柳谷智宣のAI ウォッチ!

親戚に聞かれる「チャッピーってなに?」~生成AIを布教したいあなたへ。30秒説明と魔法のデモ

ツールの「使い方」ではなく「体験」を贈ろう[お正月特別編]

 本連載「柳谷智宣のAI ウォッチ!」では、いま話題のAI(生成AI)を活用したサービスを中心に取り上げていく。今回はお正月特別編をお届けする。
「チャッピーってなに?」「AIってなんだ?」と聞かれたら、完璧なプレゼンをしてあげよう(画像はChatGPTで生成)

 IT・デジタルに詳しい皆さんは、正月、久しぶりに顔を合わせた親戚一同が集まるリビングで、祖父母や両親、親戚、あるいは甥や姪に質問されるかもしれない。ニュースやワイドショーで取り上げられている生成AIについてだ。

「ねえ、チャッピーって結局なんなの?」

 純粋な好奇心で問いかけてくるこのタイミングは、彼らに生成AIを布教する絶好の機会だ。

 ここで「大規模言語モデルといって、確率的に次の単語を予測するシステムで……」などと技術的な解説を始めてしまえば、彼らの目は一瞬で輝きを失い、二度とこの話題には触れなくなる。必要なのは正確な定義ではなく、彼らの生活実感に即した「たとえ話」と、目の前で奇跡が起きる「魔法のデモ」だ。

 相手がインターネットという言葉さえ怪しいシニア層であれば、スマートフォンを指して「ここには、物知りで何でも答えてくれるけれど、たまに知ったかぶりをする人が入っているんだよ」と説明するのがわかりやすいだろう。検索エンジンとの違いを強調するよりも、会話ができる相手であるという人格性を強調するほうが、彼らにはスッと入ってくるはず。

 一方、小学生や中学生の甥っ子や姪っ子には、「すごいけど、たまに間違う超物知りなロボットの友達」と伝えてみよう。宿題を代わりにやってくれるよ、とズルい使い方を教えると教育上問題が出そうなので、アイデア出しを手伝ってくれる相棒だと提示することで、彼らの興味を健全な方向へ誘導できる。ポイントは、AIを難しい機械ではなく、話の通じる相手へと認識をスライドさせることだ。

 なお、最初はハルシネーションについて詳しく説明する必要はないものの、「AIは万能である」と思い込まないように伏線を貼っておいた方がよいだろう。間違った認識で、AIに依存したり、拒絶したりしないようにしておきたい。

老眼と難解な役所言葉に疲れた大人たちを救う「目の機能」

 言葉での説明が終わったら、百聞は一見にしかず、すぐに実践に移ろう。特にChatGPTで使えるマルチモーダルやボイスモード、画像生成はデジタルに疎い層ほどその威力に驚くはず。

「おせち料理」に入っている食べ物の名前を教えてもらおう

 手始めに、目の前にある「おせち料理」の写真を撮ってみせるのがよい。

 重箱の中には、いまどきの人だと名前も知らないような珍味や、何で作られているのか判別しにくい料理が並んでいる。「この食べ物は何ですか?」とAIに投げかけてみよう。数秒後、AIが画像を解析して「これは『ちょろぎ』です。長寿を願う意味があります」などと解説を始めると、親戚一同から「おおっ!」というどよめきが起きるはずだ。単なる画像検索ではなく、文脈を理解して説明してくれるという点が、彼らにとっての最初の魔法となる。

料理や素材の名前を教えてもらうデモを披露しよう。今回はスマホアプリを使用

年金のお知らせハガキ、難解な説明書を解説してもらおう

 本当に大人たちの心を掴みたいなら、もっと切実な問題を解決してあげよう。

 例えば、テーブルの隅に置かれたままになっている、役所から届いた年金や保険のお知らせハガキ、あるいは難解な説明書を使ってみよう。

 写真に撮って「私は何をすればいいの? 小学生でもわかるように教えて」というプロンプトを入力する。役所の文章は往々にして難解で、老眼の目には文字も小さい。AIがそれを読み解き、「要するに、来月の15日までにこの金額をコンビニで払えば大丈夫です」とズバリ要約してくれた瞬間、その場にいる大人たちの目の色が間違いなく変わるはず。単なるデジタルツールではなく、日々のストレスから解放してくれる救世主に見えるからだ。

役所の書類を後回しにして困る人は多いので、AIに解説してもらおう

キーボードを捨てて「おしゃべり」で遊ぶ音声対話の衝撃

 スマートフォンでの文字入力が苦手なシニア層にとって、フリック入力は高い壁だ。しかし、ChatGPTには人間とほぼ変わらない速度と抑揚で会話ができる「音声モード」が搭載されている。

