石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「子供にウケるゲーム」ならコレ!ひたすら高圧洗浄機を噴射する「パワーウォッシュ シミュレータ―」がスゴい8つの理由

夏にぴったりの水遊び! 大人は悟りの境地へ?

小さな子供にも安心の「パワーウォッシュ シミュレータ―」

「パワーウォッシュ シミュレータ―」のタイトル画面

 6歳の息子とPCゲームで遊ぼうと思っても、適した作品はなかなか見つからない。PCゲームは作品の多くが大人向けで、難易度が高かったり残虐表現が多かったり、漢字や英語が多かったりして難しい。

 そんな中にあって、息子にも安心して手渡せる作品として見つけたのが「パワーウォッシュ シミュレータ―(PowerWash Simulator)」だ。高圧洗浄機で汚れた物や家などを清掃するという内容で、誰もが第一印象で「それ、何が面白いの?」と感じるだろう。

 しかしこれが子供にぴったりの作品なのである。いったい何が面白くて、子供にも適しているのか、考察していく。

 今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。解像度はディスプレイと同じフルHDで、本作のグラフィックスを最高設定にしても、何ら問題なく快適に動作した。

 なお、マルチプレイでは人数分のPCが必要だ(今回は筆者のゲーミングPCとの2台体制)。

今回のプレイ環境
G-Tune E4
【G-Tune E4】
CPUCore i7-12650H(Pコア 4.7GHz×6+Eコア 3.5GHz×4/16スレッド)
GPUGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)
OSWindows 11 Home
本体サイズ約323.9×225×22mm
重量約1.8kg
価格199,800円

G-Tune E4の製品ページ

依頼に応じて物を綺麗にするゲーム

 まず「パワーウォッシュ シミュレータ―」の内容を紹介しておく。プレイヤーは高圧洗浄機を操る清掃屋になり、汚れた家や物などを綺麗にする依頼をこなしていく。

いろいろな場所や物を清掃する

 汚れは高圧洗浄機の水を当てて落とす。ノズルを交換して広い範囲に噴射したりもできるが、頑固な汚れは狭いノズルで集中して当てないとなかなか取れなかったりもする。

汚れを高圧洗浄機の水を当てて落とす

 依頼を受けた物を全て綺麗にするとクリアとなり、次の依頼に進める。依頼をこなすことで報酬が得られ、高性能な高圧洗浄機や新たなノズルなどを購入できる。

貯めたお金で新しいアイテムを購入できる

 以上でゲームの基本的な流れは説明できた。より詳しい情報は公式サイトへ……と言いたいところだが、公式サイトには通販番組で高圧洗浄機を売るノリの短い紹介映像しかない。とにかくやればわかる作品だということだ。

『パワーウォッシュ シミュレーター』通販番組トレーラー

子供にも安心のゲーム内容

 では本作がなぜ子供向けに適した作品なのか解説しよう。

目的がシンプル

 依頼されたものを綺麗にするだけのゲームなので、ただ汚れを見つけて、高圧洗浄機を噴射するだけでいい。最初にあれこれルールを覚える必要もなく、誰でもすぐ遊べる。

敵がいない

 清掃の邪魔をするキャラクターが出てきたりはしない。操作がおぼつかない子供がパニックに陥るようなことはなく、急かされることなくマイペースに遊べる。

いろんな依頼が来るが、敵キャラクターのようなものは出てこない

操作が簡単

 操作方法は一般的なFPSなどと同じで、[W][A][S][D]キーで移動、マウス操作で視点移動、クリックで高圧洗浄機を噴射する。ほかにもマウスホイールでノズルの付け替えなどもあるが、基本的には汚れに向けて高圧洗浄機を噴射しているだけで遊べる。

高圧洗浄機を噴射し放題

 ゲームファンには説明の必要もないが、何かを撃つのは楽しいものだ。高圧洗浄機を噴射する操作は、FPSで銃を撃つのと同じ。だから汚れを見つけて撃つだけで楽しい。他のプレイヤーに当たっても水の勢いにちょっと押されるだけで、水遊び感もある。

とりあえず高圧洗浄機をまき散らしていれば清掃になる

達成感がある

 洗浄する場所や物は、細かい部位に分けられている。例えば車なら、ドアやガラス、ミラー、ボディなどといった具合。1つの部位を綺麗にし終えると、その部位が光り、チーンと音がして知らせてくれる。途方もなく広い場所でも、少しずつ綺麗になる達成感を得ながら遊べる。

チーンという小気味よい音とともに清掃完了をお知らせ

完璧に汚れを落とさなくていい

 チリ1つ残さず完璧に清掃しろと言われたら気が滅入るが、本作では部位ごとに概ね汚れを落とせば清掃完了となり、その部位は完全に綺麗になったことになる。どうしても細部が雑になりがちな子供のプレイでも、何とか清掃を終えられるバランスになっている。

綺麗にするとお金がもらえる

 清掃屋が依頼を受けて清掃するので、綺麗にするごとに報酬としてお金がもらえる。手に入れたお金でより強力な高圧洗浄機を購入でき、清掃がより簡単になる。つまり貯めたお金で武器パワーアップできるわけで、これはプレイのモチベーションにもなる。ほかにも外見を変更できたりもして、欲しいものはなかなか尽きない。

掃除した場所に応じて報酬が得られる仕組み

気持ちいい!

 上記のような流れでゲームを進めていく仕掛けにも面白さはあるが、やはり根本的に、ドロドロに汚れたものが自分の手で綺麗になっていくのを見るのは気持ちがいい。子供にしても「ここはぼくがきれいにしたんだよ!」と自慢したくなるようだ(見に行ったら全然できていないことの方が多いのだが)。

息子が綺麗にしたというソファー付近で、汚れを光らせて見えやすくする[Tab]キーを押す。やっぱり汚れ残りだらけ

大人が遊ぶとまた違う趣が

 ここまで説明しても、ただ汚れを落とし続けるだけのゲームの何が面白いのか説明できた気がしない。しかし子供だけでなく、大人が遊んでもやっぱり面白い。ではいったい何が楽しいのだろうか。妻にもプレイしてもらったところ、見事に熱中しているので感想を聞いてみると、

  「無になれる」

 ただひたすら汚れを落としていくだけの作業が、いい感じに心を にしてくれる。現代社会における癒しなのだろうか、それとも禅に通じるものだろうか。筆者も妻の言わんとしていることはわかる。中毒性というにはポジティブな、心が洗われる何かを感じる。

ひたすら高圧洗浄機を当てているだけなのに、大人もちゃんと熱中できる

 なお本作をプレイしたからといって、子供が掃除好きになるわけではない。ややもすると、掃除をしたら小遣いを要求するようになるかもしれないし、本物の高圧洗浄機を欲しがるかもしれない。現実世界で子供の成長を期待するための教育ソフトにはならないと思う。

 こちらの尻に高圧洗浄機を当ててゲラゲラ笑っている息子に「ちゃんと掃除しろや! いつまで経っても終わんねーぞ!」と叱っても言うことを聞かなかったりするが、冷静に考えるとこれはゲームだし、現実に息子と掃除をしていても似たようなものだし、息子と一緒に楽しんでいる自分がここにいる。それでいい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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