石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

クリッカーゲームだと思ったのに連打禁止? 文明進化シミュレーション「Microcivilization」

多彩な戦略要素と、街が滅亡しても大丈夫な緩さが共存する絶妙なバランス

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「Microcivilization」のタイトル画像

まったり遊べるクリッカーゲームを求めて

 筆者は神経をすり減らす対戦アクションゲームの愛好家だが、アクション性皆無の緩いゲームも好きだ。「酒の肴にPCゲーム」という連載名も、「酒を飲みながら緩く遊べるゲーム」という気持ちを込めている。対戦ゲームでチーム全員が飲みながらボイチャで遊ぶのもそれはそれで楽しいが、また別の話として。

 緩いゲームの中でも、「クッキークリッカー」を代表とするクリッカーゲームはお気に入り。ただクッキーを増やすためにクリックし、何もしなくても構わないという、頭の使わなさがいい。

 今回紹介する「Microcivilization(マイクロシヴィライゼーション)」もクリッカーゲームの1つ。ただ本作はクリックしていればいいだけのゲームではなく、様々な要素を組み合わせ、クリックを戦略の1つとして取り入れている。あまり気楽にやると破滅もありえるが、それはそれで許容するという、キツさと緩さのバランスが絶妙な作品だ。

 なお本作は11月13日より早期アクセスが開始されたばかりで、今後8~14カ月かけてフルバージョンを開発するとしている。28日まではリリース記念セールで10%OFFの1,800円で購入できる。

大きな街を作って文明を進化させていくが……

麦のアイコンをクリックして食料を作ると、人が住み始める

 本作は文明を進化させていくというゲーム。麦のアイコンをクリックすると食料が生産され、食料を作れば人口が増えていく。この辺りは何でもないクリッカーゲームだ。

 まず最初にすべきことは「Research(研究)」だ。市民に新たな知恵を授けるべく、研究をさせて新たな能力や施設を獲得する。最初の研究はわらぶきの家で、市民が住む家を作れるようになる。

 研究内容はツリー状に連なっており、その後も新たな研究を1つずつ選んで進めていく。研究時間は人口が増えるほど少なく済むので、人口を増やしながら新たな研究に励んでいくことになる。

研究で作れる施設や能力を増やしていく
家を研究し終えたら、木のアイコンをクリックして市民のための家を作る

 ここまではただ時間をかければ進められるのだが、本作はここからが本番。

 まず人口が増えるほど、食料の消費量が増えていく。食料がなくなると市民が死んでしまう。また家が足りなくなると浮浪者が増え、暴動を起こすことがある。逆に家が多すぎると空き家が増え、治安が悪化して暴動が起きる。

食料が足りないと、市民が少しずつ死んでいく
家が足りないと市民は浮浪者になり、暴動が発生することがある

 そんな時はクリックで食料や素材を補充するのだが、あまりクリックしすぎるとアイコンの周囲が燃え始め、災害が発生しやすくなる。さらにクリックを続けると、しばらくクリック禁止のペナルティを受けてしまう。実質的にクリック制限があるという、クリッカーゲームの根幹を揺るがす仕組みである。

 しばらくクリックを控えると、クリック数のカウントは下がっていく。ただ基本的には、クリックに頼らない形でのリソース管理が重要になる。人口は食料が許す範囲で増やし、家も必要な数だけ作るのが重要だ。

クリックしすぎるとアイコンの周囲が燃え始め、災害が起こりやすくなる
それでもクリックを止めないと、一定時間クリックできなくなる

イベント攻略が本作の鍵

 暴動や災害といったイベントが起きた場合、市民が力を合わせて戦うことになる。イベントが発生すると、画面中央にグラフが表示される。画面右下には握りこぶしのマークがあるので、これをクリックするとゲージを減らせる。こぶしのマークは一定時間経つとまたクリックできるようになるので、これを繰り返してゲージを全て減らせば勝利となり、イベントが終了する。

 ただしゲージを減らしきるのが遅れると、街が破壊されたり市民がやられたりといった被害が出る。なるべく早くゲージを削って脅威を取り除かねばならない。

グラフが表示されたら、市民がゲージを削りきるまで戦う

 イベントに対応するには、研究を進めて強力な兵士や防衛施設を生産できるようにしておくこと。生産するとこぶしマークの横に別のアイコンが現れ、イベントが発生した際にクリックすると大ダメージを与えられる。防衛施設は街の被害を一部止められる。こぶし以外は1回使用すると消費されるので、イベント中にも新たに生産して対応していく。

