石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
大人でも難しく、子供にもやさしい? ふにゃふにゃ主人公の3Dアクションパズル「Human: Fall Flat」
物理演算を使った何でもありの謎解きはお値段以上の楽しさ
2023年11月17日 11:00
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。
長年人気の子供向けPCゲームといえばこれ
本連載では月1回は子供向けのPCゲームを紹介することにしているのだが、小さい子供が遊べるPCゲームはかなり少ない。難易度が高い、漢字や英語が読めない、残虐表現などで倫理的に見せられないなど、思ったよりハードルが高いのだ。
そんな中において、子供向けとしながらも非常に根強い人気を誇っているのが「Human: Fall Flat(ヒューマン フォール フラット)」だ。発売は2016年7月と古いのだが、我が家の7歳児と一緒に遊んでみると、なるほど人気の意味がよくわかった。
謎のふにゃふにゃ主人公
本作は3D空間でキャラクターを操作し、フィールドの仕掛けを突破しながら奥へと進んでいく、謎解きアクションゲーム。やることは単純だが、ゲーム内容は奇怪だ。
まずプレイヤーキャラクターは一応、二足歩行の人型なのだが、マシュマロのように真っ白で柔らかい。歩くのもヨロヨロしていて危なっかしく、この動きを見ているだけで夢に出てきそうな気味の悪さがある。今風に言えば「キモカワイイ」のだろうか? とにかく見た目と挙動にインパクトがある。
主人公は歩行の移動とジャンプに加え、左右の手で物を掴める。左右の手がゲームパッドのL/Rボタンに対応しており、押すと視点の方向に手を伸ばし、物に触れるとそれを掴む。そのまま体を動かして、物を動かしたりして仕掛けを突破していくという寸法だ。両手を上に伸ばしてジャンプすると、壁などの上を掴んで登ることもできる。
プレイヤーキャラクターができることはこれだけで、あとはフィールドにあるものを有効活用して進んでいくことになる。
物理演算による謎解きの緩さ
本作の面白さのポイントは、ゲームのあらゆる挙動に物理演算を用いているところだ。プレイヤーのふにゃふにゃした動きだけでなく、フィールド上にあるオブジェクトは全て物理演算によって挙動が計算されている。
例えば、とあるステージでは行く手を遮る大きな壁があり、その手前に巨大な投石器がある。近くに落ちている岩を持ち上げて投石器に載せ、投石器にあるレバーを引くと、岩が飛んで行って壁を破壊する。
そこからがれきを越えて進んでもいいが、今度は自分が投石器に乗って、自分でレバーを動かしてやれば、岩と同じように自分が吹っ飛んでいく。これで壁を超えてもOK。物理演算が許すことなら何をやっても構わない。
普通の謎解きゲームであれば、特定の手順を踏まないとクリアできないようになっているものだ。しかし本作はとにかくゴールにたどり着けさえすればよく、「こうしてクリアしろ」という決まり事はない。壁を壊すのに、手で持った岩を根気よく壁にぶつけ続けて少しずつ壊してもいいし、岩を足場にして壁を乗り越えても構わない。
物理演算ゆえに許される絶妙なルールの緩さに加え、主人公もまた緩い。たとえ投石器で投げられても、落ちた先で壁に潰されても、何のダメージもなく立ち上がる。ステージの外に落下すると、なぜかフィールドの上空に転送され、元のフィールドに落下して戻ってくる。
主人公にはダメージを受けるという概念はないし、敵が襲ってきてやられることもない。ステージ外に落下しても元の場所に落ちて戻ってくるだけ。時間制限もゲームオーバーもなく、じっくり時間をかけて謎解きに挑戦できる。
大人がやると歯ごたえがあり、子供とやるとほどよく緩い
肝心の謎解き要素は結構複雑なところも多く、大人がやっていてもすぐには突破方法が見つからない。しかしクリア方法は1つではないので、そこにあるものを駆使して何とか突破するアイデアをひねり出すことも可能だ。この自由度の高さは大人でも楽しい。
そして本作は画面分割による2人同時プレイも可能。いたずら大好きな7歳児は、謎解きを考えている筆者の横で勝手に装置を動かして遊んだり、謎解きの準備を進める筆者の体を掴んで引っ張ったりとやりたい放題だ。謎解きゲームだと理解はしているが、謎を解くつもりはないという風情である。
大型の装置を動かすのはやはり楽しいようで、筆者が動かし方を発見すると、「ぼくがやる!」としゃしゃり出て、うまくやってくれたり台無しにしたりしつつゲラゲラ笑っている。ふにゃふにゃした動きで無敵の主人公は、子供がやるには実に楽しい存在だ。
本作の謎解きを1人でやるのは大人でもなかなか難しいのだが、2人居るとちょっと協力するだけで突破できる所が多い。このくらいの歳だと、親とやればスムーズだし、同じ年頃の友達とやっても少しずつ進められるかなと思う。
そしてありがたいことに、本作をトータルで10時間近くプレイしても、まだまだ先のステージは山ほどありそうだ。7歳児がいつまで本作にはまってくれるかはわからないが、少なくともすぐにオールクリアしてコンテンツ不足を嘆くことはない。間違いなくお値段以上に遊べる良質のアクションパズルゲームになっている。
なお、今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。解像度はディスプレイと同じフルHDで、本作のグラフィックス設定を最高の「ウルトラ」にしても快適に動作した。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/