働く人のための「DaVinci Resolve」

第6回

効果的なワイプの使い方と「DaVinci Resolve」での挿入方法 ~時間経過を表現する

 本連載では、無料で使える高機能な動画編集ツール「DaVinci Resolve」の使い方をお伝えしています。

時間経過をワイプで表現する

 前回までの作業で、「シーン2」と「シーン3-1」まで編集しました。「シーン3-1」は組み立てが大変でしたが、これ以降はそれほど難しい編集はありません。続きの編集で、色々な編集パターンを試してみましょう。

サンプルファイル

 今回の解説で使用した素材をサンプルとしてご用意しました。ご利用ください。

サンプルファイル1をダウンロード

サンプルファイル2をダウンロード

サンプルファイル3をダウンロード

※Webブラウザーによってダウンロードがブロックされる場合がありますが、右クリックメニューからファイルの保存を行い、警告が表示されても[継続]などの項目を選択して保存してください。

 前回、オーディオミュートの方法の1つとして、トラックごとミュートするという方法を学びました。現在「2」トラックがミュートされているはずです。このままではこれ以降の編集がややこしくなりますので、いったん「2」のトラックミュートを解除してください。現在「2」トラックには2つのカットがありますが、これらは個別に右クリックでミュートしておいてください。

「2」トラックの映像は個別にミュートする

 現在の素材と編集状況は以下のようになっています。

  • シーン1:映像のみ、音声のみ
  • シーン2:メイン動画 (編集済)
  • シーン3-1:サブ1〜サブ5動画、音声のみ (編集済)
  • シーン3-2:メイン動画、サブ動画
  • シーン3-3:メイン動画、サブ1〜2動画
  • シーン3-4:メイン動画、サブ動画
  • シーン3-5:メイン動画、サブ動画
  • シーン4:メイン動画

 「シーン3-2」のメイン動画には、すでに映像と別撮りした音声が合わせ込んであります。まずはこの動画をこれまでの続きに繋いでいきます。

  1. 「シーン3-2_メイン」をダブルクリックしてビューワーに表示させます。しゃべり始めにIN点、しゃべり終わりにOUT点を設定します。
  2. タイムラインをクリックして、ビューワーに表示させます。セリフ『今日はこれにしてみましょう』のあと、カメラが安定したところで止めておきます。
  3. メディアプールから「シーン3-2_メイン」を選択し、タイムライン「1」トラックの再生バーのところにドラッグ&ドロップで配置します。
    「シーン3-2_メイン」を「1」トラックに配置

 現在は「2」トラックの映像が編集点の上に被っていますので、編集点を過ぎてもしばらくトラック「2」の映像が表示されます。これは前回、次の編集点を決めてから調整すれば良いということで、放置していた部分です。

 いったん編集点を再生してみましょう。するとおかしなことに気づきます。シーン3-1の終わりでは、手にフレッシュパックを持っていたのに、次の瞬間には両手にカップとカップホルダーを持っています。編集とは時間を切って貼っていく作業ですので、このような瞬間的なジャンプが起こります。こうした編集点を、「ジャンプカット」と言います。

 ジャンプカットをどのように対応するのかは、時代により変わってきています。以前のように動画コンテンツがテレビや映画しかなかった時代では、瞬間に人が移動したり持っているものが変わったりしたら、『おかしいだろ』と指摘されました。テレビや映画の編集では、『まるで編集していないかのように編集する』ことが良しとされていたのです。

 しかし多くの人がYouTubeなどに動画を投稿するようになったことで、編集点でこのようなジャンプが起こることは当然として、あまり気にしない風潮になってきました。逆に編集されてジャンプしているほうが、サクサク話が進んで時短だし、それが面白いと感じるようにもなってきています。

 ジャンプカットがおかしいと感じない場合は、このままでいいのですが、やっぱりおかしいだろと思った場合や、他の人からおかしいと指摘された場合には、なんらかの手当が必要になります。

 この場合の対処方法としては、ワイプによって時間経過を表わすという表現方法があります。ここでは、エッジワイプを適用してみます。

  1. メディアプールが表示されている2つ隣、[トランジション]をクリックして、トランジションのパターンを表示させます。
    トランジションのパターンを表示させる
  2. 表示されたパターンのエリアを下にスクロールして、[ワイプ]の中から[エッジワイプ]を選択します。選択された部分を左右にドラッグすると、エッジワイプの動きが確認できます。
  3. [エッジワイプ]を「2」トラックのシーン3-1の最後の部分にドラッグ&ドロップします。
    エッジワイプを「2」トラックに配置

 再生してみます。ワイプパターンが下から上に移動しながら、カットが切り替わるようになりました。「DaVinci Resolve」は、このように前後の映像が同じトラックになくても、トランジションが正しく処理されるようになっています。ただ、タイミング的にはもう少し前のほうが良さそうです。「2」トラックの末尾をクリックして、ワイプ表示ごと前の方に少し寄せておきます。

 次に、パターンの方向として下から上でいいのか、という問題があります。もう少し、ワイプのパターンを工夫してみましょう。

  1. タイムラインに挿入した[エッジワイプ]の部分をクリックして選択します。
  2. 画面右上の[インスペクタ]と書かれた部分をクリックして、[インスペクタ]画面を表示させます。
    [エッジワイプ]の[インスペクタ]画面を表示させる
  3. [角度]の部分を90度に設定します。スライドバーを動かしてもいいですし、数字部分に「90」と入力しても結構です。
  4. [ボーダー]の部分を、15に設定します。こちらは数字入力のほうが早いでしょう。

