石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

『それWeb広告で見た!』なゲームを集めた「あのゲー」、小学生には優良な教育ゲームだった

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

このゲームを作ったのは誰だあっ!

「どこかで見た“あのゲー“ムたちを棒人間で作ってみたけれど、果たしてあなたはクリアできるのか?」のタイトル画面

 「どこかで見た“あのゲー“ムたちを棒人間で作ってみたけれど、果たしてあなたはクリアできるのか?」という長い名前のゲームが先日発売された。内容をざっくり言うと、Web広告でよく目にする、何だか簡単そうなミニゲームっぽいものを複数収録した作品だ。

 具体的には、頭上の数字を比較して敵を倒していくゲームや、ステージに配置されたピンを抜いて敵を倒すゲーム、試験管に入れられたインクを同じ色で揃えていくゲームなど5種類。動画を見てもらえれば、ああこれかと理解していただけるはずだ。

好評配信中!Nintendo Switch/Steamソフト「どこかで見た“あのゲー“ムたちを棒人間で作ってみたけれど、果たしてあなたはクリアできるのか?」Steam版最新プロモーション

 Web広告で見るゲームは、実際にそのゲームをプレイすると全然内容が違うことがあり、問題になったこともある。本作はそれをあざ笑うかのように、広告のゲームを棒人間のキャラクターに変えた上、複数のゲームをまとめて商品化するという、究極のパクリゲーである。

 恥も外聞もなくこんなゲームを世に出してしまう制作者の激強メンタルが感じられ、筆者も「いったいどこの誰が作ったんだ?」と気になって調べたところ、発売元は株式会社ディースリー・パブリッシャーとあったので大いに納得した。同社はSIMPLEシリーズという廉価なゲームソフトを手掛けるほか、「地球防衛軍」など癖の強い世界観のゲームをリリースすることでも知られる。

 よく知らない海外メーカーが作ったものだと権利関係が大丈夫かどうかなど不安になる内容だが、ディースリー・パブリッシャーが出したものなら問題ないだろう。プレイヤーとしては純粋に楽しませていただこうと思う。

 本作はSteamとNintendo Switchで販売されており、価格は1,111円。価格設定まで遊んでいる。

 なお本作のプレイには、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。解像度はディスプレイと同じフルHD。本作は2Dベースの作品で動作も軽く、本機ではオーバースペックなほどで、快適にプレイできた。

G-Tune E4
G-Tune E4
【スペック】
CPUCore i7-12650H(Pコア 4.7GHz×6+Eコア 3.5GHz×4/16スレッド)
GPUGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)
メモリ16GB DDR4-3200(8GB×2)
SSD500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)
ディスプレイ14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)
OSWindows 11 Home
本体サイズ約323.9×225×22mm
重量約1.8kg
価格199,800円

G-Tune E4の製品ページ

5つのミニゲームはどれもシンプル

5つのミニゲームを好きに選んで遊べる

 改めて本作のゲーム内容を紹介すると、5つのミニゲームを集めたミニゲーム集となっている。ステージ数は全部で250。

 1つ目は「ピンぬき」。ステージ上にはプレイヤーの棒人間とモンスター、岩などの仕掛け、宝物などが落ちており、それらを仕切るように複数のピンがステージに刺さっている。プレイヤーはピンを抜いて、仕掛けを使ってモンスターを倒したり、棒人間を宝物の場所まで導いたりする。

 棒人間には戦闘力はなく、モンスターと接触するとやられる。ピンを抜く順番やタイミングを考えて、棒人間を生かしたままモンスターをうまく倒していく。

「ピンぬき」。抜く順番とタイミングが重要

 2つ目は「すうじタワー」。頭上に数字が表示された棒人間に向かい合う形でタワーがあり、部屋ごとにモンスターやアイテムが存在する。モンスターの頭上にも数字があり、自分より小さい数字のモンスターを選ぶと撃破でき、相手の数字の分だけ自分の数字が増える。自分の数字の方が少なければゲームオーバー。

 モンスターを倒せる順番を考えるのはただの足し算だが、アイテムには数字を数倍にしたり、逆に数分の1にしたりするものもある。どのタイミングでモンスターを倒し、アイテムを取るのかの順番をよく考えねばならない。

