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「Adobe MAX Japan 2023」が4年ぶりにリアル開催 ~画像生成AI「Firefly Image 2 Model」の一般提供開始などを発表

マンガのセリフに最適な新書体「貂明朝アンチック」も披露

クリエイターの祭典「Adobe MAX Japan 2023」基調講演の様子。Adobe本社CSOのスコット・ベルスキー氏が登壇

 アドビ(株)は11月16日、クリエイター向けイベント「Adobe MAX Japan 2023」を東京ビッグサイト(東京・江東区)にて実施した。同イベントの開催にあたり、画像生成AIモデル「Adobe Firefly Image 2 Model」の一般提供開始など、同社製品の最新情報を公開した。

 「Adobe MAX Japan」は、米Adobe本社が主催するクリエイター向けカンファレンス「Adobe MAX」の日本版となる有料クリエイティブイベント。グラフィックデザイン、写真、Web制作、UI/UXデザイン、映像制作、3D制作などに携わる第一線で活躍するクリエイターや、それらを志す来場者が楽しめる“日本最大級のクリエイターの祭典”として開催されている。

 コロナ禍を経て、約4年ぶりにリアル会場での全面開催となった今年の「Adobe MAX Japan 2023」では約3,600人が来場。基調講演では、Adobe本社デザインおよび新興製品担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)のスコット・ベルスキー氏が登壇し、クリエイティビティとマーケティングをひとつにするツールとして「Adobe Express」をアピールするとともに、同社が日本のあらゆる業界で活躍する、すべての人に「つくる力」を提供していくことを表明した。

「Adobe MAX Japan 2023」会場の様子
生成AI「Adobe Firefly」コーナー。多くの来場者が担当者の説明に対して熱心に耳を傾けていた
セッション終了後には恒例のアルコールありのパーティー「Beer Bash」も行なわれた

「Adobe Firefly Image 2 Model」の一般提供を開始

「Adobe Firefly Image 2 Model」の一般提供開始をアナウンス

 アドビが開発した生成AI「Adobe Firefly」の初代モデルをベースに開発された「Adobe Firefly Image 2 Model」が、ベータ版での提供を終え、一般提供を開始した。

 「Image 2 Model」では、スタイル参照や3Dなど生成時にさまざまな設定が可能。ユーザー指定のカスタムスタイルでコンテンツを生成する「生成Match」、写真スタイルの画像調整を可能にする「写真設定」、優れた結果を得るためにプロンプトの追加や言い換えを支援する「プロンプト候補」などの新機能が、すでに10月の時点で追加されている。

 今回の一般提供開始に伴い、多言語におけるテキストプロンプトからの結果の出力の精度が向上し、文化的なコンテクストをより高い精度で理解した上で画像を生成できるようになった。

左の画像が「Adobe Firefly Image 1 Model」、右の画像が「Adobe Firefly Image 2 Model」で生成されたもの。よりフォトリアルなイメージも生成可能になった
基調講演の場では開発中の「Project Stardust」のデモも披露された
AIが写真の中にあるオブジェクトの位置関係を認識し、そのオブジェクトを自由に移動・削除して加工できる

マンガのセリフに最適な書体「貂明朝アンチック」を発表

「貂明朝アンチック」

 マンガのセリフに使える新しい書体「貂明朝アンチック」が発表された。アンチック体は漫画業界でよく使われる書体のことで、明朝体のかなにゴシック体の漢字を合わせたもの。

 「貂明朝アンチック」はマンガの世界観を読者に的確に伝え、マンガにおける文字の表現力を高めることを意図してデザインされた書体となる。同フォントに含まれる文字と字体は、新しく定められた「Adobe-Manga1-0」文字コレクション仕様に準拠している。同仕様(およびそのサブセット)が業界標準として活用されることで、さまざまなマンガ用フォント間の互換性と相互運用性が向上することが期待されるという。

フォントのウェイトは6種類を用意
感嘆符を入力しやすく、バリエーションも充実

「Adobe Express」と「LINE Creative Lab」との連携を2024年2月中に開始予定

 「Adobe Express」および「LINE Creative Lab」が来年2024年2月に連携することを発表。広告の作成におけるクリエイティブ制作の工数削減や、コンテンツの質の向上を実現したより効果的な制作環境を提供するとしている。また、クリエイター支援に向けたセミナーやクリエイターコンテストが2024年3月以降、順次実施される。

「LINE Creative Lab」内に「Adobe Express」のリンクボタンを導入
ユーザーのクリエイティブ制作を支援するセミナーやクリエイターコンテストも実施予定

 LINEヤフー(株)との協業のほかにも、8月に先行発表されていたPC版の「note」上で「Adobe Express」を活用して見出し画像を作る機能の提供も開始された。

開発中の技術「Project Sound Lift」「Project 3D Edge Printing」を日本で先行公開

 「Adobe MAX Japan 2023」各セッション終了後にパーティー形式で行われた「Beer Bash」では、開発中の最新機能を紹介する「Sneaks」を開催。生成AIを使用して音声編集を加速化する「Project Sound Lift」や、本の小口部分に3D印刷を施す「Project 3D Edge Printing」が世界初公開された。

「Project 3D Edge Printing」のサンプル。本の小口、天に立体的なタイトルやコンテンツを表示できる技術
セリフやBGMなど、音声を自動的に切り分けられる「Project Sound Lift」。切り取った音声は個別に再生・エフェクト処理が可能

 また、10月の本家「Adobe MAX」で発表されて大きな話題となった、ウェアラブルデジタルドレス「Project Primrose」も会場で実演され、ファッションにおけるアドビの開発中技術が日本のクリエイター向けに改めて紹介された。

 なお、「Sneaks」内で発表された各新機能の詳細な仕様は明らかにされておらず、実装時期も未定とのこと。

ファッションを動的でインタラクティブなものにする「Project Primrose」の実物も披露され、「Sneaks」会場は大盛り上がりとなった