 本作のイベントは暴動や災害、襲撃など様々あるが、対処方法はいずれも同じ。強力な兵士を前もって用意しておき、イベントが発生したら速やかに出撃させて対処していく。また一部の施設では兵士の攻撃力を一時的に高める効果を発生させるものもあり、うまく組み合わせて効率よく対処していくのが重要だ。

研究を進めると、より強力な兵士を使えるようになる
兵士の攻撃力は一般市民より高いが、1回しか攻撃できないので再生産が必要

 研究と施設の建設以外にも、街の外に市民を出して探索させるという要素もある。行き先によって発生するイベントが異なり、蛮族やマンモスと戦ったり、アイテムを見つけたりしてくる。達成すれば報酬が得られる。

 難易度は場所によって異なり、同じ場所を繰り返し探索するほど難易度が高くなっていく。それでも何度も探索を進めると、その場所を占拠し、探索の達成報酬とは別の特別な報酬を得られる。

街の外へ探索に出す
発生したイベントをクリアすると報酬が得られる

 報酬では時折、「Hero(英雄)」を発見できる。英雄は市民を率いる存在で、市民の攻撃力を上げたり、資源採集効率を上げたりしてくれる。英雄ごとに能力が異なり、パネルで装備すると力を発揮する。新たな英雄を手に入れたら能力を比較して、より自分に合う英雄を選択していく。

手に入れた英雄を装備すると様々な能力を発揮する

転生して最初からを繰り返し、さらなる文明開花を目指す

 これでもまだ本作のシステムの細かい部分は語りきっておらず、思った以上に要素が多い。街づくりに慣れないうちは、イベントで全ての市民がやられて建物が焼失し、街を丸ごと失うこともあるだろう。

 その場合はゲームオーバーになるわけではなく、食料を作って人を増やし、再び街を作っていけばいいだけ。それまでの研究も残っているので、元通りの街に作り直すのは難しくない。街が消滅するというシリアスな展開の割には、ゲーム的にはさほど痛くないというのが本作の絶妙な緩さだ。

クリックのし過ぎで災害が起きると、簡単に滅亡してしまう

 ゲームを進めていくと研究ツリーの最後に「Ascend」があり、研究を終えるとゲームをリセットできる。いわゆる転生機能で、プレイ結果に応じてポイントを入手し、新たな機能をアンロックできる。

 この機能の選択もツリー状になっている。例えば最初の「Unlock Classical Era」を選ぶと、研究ツリーの「Ascend」があった場所より先に新たな研究が登場し、より文明を進化させられるようになる。この場合も新たな研究の先に「Ascend」があり、いつかはリセットして新たな機能を獲得しに戻る。これを繰り返すことで、どんどん文明を進化させて、大きな街を作っていく。

転生するとプレイ結果に応じてポイントがもらえる
ポイントを消費して新たな能力を獲得。さらに先の文明にも進める

 本作は仕組みを理解するまでが難しい。筆者も最初は「クリッカーゲームなんだから、ただ連打するだけで何とかなるんだろう」と思って始めたが、そういうゲームではなかった。クリックは調整でしかなく、他の要素が大半を占める。

 だがひととおりの要素がわかってしまえば、そう苦労することもない。イベントが発生するのも条件があるので、街に余裕がないうちは発生させないように立ち回ればいい。そこからを作業的と感じるか、地道に遊んで楽しいと思えるかは人それぞれだろう。酒の肴にプレイするくらいならばちょうどいい塩梅だと思う。

イベントの発生条件を理解すれば、マイペースに遊べるようになる
【今回使用したPC】
マウスコンピューターG-Tune E4
スペックはCPUがCore i7-12650H、GPUがGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)、メモリが16GB DDR4-3200、ストレージがSSD 500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)、ディスプレイが14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)、OSがWindows 11 Home。重量は約1.8kgで、価格は199,800円

 なお、今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。本作は外付けGPUの使用を推奨しているが、2Dベースで動作が軽いため、CPU内蔵グラフィックスのPCでも問題なくプレイできると思われる。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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