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64bit版「Raspberry Pi OS」がベータ版を卒業、正式リリース

3GBメモリの制限を解消、最新ボードのポテンシャルを引き出せる

64bit版「Raspberry Pi OS」の正式リリースが発表

 64bit版「Raspberry Pi OS」の正式リリースが2月2日(英国時間)、ラズベリーパイ財団(Raspberry Pi Foundation)から発表された。64bit版「Raspberry Pi OS」は約1年にわたってベータ版が試用できる状態だったが、今後は広く一般に提供される。

 「Raspberry Pi OS」は、ARMプロセッサーを搭載した教育・ホビー向けのシングルボードコンピューター「Raspberry Pi」向けの標準OS。ベースはLinuxディストリビューション「Debian」で、かつては「Raspbian」と呼ばれていた。

 「Raspberry Pi」ボード自体は2016年の「Raspberry Pi 3」から64bit(arm64)に対応しており、最近では8GBのメインメモリを搭載するモデルも登場している。しかし、標準OSは互換性を考慮して、32bit(armhf:arm hard-float、Armv7にハードウェア浮動小数点演算サポートを追加したもの)のまま据え置かれていた。

 64bitボードでも32bit OSを利用することはできるが、単一プロセスで扱えるメモリ量が3GBまでに制限されるなど、そのポテンシャルを発揮することはできない。また、クローズドソースのアプリケーションの多くはarm64にしか対応していない。

 オープンソースのアプリケーションのなかにはarmhfに移植されたものもあるが、かならずしも完全な最適化が施されているとはいえない。arm64命令セットのパフォーマンスを享受できないという欠点もある。サードパーティ製OSを利用すればこれらの問題は解決できるが、できれば標準OSでカバーしてほしいところだ。

 64bit版「Raspberry Pi OS」は、「Raspberry Pi」ボードの潜在能力を引き出すにあたり最適なOSになると期待されている。「Raspberry Pi」ボードでプロセスあたり3GB以上のメモリを必要とするアプリケーションはまだ多くないとみられているが、「Chromium」をはじめ、今後はそれを必要とするアプリケーションは増えてくるだろう。

 なお、64bit版「Raspberry Pi OS」でデフォルトインストールされる64bit版「Chromium」には「Widevine CDM」ライブラリが含まれておらず、DRMで保護されたコンテンツを復号できない。「Netflix」や「Disney+」といったストリーミングメディアを再生するには、別途32bit版「Chromium」をインストールする必要があるとのことなので注意したい。

sudo apt install chromium-browser:armhf libwidevinecdm0