「すうじタワー」。計算力と先々の想像力が要る

 3つ目は、「カラーわけ」。試験管に入った色とりどりのインクを、複数ある試験管の中で移し替えていき、最終的に全ての色を1本1色ずつの状態に分離できたらクリア。

 移し替えは、同じ色のインク同士がくっつく形でのみ可能。順番を誤るとクリア不可能な状況に陥ることもある。

「カラーわけ」。本数が増えてくると手詰まりになることもある

 4つ目は「クルマだし」。駐車場に停められた多数の車を全て道路に出せばクリアなのだが、車同士がひっかかって外に出られない状態になっており、動かせる範囲で車を前後に移動させることで外への道を作って車を減らしていく。

 車は前進かバックのみで、ハンドル操作はできない。車を移動させる際に他の車にぶつけても構わない(少しだけ制限時間が減る)が、道路に出る際に歩行者と接触すると即ゲームオーバー。

「クルマだし」。少数のうちは簡単だが、数が増えると結構厄介

 5つ目は「マネーあつめ」。直線の道に落ちているお金を拾いつつ、三角コーンやトゲなどの仕掛けを突破してゴールを目指す。仕掛けを避ける方法は、拾ったお金を足場にして階段のように登っていくことだけ。

 うまくお金を拾いつつも、足場にするお金はなるべく少なくするというアクション性がある。また道中にはお金が確率で増減するカジノなどの仕掛けも。最終的になるべく多くのお金をゴールに持ち込むのが目的だ。

「マネーあつめ」。クリアするだけなら簡単だが、大金を持ち帰るのは大変

小学生用と考えると、教育的価値がぐっと高まる

 ゲーム内容を見て、多くのゲーマーは「どれも簡単そう」と思ったのではないだろうか。筆者もそう思ったし、実際にプレイしても印象はそう変わらない。特に序盤のステージはチュートリアルが延々続くのかと思うくらいに簡単だ。

 5つのゲームの中では、「ピンぬき」と「すうじタワー」は、後半のステージになると頭をひねって解くパズル要素が強まってくる。大人がやって面白いのはこの辺りかなと思う。

 そこで7歳の息子に遊ばせてみたところ、まず「マネーあつめ」を熱心にプレイした。お金を拾って足場を作るというルールは、単純ながらアクション性があり、ゴールするだけならそれほど難しくもないので、とっつきやすい内容だ。途中からは確率で所持金が増減するカジノなどの存在も理解し、全てのカジノで大当たりを出すゲーム(完全に運)になったりして、しばらく楽しんでいた。

本作中で最もアクション性が高い。男の子にはウケそう

 その次が「ピンぬき」。最初は適当に抜いていってもクリアできるとっつきやすさで、少しずつ頭を使う必要が出てくるというバランスが良かったのか、すぐ解けなくても「こうか? いやこっちから?」と悩みながらプレイしていた。難しいのはすぐに投げ出すかなと思ったが、しばらくプレイしてもそんな様子は見られない。

大人が見ても案外すぐにはわからない問題も多い

 親目線だと「すうじタワー」も面白そうなのだが、3桁の計算や掛け算、割り算を駆使して順番を考えるというプロセスは、まだ7歳には難しかった模様。小学校の高学年くらいで遊べば、パズル的に楽しみながらも計算力が身につきそうだなと思う。

高学年になれば計算力を養うのに良さそう

 「カラーわけ」や「クルマだし」は難しくはないが、順番を変えるプロセスに想像力が要るので、子供の好みに合うなら良さそうだ。いずれのゲームも、大人目線だとそんなに難しくはないが、子供目線だとそれなりに歯ごたえがあり、また思考力も養われそうな印象がある。

 最初に「究極のパクリゲー」などと酷いことを言ってしまったが、広告で多くの人の目を引く存在であったのも確かで、ゲームとして印象的で魅力的なものだ。特に小学生くらいの子供には、知育・教育的にもかなり有意義なのではないかと思う。適当に流行りのゲームを買い与えるくらいなら、本作を渡してみては?

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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