる基地のような場所
操作方法を学べるチュートリアルエリアも用意

 フィールドは全部で4種類あり、最初のフィールドとなるオーバーワールドを一定までクリアすると、次のネザーが開放される。その後はエンド、アリーナと順次開放されていく。

オーバーワールドのフィールド。色味が「マインクラフト」本編よりちょっと明るめ
こちらはネザー。マグマのように見えるのはスポンジらしく、歩いてノーダメージで渡れる

 操作は[W][A][S][D]キーで移動、マウスで視点移動というのは本編と同じ。ただしマウスボタンは右クリックでスポンジ弾を発射、左クリックでリロードとなっている。「ナーフの世界」に採掘や生産の要素はなく、アイテムは各種のナーフ銃のみ。

 フィールドに移動すると、ウェーブという単位で敵が出現し、全ての敵を倒したら次のウェーブに進む。敵にスポンジ弾を撃ってひたすら倒し、どんどん次のウェーブへと進むだけのシンプルなルールだ。

 敵はスケルトンやクリーパー、ガストやエンダードラゴンなど、本編に登場した様々なモンスター達。見た目は本編とほぼ同じだが、クリーパーが爆発しても地形が変わることはない。

クリーパーはもちろん近づくと爆発する
ガストは空から攻撃してくるので厄介

 ちょっと違うのはスポンジ弾の扱い。敵を倒すのに使うスポンジ弾は数に限りがあるのだが、撃った弾は消えずにフィールドに落ちる。それを拾えば弾が補充されるというのが面白い。ほかにも時々フィールドに発生するダーツパックというアイテムを手に入れると少し補充される。

敵を倒した後は落ちているスポンジ弾を拾うのがいい

 敵を倒すとお金が手に入る。フィールドからの退出はいつでも可能なので、ある程度お金が貯まったら新しい銃を買いに行くといい。価格が高めの銃は特殊効果が付いており、使い方次第でバトルがぐっと楽になる。ちなみに見た目が近接武器のものもあるが、全て銃であり、近接攻撃の要素はない。

高価な銃には特殊効果がある。こちらは回復効果が付いたハートスティーラー。剣の形をしているが、ナーフの銃だ
「マインクラフトダンジョンズ」でおなじみ、ハンマーのストームランダー。これも近接武器ではなく単発銃で、命中した場所の周囲にもダメージを与える

 そして最大4人までの協力プレイが可能。複数人でプレイしている場合、もし敵にやられたとしても、誰か1人でも生き残っていれば一定時間で復活できる。全員がやられたとしても、そのウェーブの最初からやり直すだけで、何度でも挑戦できる。

本編を一緒に遊ぶのと同じように「ナーフの世界」のワールドに参加すれば、最大4人同時プレイが可能

初心者でも気軽に遊べる貴重なFPS

 ウェーブを突破するだけのゲーム内容はわかりやすく、対戦ではなく協力プレイで、生存者がいれば復活が可能と、FPSに不慣れな人と遊ぶにはとても具合がいい。筆者も7歳の息子と妻の3人でプレイすることに。2人とも「マインクラフト」本編は筆者よりも遊んでいるくらいだが、FPSは未経験だ。

 操作方法は本編と同じで、射撃についてもマウスをクリックすれば理解できるので、筆者は何も説明しないうちに2人ともゲーム内容は把握できた。さらに3段階の難易度調整が可能で、最も簡単な初心者に設定しておくと、序盤は全くやられることもなくスムーズに進んでいく。

難易度を下げたオーバーワールドはかなり簡単。操作練習にちょうどいい

 ウェーブが先に進むと、強力な敵が現れたり、敵の数が増えたりして、難易度設定が低くてもかなり大変になっていく。それでも徐々に腕前が上がっていけば対応できるし、全滅したところでやり直しになるだけなので気楽だ。

敵はどんどん強力になり数も増えるが、誰か1人が生き残っていれば復活できる

 ナーフの銃は3つ持ち込めるので、性能が異なる銃を揃えておくと場面ごとに対応しやすくなる。敵が多ければ弾が複数出る銃で数を減らし、少なければ単発の銃で無駄弾がないよう節約、といった具合。

 息子は何の説明もしないでも楽しく遊んでいるので、指導は一切しないでおいた。しかし遊び始めて2日目には、ハートスティーラーという体力回復とノックバック効果のある銃を持ち、ジャンプ移動しながら撃つことで粘るという戦術を編み出していた。筆者もやってみたら、これが実に強い。なぜ息子に教わる側になっているのか。

単発で使いにくそうだと思ったハートスティーラーが、タフな相手と戦う際にはとても便利

 そもそも本作は本格的なFPSとは違い、エイム(照準のうまさ)が重視されない。というのも、ヘッドショットのような命中箇所によるダメージ上昇要素がないのに加え、スポンジ弾は弾道が見えるくらい遅く、なおかつ重力で落ちるため遠くまで飛ばない。最強とされるエンダードラゴンブラスターは4発出るものの集弾性が悪く、狙って撃っても普通に外れる。必然的に、敵と近い距離でバンバン撃つゲームになっている。

単発威力が高い弾を4発撃ちだすエンダードラゴンブラスターだが、この集弾性の悪さには閉口する

 これら全てがFPSの入門としてとてもバランスがいい。FPSとしての奥深さややり込み要素は全然ないが、それがかえって小学生くらいの子供が遊ぶ分には具合がいい。みんなが集まって遊ぶパーティゲームとしても十分成立する。

 単体ゲームとして考えると弱い部分も多いが、「マインクラフト」を買ったらついてくるオマケのゲームと思えば、かなりお得な内容だ。大人も子供も、「マインクラフト」が好きなら気軽に楽しんでもらいたい。息子もこれで慣れれば、次はもう少し本格的なFPSも遊べるかも。いや対戦になるとやっぱり負けが込んで、メンタルが耐えられないかな……。

本編では倒すのが難しいエンダードラゴンも、「ナーフの世界」なら何とかなるかも
【今回使用したPC】
マウスコンピューターG-Tune E4
スペックはCPUがCore i7-12650H、GPUがGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)、メモリが16GB DDR4-3200、ストレージがSSD 500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)、ディスプレイが14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)、OSがWindows 11 Home。重量は約1.8kgで、価格は199,800円

 今回のプレイには、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。元々が「マインクラフト」なので動作は軽く、本機でも快適にプレイできた。ただしフレームレート上限が設定されているようで、より高性能なデスクトップPCを使った場合も含め、フレームレートは30fps程度で頭打ちになった。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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