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「マインクラフト」と「Scratch」に人気が集まる子供向けプログラミング教育ツール

約60種類から選ばれた学習ツールが集まった“G7プログラミングラーニングサミット”レポート(前編)

“G7プログラミングラーニングサミット”のポスター

 12日、早稲田大学西早稲田キャンパス63号館において“G7プログラミングラーニングサミット”が開催された。

 このイベントは、早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所と(株)フジテレビKIDSが共同で行なっている、プログラミング教育教材の教育効果に関する調査研究、および次世代型プログラミング教育教材の開発に関する研究の一環として開催されたもので、研究調査対象としてリストアップされた約60種類のプログラミング学習ツールから選ばれた6つの学習ツールのワークショップや体験・展示会が行なわれた。ここでは、前編と後編の2回に分けて、体験・展示会の様子を中心にレポートする。

「マインクラフト」と「Scratch」が人気

 “G7プログラミングラーニングサミット”の展示・体験会場には、十数種類のプログラミングツールが出展されており、実際に体験することができた。小学生くらいのお子さんを連れた方も多く、ツールに夢中になり、なかなか動こうとしないお子さんもいた。

 個別のツールについては後編で紹介するが、前編ではその中から知名度の高い「マインクラフト(マイクラ)」と「Scratch」を取り上げる。

“G7プログラミングラーニングサミット”の展示・体験会場の様子。多くの来場者が詰めかけ、実際にプログラミングツールの体験を行なっていた
展示・体験会場に出展されていたプログラミングツール。十数種類のプログラミングツールが出展されていた

ゲームでありながらプログラミング教育にも使われる「マインクラフト」

「マインクラフト」は、展示・体験会場での体験のほか、建築ワークショップも開催された。テーマは、“Minecraftでサステナブル(持続可能)な街を作成しよう!”というものである

 「マインクラフト」は、本来はプログラミングツールというより、サンドボックスゲーム(砂場のように自由に世界を構築できるゲーム)の代表だが、レッドストーン回路と呼ばれるパーツを組み合わせることで、論理構造などを作成できるほか、MODを使えばコードを書いて、「マインクラフト」の世界をプログラミングすることも可能なため、プログラミングツールとしても使われている。

 会場では、11月にリリースされたばかりの教育向けバージョン「Minecraft: Education Edition」が展示されていたほか、“Minecraftでサステナブル(持続可能)な街を作成しよう!”というテーマの建築ワークショップも行われていた。このワークショップは、スウェーデン大使館主催の「マインクラフト」コンペと同じ課題であり、ワークショップで作成した作品をそのままコンペに出品できるようになっていた。コンペのファイナリスト100名は、12月にスウェーデン大使館で開催されるスペシャルディナーに招待されるということで、人気を集めていた。

子供向けプログラミングツールとしては、「Scratch」が主流

 さまざまな子供向けプログラミング教材やツールの中でも広く使われているのが、MITメディアラボが開発したプログラミング教育用のビジュアルプログラミング言語「Scratch」である。

 「Scratch」は、プログラムコードをキーボードから入力する必要はなく、あらかじめ用意されたブロックをマウス操作で並べていくだけで、プログラミングが行なえることが利点だ。キーボードの操作に慣れていない小学校低学年でも、プログラミングの基礎を容易に学べるということで人気があり、多くの子供向けプログラミング教室で採用されている。

 現在主流の「Scratch 2.0」は、Webアプリケーションとして開発されたため、Webブラウザーでサイトへアクセスするだけですぐに利用できることもメリットである。もちろん、職業プログラマーが実務で利用しているものではないが、プログラミングの基本的な考え方を学習するのには適している。たとえば、小学校で「Scratch」を学び、中学校や高校でJavaScriptやPythonといった本格的なプログラミング言語にステップアップすれば、よりスムーズな習得が可能になるだろう。

日経BP社のブースには、同社が出版している「Scratch」やプログラミング学習関連書籍の販売コーナーと「Scratch」体験コーナーが用意されていた

 今回の“G7プログラミングラーニングサミット”でも、「Scratch」やプログラミング学習関連書籍を多数出版している日経BP社のブースと、“CoderDojo(コーダー道場)”が「Scratch」の展示やデモを行なっていた。

“CoderDojo守谷”の様子。最初は初めて参加する子供のために、「Scratch」の基礎を教えるが、後半は自由に作りたいものを作ってもらう

 “CoderDojo”は、アイルランド発の子供向けプログラミング道場で、ツールとして「Scratch」が使われていることが多い。いわゆるプログラミング教室のように決まったカリキュラムに従って勉強するのではなく、参加する子供達(ニンジャと呼ばれる)が、自分達で好きなものをプログラミングしていくことが特徴となっている。わからないことがあったら、メンターと呼ばれる指導者と一緒に考えるというのが“CoderDojo”のルールだ。基本的に参加費が無料なため気軽に参加できるので、興味を持った方はCoderDojo JapanのWebサイトを見ていただきたい。

 また、情報処理学会が主催する“Exciting Coding! Junior 2016”も併催されていた。“Exciting Coding! Junior 2016”は、小学校4~6年生を対象にした「Scratch」のプログラミング教室であり、初めて「Scratch」に触れるという子供も多かったが、夕方には自分の作品を作り上げていた。