Excel VBAで会話するChatGPT

第4回

懐かしの“あのイルカ”を再現した「カイル君GPT」が書籍誕生のきっかけ!?

書籍『生成AIをWord&Excel&PowerPoint&Outlookで自在に操る超実用VBAプログラミング術』の見どころ

 この記事はインプレス刊『生成AIをWord&Excel&PowerPoint&Outlookで自在に操る超実用VBAプログラミング術』(近田伸矢 著/古川渉一 監修)の一部を編集・転載しています(編集部)

懐かしの“あのイルカ”を再現した「カイル君GPT」が書籍誕生のきっかけ!?

 弊誌の連載「やじうまの杜」で紹介した「カイルくんGPT」や「Excelドット絵作成 2024」など、独創的なマクロ活用法を発信している『生成AIをWord&Excel&PowerPoint&Outlookで自在に操る超実用VBAプログラミング術』の著者で「VBAで実用マクロ」の近田伸矢さん。実はインプレスから過去、VBAでゲームを作ったりExcel VBAでIEを自動制御したりと、独創的な書籍を生み出してきた方なのです。そんな近田さんが新しい書籍のテーマに選んだのが生成AI。これまで3回の連載で書籍の一部を公開してきましたが、最後となる今回は書籍の誕生と見どころをお聞きしました。

編集部:令和の時代になぜカイル君?
今回の書籍で原点となったのが「カイル君GPT」ということですが、なぜそんなことを思いついたのでしょうか?

近田氏:2023年3月、OpenAI社によるChatGPTのAPI公開は衝撃的でした。ChatGPTを自作のアプリやシステムに組み込むことができるようになったのです。Excelが大好きな私は、早速ワークシートで自在にChatGPTを使える関数を作成し、サイトで公開、これを窓の杜さんに取り上げていただき、多くの反響をいただきました。

近田さんが公開した「ChatGPTを呼び出すユーザー定義関数」を取り上げた記事がこちら

カイル君は若い読者の方はご存じないかもしれませんね。1997年にOfficeアシスタントとして登場した当初、近未来を感じたものです。でも、回答がイマイチのため「お前を消す方法」など辛辣な反応を受けることも。そんなカイル君を最先端のAI技術で甦らせたい!との思いが募り、カイル君と麻雀できる「Cell_雀」の作者でExcelゲーム開発仲間の武藤さんに連絡を取ったところ、素材の提供を快諾いただき、音声再生機能の追加や追いかけっこできるようにするなど、四半世紀の時を経て、ChatGPTを搭載したカイル君が、的確に回答してくれるようになったのです。APIのパラメータの1つであるRoleSystemにカイル君の性格を登録するのがポイントで、自分が思い描いていた通り回答してくれるカイル君を見た時、目頭が熱くなりました。

【カイル君GPT】
「カイル君GPT」が動作する様子。当時からこれくらいの回答ができていれば……。ちなみに最後はおなじみ(?)の質問もしている。回答内容にご注目

編集部:書籍としてまとめ上げるためのモチベーションは?
きっかけとしてのカイル君GPTが、最終的にはExcelのみならず、Word、PowerPoint、Outlookまでも巻き込んだ独創的な生成AI活用に結びついていくわけですが、その過程とモチベーションはどこに?

近田氏:カイル君GPTを使ってみて、Officeの中で直接ChatGPTを利用できることの便利さを実感しました。Excelだけでなく、Wordでの文章要約や文体変更、Outlookでの返信メール生成など、試しにVBAで作ってみたらいい感じで動作したのです。ブラウザ版のChatGPTでは味わえないこの便利さをもっと多くの人に体験してもらいたいと思い、窓の杜の編集長に書籍の企画を提案し、以前私が執筆した書籍の縁もあって出版が決まりました。

目指したのは「Officeから直接、生成AIを活用する」という新しいコンセプトの実現でした。開発と執筆は順調に進み、最新のAPIも取り込みながら、読者の皆さんにMyGPTs、GPT-4Vなど最新技術を取り入れたマクロをわかりやすくご紹介できることとなりました。

Excel VBAを使った例だけでなく、WordとPowerPoint、Outlookまでも含んだ内容になっているのが最大の特徴

編集部:独断で選ぶ見どころトップ3は?
書籍ではアプリごとにレシピ形式でVBAと生成AIのプログラミング活用例を解説していますが、「これはぜひ体験してみてほしい」というレシピを3つ教えてください。

近田氏:正直言うとどれもオススメなのですが(笑)、実用性や面白みなども感じられるレシピは以下だと思っています。

  1. Word「要約レポート作成」レシピ
    複数のファイルを指定して、内容の要約レポートと類似度相関表を一気に作成します。ブラウザ版のChatGPTでは実現できないVBAならではのレシピで、大量文書の内容を理解する必要がある際に重宝します。
    Word「要約レポート作成」レシピ