 再生してみます。シーンの繋ぎ目が、左から右への白い線で横ワイプされるようになりました。こうした左右に動くワイプパターンは、本をめくる動作を連想させることから、時間経過を表わす表現としてよく使われます。シンプルですが、効果が高い方法です。

 なお[インスペクタ]画面は邪魔であれば、[インスペクタ]の文字部分を再度クリックして閉じてください。これは使用しているPCの画面が狭ければ邪魔になりますが、広ければ出しっぱなしでも問題ありません。

 「シーン3-2」は、他にカップをホルダーに乗せるアップを撮影した、「シーン3-2_サブ」という映像があります。これはメイントラックとアクションのタイミングを合わせて、「2」トラックに配置します。「シーン3-2_サブ」は、動きの部分を囲むように、IN点とOUT点を設定しておいてください。ただ「シーン3-2_サブ」の音声は必要ありませんので、最初から映像だけをトラックに配置するという方法でやってみます。

  1. 全体表示のタイムライン部分の左側にある、[ビデオのみ]アイコンをクリックして赤く点灯させます。
    ビデオのみ配置する場合は、[ビデオのみ]をクリック
  2. メディアプールの「シーン3-2_サブ」をクリックして、「2」トラックに配置します。
    映像だけを「2」トラックに配置
  3. [ビデオのみ]アイコンを再びクリックして、消灯しておきます。

 いわゆる「アクション合わせ」の編集方法は、前回をご覧ください。3の手順を忘れると、これ以降の編集ですべて音声が入らなくなりますので、[ビデオのみ]や[オーティオのみ]の機能を使ったあとは、必ず元に戻しておくのを忘れないでください。

 ここまでの編集結果を、YouTubeにアップロードしたので、参考にしてください。

【ここまでの編集結果】
「DaVinci Resolve」で2つのカットをワイプでつないだシーン - 窓の杜

ビデオインサートで編集点を隠す

 では続きのシーンを繋いでいきます。「シーン3-3」と「シーン3-4」は、それぞれメインとサブがあるだけですので、まずはメインを繋ぎ、次にサブをビデオのみのインサートで追加していきます。

 「シーン3-3_メイン」と「シーン3-4_メイン」で、それぞれセリフの始めと終わりにIN点・OUT点を設定し、タイムラインの「1」トラックに配置します。

シーン3-3、3-4メインを「1」トラックに配置

 「シーン3-3」と「3-4」の間でも、ジャンプカットになっています。これを「シーン3-3_サブ」を使って、隠していきます。

  1. 「シーン3-3_サブ」で、ボタンを押すアクションの手前にIN点、マシンのフタが開いたあとにOUT点を設定します。
  2. [ビデオのみ]を選択します。
  3. メディアプールの「シーン3-3_サブ」を選択し、いったん「シーン3-3_メイン」の上に配置します。その後位置をずらして、インサートカットが後ろ合わせになるよう配置します。
    「シーン3-3_サブ」を[ビデオのみ]で配置
    配置したあと、後ろ合わせになる位置までずらす

 再生して様子を見てみます。いいタイミングでアップになり、インサートの終わりで次の「シーン3-4」になるため、ジャンプカットがなくなりました。

 次に「シーン3-4_メイン」の上に、「シーン3-4_サブ」を配置します。これはフレッシュパックを押し込むところを起点にして、アクション合わせで編集してください。

「シーン3-4_サブ」をアクション合わせで配置

 フレッシュパックを押し込む動作は、「シーン3-4_メイン」では両手になっていますが、「シーン3-4_サブ」では片手になっています。このように微妙につじつまが合わない場合は、アクションの途中で切り替えるのではなく、インサートカットを前の方に伸ばして、差し込み動作に入る直前までをインサートカットで埋めてしまいましょう。

 次の編集に移る前に、[ビデオのみ]をクリックして、ビデオインサートモードを終了させておきます。

 「シーン3-5」は、撮影者の意図としてはメインの動画にサブの映像を乗せるという、これまで同様のインサート編集を想定しているものと思われます。ですが「シーン3-4」と「3-5」の間には時間経過が必要ですので、インサートではなくそのまま繋いでしまったほうが良さそうです。

  1. 「シーン3-5_サブ」の動画で、マシンの画面表示が変わってコーヒーができあがるポイントを探します。そこから2秒ほど前にIN点を設定します。
  2. コーヒーを取りだしたあたりにOUT点を設定します。このあたりで「シーン3-5_メイン」とアクション繋ぎにします。
  3. メディアプールから「シーン3-5_サブ」を「1」トラックに配置します。
    「シーン3-5_サブ」を「1」トラックに配置
  4. メディアプールで「シーン3-5_メイン」をダブルクリックし、コーヒーを取り出すあたりにIN点を設定します。『できました。』というセリフ終わりでOUT点を設定します。
  5. メディアプールから「シーン3-5_メイン」を「1」トラックに配置します。

 うまく繋がったでしょうか。「シーン3-4」と「3-5」の間には、先ほどと同じように横ワイプを設定して、時間経過を表現しておきます。ここまでの完成状態を掲載しておきますので、どのようなしあがりになったか、確認してみてください。

「シーン3-4」と「3-5」の間にもエッジワイプを配置
【ここまでの編集結果】
編集点をビデオインサートで隠したシーン - 窓の杜