ChatGPTアプリの右下の波形アイコンをタップして「音声モード」を起動する

 せっかくデモをするなら、単なる質疑応答ではなく、AIの機転とユーモアを引き出すエンターテインメントにチャレンジしたい。おすすめなのは、AIに無茶ぶりをする「しりとり」だ。

 「しりとりをしよう。ただしルールは全部「食べ物」に限定ね、負けた方が猫の鳴きマネをして」と音声で話しかける。制限をつけることでゲーム性が増し、AIが必死に単語を探すように見える様子は人間味すら感じさせる。その自然な応答には驚くこと間違いなし。そして、AIが負けたとき、本当に「ニャー」と鳴きマネをすると、その場は爆笑に包まれるだろう。

 さらに畳み掛けるなら「方言モード」も効果的だ。

 「あなたは青森県出身の頑固なおばあちゃんになりきって。最近の若者について、バリバリの方言で愚痴を言って」とリクエストしてみる。流暢な津軽弁や鹿児島弁でAIが語り出すと、親戚たちは「なんでそんな言葉を知っているんだ」と驚きつつも、親近感を抱くことだろう。

 音声対話のデモは、AIを「操作するもの」から「コミュニケーションするもの」へとランクアップしてくれるはず。ここまでくれば、AIに興味津々になっているだろう。

思い出の写真をその場で作品に変える画像生成の演出

 次は視覚的なインパクトで驚かせてみよう。

 絵を描くスキルを持っていない人なら、言葉ひとつで画像が生まれるさまは、まさに魔法そのもの。ここでは、その場にいる人物を被写体にして、現実にはあり得ない姿に変身させるのが一番盛り上がる。

 例えば、いつも寡黙なおじいちゃんの写真を撮り、こう指示を出す。

「この人物をモデルにして、映画に出てくるカウボーイのようなポスター風のイラストにして。最高にカッコよく描いて」

 数十秒後、生成された画像の中でおじいちゃんが銃を構えている姿が表示されると、本人は照れながらも満更ではない顔をするだろう。

おじいちゃんを古い映画のポスターにしてあげよう

 もちろん、子どもたちや若い世代には、自分たちの写真をアニメ風や漫画風に変換するデモが刺さる。「この女の子が、春に入学式を迎えるアニメ風画像にしてください」と頼めば、一瞬で自分が主人公になったようなイラストが出来上がる。生成AIはいい感じに美化してくれるので、大人も楽しんでくれるだろう。

子どもたちもアニメ要素が増えれば喜んでくれるだろう

 最近では、写真をもとに4コマ漫画を生成してくれるような手法も手軽に試せるようになっている。ただ似顔絵を描くだけでなく、シチュエーションや画風を自由自在に操れることを見せるのがポイントだ。絵が描けない人でも、クリエイティブな楽しみ方ができるのはインパクトが大きい。

 自分の顔や家族の顔が、見たこともないタッチのアート作品に変わる体験は、彼らの記憶に強烈に残り、後日「あのアプリ、なんていう名前だっけ?」と連絡が来るきっかけになるかもしれない。

動画生成の未来と「技術」ではなく「体験」を贈るということ

 ちょっとハイレベルだが、動画も生成できるということを見せるのもあり。「Sora」アプリでSora 2の実力を見せてあげよう。

 いまは自分以外の人物を登場させることはできないので、ペットの写真を動画にしてみよう。見知ったペットが動き出すと盛り上がるだろう。

 例えば、愛犬の写真をアップロードし、「この犬が宇宙飛行士になって船外活動をしている」とプロンプトを入力しよう。しばらく待つと、指示通りの音声付き動画が生成される。見知った愛犬があり得ないシチュエーションで動いているのを見れば、AIによる新時代が来ていることを体感してもらえることだろう。

ペットを擬人化して動画にすればびっくりするはず

 何も知らない親戚にAIを説明するのは、ツールの「使い方」を教えるというよりも、デジタル技術によって、家族のコミュニケーションがどう豊かになるか、面倒なことがどう楽になるか、という「体験」を共有する方が効果的だ。難しい専門用語や、ハルシネーションへの注意喚起といったリテラシー教育は、彼らがAIを実際に触り始め、興味を持ってからで十分だ。

 まずは「チャッピーってすごい」「AIって面白い」というポジティブな感情を持ち帰ってもらうこと。それができれば、あなたの「30秒説明」と「魔法のデモ」は大成功といえる。この年末年始、リビングを一番のエンターテインメント空間に変えるのは、テレビの特番ではなく、あなたのポケットに入っている生成AIになるかもしれない。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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