  2. PowerPoint「創作プレゼン」レシピ
    例えば、「東京の観光スポット」のテキストを選択して実行、「パンフレット,10,2」(制作するドキュメントの概要と枚数、イラストのテイストを設定する)と入力して実行すると見事な写真入りパンフレットが出来上がります。アイデアをプレゼンのスライドにしたい時に便利です。
    PowerPoint「創作プレゼン」レシピ
  3. 「MyGPTs」レシピ
    ChatGPT Plus(有料版)でしか利用できない自由にカスタマイズ可能なMyGPTs機能をほぼ同様に実現するレシピです。個別のドキュメントを参照したり、登録したExcelやCSVデータを分析できるので、GPTが知らない社内固有の情報を与えて回答させる専用GPTを作ることができます。
    「MyGPTs」レシピ

また、ページ数の関係で本書に含めることができなかったレシピも、読者特典で提供しています。「Word議事録作成」「メールタスク抽出」「ブレーンストーミングシート」など、書籍と同じレイアウトで解説されたPDFと完成ファイルをダウンロードできますので、併せてご活用ください。

オリジナルのリボンを追加し、各アプリのレシピをボタン一発で実行する方法も解説している

編集部:書籍を通して伝えたいメッセージは?
生成AIという最新の潮流をVBAでOfficeアプリに取り込むという内容の書籍ですが、読者やこの記事をご覧になっている皆さんへ伝えたいことは?

近田氏:最先端技術である生成AIは特別な技術知識がないと扱えないと考えられがちですが、その代表格であるChatGPTやDALL-EをAPIで自在に呼び出せるようになったことで状況は一変しました。身近なExcelやWordなど、Officeアプリのマクロで生成AIを自在に操れるようになったのです。基本的なマクロの知識とスキルが必要となりますが、その先には、文書作成、データ分析、プレゼンテーション作成など、自分が行いたい業務を、自由自在に生成AIの力を借りて実行できる世界が待っています。

本書では、すぐに使えるコードやアドインファイルを読者特典として提供していますので、マクロやプログラミングに不慣れな方でも親しみやすく安心して「文書要約」や「MyGPTs」等のレシピを試していただくことができます。また、既にマクロを使いこなしている方は、書籍で解説している「カスタマイズポイント」を参考に、業務に合わせてコードを変更したり、生成AI関数を駆使した独自のレシピを創り出すこともできるでしょう。

最近サービスが開始された「Microsoft 365 Copilot」でも同様のことができると思いますが、Copilotが毎月3,200円かかるのに比べ、本書籍は2,350円買い切りです(笑)。Officeアプリから直接ChatGPTやDALL-Eを利用する便利さを手軽に体感いただけますので、ぜひ、本書籍を手に取っていただければと思います。

コード内で読者の皆さんが手を加えられる点を「カスタマイズポイント」として解説している。新しいGPTのモデルなどにも対応できるよう配慮している部分も

最後に読んでいただいた皆さまへ感謝の意を込めて、Wordのリボンに新たに追加できる「Myプロンプト」レシピをプレゼントします。個別に設定できる最大20のプロンプトを、番号指定で手軽に実行できるレシピで、例えば「英語に翻訳してください」や「上司宛の報告書を作成してください」「文章をわかりやすさの観点で評価し、改善点を指摘してください」といった業務に役立つリクエストをMyプロンプトとして登録し、Word上で瞬時に実行できます。この「Myプロンプト」の使い方やコードは、私のサイト「VBAで実用マクロ」にて詳細な解説と共にダウンロード提供しています。この機会に、Wordでの作業効率を大幅に向上させるレシピを体験していただき、本書籍の良さを少しでも知ってもらえれば嬉しいです。

「Myプロンプト」レシピ配布元ページ

生成AIをWord&Excel&PowerPoint&Outlookで自在に操る超実用VBAプログラミング術

    書籍目次
  • 【価格】2,530円(本体2,300円+税)
  • 【発売日】2024年2月7日(水)
  • 【ページ数】336ページ
  • 【著者】近田伸矢/監修】古川渉一
  • 【サイズ】A5判
  • 【目次】
     第1章:生成AIを操るVBAの基礎知識
     第2章:知っておきたい生成AIの基本
     第3章:VBAで会話する(ChatGPT)
     第4章:VBAで画像を生成する(DALL-E)
     第5章:VBAで自然言語処理を行う(Embeddings)
     第6章:生成AIのAPIをユーザー定義関数として使用する
     第7章:すぐ使える! PowerPointマクロと生成AIの連携レシピ
     第8章:すぐ使える! Wordマクロと生成AIの連携レシピ
     第9章:すぐ使える! Outlookマクロと生成AIの連携レシピ
     第10章:すぐ使える! Excelマクロと生成AIの連携レシピ$$