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プライバシー保護と広告を両立 ~「Google Chrome 90」ではPrivacy Sandboxの管理UIが導入へ

サードパーティーCookieは廃止へ。プライバシー情報はAPI経由で適切に管理

公式ブログ“Chromium Blog”

 米Googleは「Google Chrome」におけるサードパーティーCookieのサポートを段階的に廃止する方針で、それに代わるターゲティング広告の仕組みとして“Privacy Sandbox”を提案している。同社は1月25日(現地時間)、“Privacy Sandbox”に関する今年の展望を公式ブログ“Chromium Blog”で明らかにした。

 現在のWebでは、Cookieを介して広告のコンバージョン計測(広告が費用に見合った成果を出しているかを指標で測ること。効果測定)やターゲティング(ユーザーの興味・感心に沿った広告を掲出して効果を高めること)が行われている。このことはユーザーにも一定のメリットがあるが、Cookieで得たユーザー情報をどのように扱うかは結局のところ、広告側の良心に委ねられている。広告側がその気になれば、ユーザーがWebで何をしているのかを追跡し、その属性や嗜好を丸裸にし、挙句には第三者へ販売したり、マルウェアで悪用することすらできなくはない。実際、そうした事件が世間をにぎわすことも最近は増えてきた。

 そこで、GoogleをはじめとするWebブラウザーベンダーはCookieに代わるプライバシー保護型の広告ソリューションを模索している。“Privacy Sandbox”もその一つで、ユーザー情報の処理を広告側で自由にやらせるのではなく、Webブラウザーのコントロール下で処理し、広告側はWebブラウザーが提供するAPIを用いてその結果を利用するのが肝だ。

サードパーティーCookieで好き勝手にユーザーを追跡できた時代は終わり、いくつかのAPIでコントロールされるようになる
  • 広告コンバージョンの測定:Event Conversion Measurement API
  • 広告のターゲティング:Federated Learning of Cohorts(FloC)アルゴリズムなどの手法
  • スパムや詐欺への対策:Trust Token API(ユーザーが機械ではなく人間であることを証明)

 サードパーティーCookieを廃止することは広告収益に大きな打撃を与えるのではないかと危惧されているが、この対策としてはFloCアルゴリズムが有望視されている。FloCアルゴリズムは機械学習をWebブラウザーに組み込んでユーザーの閲覧履歴を分析し、興味や関心を持つユーザーを“Cohort(群れ)”にまとめる。広告主はわざわざユーザーの個人情報を分析・追跡しなくても、“Cohort”単位で広告の配信を決められるため、広告の効果とユーザーのプライバシーを両立できる。

 こうした一連の取り組みの一部はすでに試験運用の段階にあるが、今年4月にリリースされる「Chrome 90」では“Privacy Sandbox”をユーザー側でコントロールするためのインターフェイスも導入される予定だ。初期リリースではシンプルなON/OFFしかできないが、段階的に拡張されていくという。

 また、Cookieによらないユーザー特定技術への対策も進められる。たとえば、Webブラウザーの種類やバージョン、利用しているOSなどの情報を得るために伝統的に用いられてきたユーザーエージェント文字列はいずれ固定化される。代わりに“UA-CH(User-Agent Client Hints)”と呼ばれるAPIが「Chrome 84」から試験運用されており、近々安定版へのロールアウトが完了するという。