石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「フォールガイズ知らないの?」と小学生に言われる前に。無料化で5,000万人がプレイ

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「Fall Guys」が小学生に大ヒットの予感

「Fall Guys」のタイトル画面

 6月21日に無料化が発表された「Fall Guys(フォールガイズ)」が、2週間でプレイヤー数が5,000万人に達したと発表した。全世界での数とはいえ、2週間で5,000万人というのはゲーム業界において傑出した数字だ。



 本作は2020年に有料のソフトとして販売され、それからの約2年間もかなりの人気を誇る作品だったが、無料化移行後は桁違いの盛り上がりを見せている。

 プラットフォームはPCのほか、Nintendo Switch、PlayStation、Xboxと主要なコンシューマーゲーム機をカバーしており、そのいずれでも無料。しかもNintendo Switch Onlineなどの各種オンラインサービスの契約すら不要で、ハードさえあれば誰でも無料でプレイできる。

 加えて、無料化のタイミングと同時に全てのプラットフォームでクロスプレイに対応。つまり相手がどのプラットフォームで遊んでいるかを意識することなく、一緒に遊べるということだ。「うちはPCで遊ぶけど、友達はSwitchしか持っていない」ということがあっても問題ない。

 無料でオンライン対応というと、おいそれと新しいゲームを買えない小学生は喜んでプレイするはず。同じような理由で大ヒットした「Fortnite(フォートナイト)」に続き、子供達にとって“やっていて当たり前”のゲームになりそうな気配がある。いや、既に大人気になっているのが私の耳に入らないだけかもしれない。

 となれば、親戚や近所の子らから「フォールガイズ知らないの?」と言われる日も、そう遠くないかもしれない。子供達の会話に相槌を打てる程度には、本作を知っておいてもよかろうと思う。

最大60人で1位を目指すパーティゲーム

プルンプルンした生き物がプレイヤーキャラクター

 本作はイギリスのMediatonicが開発したパーティゲーム。オンラインで10~60人の同時プレイが可能だ。

 PC版は無料化のタイミングで、Steamでの新規提供が終了。現在はEpic Games Storeから提供されている。ちなみに「Fortnite」もEpic Games Storeで配信されており、その点でも本作は子供達の目を引く可能性が高い。

 ゲーム内容は、最大60人のプレイヤーが一斉にゲームに参加し、ステージごとにランダムに選ばれたルールのもと競い合う。ルールは早くゴールにたどり着くとか、ステージから落下しないとかいう簡単なものだ。

 例えばゴールを目指すステージだと、一定の人数がゴールに到達するとステージ終了となり、ゴールできなかったプレイヤーはゲームから脱落。ゴールできたプレイヤーは次のステージへと進む。これを繰り返して人数を減らしていき、最終ステージで1位を目指すという内容だ。

ステージ開始時にルール説明が出る
ルールに沿ってひたすらがんばる
ステージが終了すると、脱落者がはじき出される

 操作は移動のほか、ジャンプ、前方に飛び込むダイブ、ステージのギミックや他のプレイヤーへの掴みが使える。他のプレイヤーに直接攻撃はできないが、体を当てて邪魔したり、掴んで動きを制限したりはできる。

 あとはステージのギミックやルールに合わせて、ひたすら生き残りをかけて競うだけ。アクションゲームなので適切な操作は求められるが、ルールによって効率のいいコース選びや、他のプレイヤーの動きを見て出し抜く判断、記憶力が求められるものなど様々ある。

他のプレイヤーと押し合いへし合い
記憶力が試されるルールもある

 ルールの数はかなり多いが、練習していればいずれコツを掴んでうまく立ち回れるようになるだろう。相手は59人(自分を入れて60人)もいるので、1位になるのは相当難しいものの、そう簡単に最下位になることもない。バトルロイヤル的な感覚も「Fortnite」と似たところがあり、ゲームが得意でない人にも受け入れられやすそうに思う。

これだけ多くのプレイヤーがいれば、そうそう最下位にはならない

 ゲームプレイを重ねることで各種ポイントが貯まり、外見やエモートアクションをカスタマイズできるアイテムと交換できる。また有料のポイントを使用して購入できるものもある。いずれもゲームで有利になるようなアイテムはなく、あくまで外見の変化を楽しむだけのものだ。

プレイして貯めたポイントで外見などをカスタマイズできる

若年層にヒットする理由が多数

 本作はシンプルな操作とルールで、とっつきやすさが抜群にいい。あらかじめルールを読んで理解できればゲームになるので、小学生であればまず普通に遊べるはずだ。

 途中のステージで脱落しても、他のプレイヤーの視点でゲームを最後まで眺め続けられる。すぐ別のゲームに参加したいなら即時離脱も可能だ。1ステージにかかる時間も長くて数分程度で、ゲームが素早く進行していくのもいい。

脱落したらすぐゲームを出られる。次のゲームにもすぐ参加できる

 ゲームのルールをプレイヤーが選ぶ「カスタムショー」も用意されている。こちらは10人以上でプレイでき、5文字のコードを他のプレイヤーに入力してもらうことで参加できる。

 ゲームのルールは誰が見てもわかりやすいので、YouTubeなど動画配信にも向いている。ライブ放送でカスタムショーを開いてファンと交流する、なんていう使い方もできるだろう。これも動画視聴の頻度が高い若年層にヒットする要因になりそうだ。

オリジナルのゲームを作成して、他のプレイヤーを招待できる

 ゲームとしてはトップ1人を選び出すシビアな対戦ゲームなので、eスポーツ的な活用も考えられる。卓越したプレイヤー同士が対戦すれば、意外なテクニックや駆け引きで観客も盛り上がるだろう。ルールは一目見ればわかるので、本作の未経験者でも楽しめるという点はeスポーツとしても評価できる。

 本作を総評すると、ゲームの間口は無料化とクロスプレイで非常に広く、子供でも理解しやすい簡単な内容でありながら、プレイヤー間の腕の差は確実に出るという奥深さもある。ベテランゲーマーが夜な夜な夢中でプレイするようなゲームかと言われれば、少々ライトすぎるようには思うが、友達と遊ぶパーティゲームとしては十分すぎる出来の良さだ。

 銃で敵を撃ち倒す「Fortnite」を子供に遊ばせるのは教育的にいかがなものかという批判もあるが、本作はそういった心配もない。もっとも世の親御さんにすれば、より大きな問題はゲーム内容が子供に与える影響ではなく、子供がゲームを止めないことの方だと思うが。本作のクロスプレイを使って親子で遊ぶなどして、幸せなゲームライフを送っていただきたい。

特別ルールのゲームもある。こちらはキャンディを守る側と奪う側に分かれるチーム戦

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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