特集・集中企画

イラレのAIが実用的すぎ! 商用可能なベクター画像を生成できる「Adobe Firefly Vector Model」をさっそく試してみた

箱やマグカップに一瞬ではめ込み合成できる「モックアップ」もすごい!!

商用可能なベクター画像を生成できる「Adobe Firefly Vector Model」をさっそく試してみました!

 進化が止まらないAdobeの商用利用可能な生成AI「Adobe Firefly」ですが、10月に開催された今年の「Adobe MAX」にて、Adobe Illustratorにテキストからベクター画像生成ができる「Adobe Firefly Vector Model」が発表されました。

 これまでAdobeの生成AI機能としては、Photoshopの「生成塗りつぶし」「生成拡張」が注目の的になっていました。しかし、Illustratorにベクター生成ができる生成AI機能が実装されたことで、その実用性のよさなどから一気にIllustratorの新機能に注目が集まっています。

 今回は、そのAdobe Illustratorに実装された生成AI機能「Adobe Firefly Vector Model」を中心にご紹介していきます。

いまさら聞けないベクターってなに??

 今回は「Adobe Firefly」でベクター画像を生成することができるようになりましたが、そもそも「ベクター」とはなんでしょうか。Photoshopの生成AIと何が違うのでしょうか。

 Adobeから展開されているPhotoshop、Illustratorはどちらも画像編集ソフトですが、それぞれ得意なデータの種類があります。

 Photoshopはビットマップ画像と呼ばれるデータを編集することに長けています。ビットマップデータとはドットの集合体で表現されたデータのことで、デジタルカメラなどで撮影した写真などがこれにあたります。Photoshopなどで拡大すると、その画像はひとつひとつの点(ピクセル)で構成されていることがわかります。JPGやPNG、GIFなど馴染みのあるフォーマットもビットマップデータです。

Photoshopが得意とするビットマップ画像。拡大するとピクセルで構成されていることがわかります

 一方、Illustratorはベクター画像と呼ばれるデータを編集することに長けています。ベクターはビットマップのようにドットで表現しておらず、点や線を計算式によって表現したデータのことです。一番の特徴は画像を拡大・縮小をしても計算式からできているベクター画像はビットマップデータと違い、画像が劣化しないということです。しかし、計算式で表現していることから写真などの複雑な色合いや形状を表現するのには向いていません。ベクターはアイコンやロゴなどに向いているデータと言えるでしょう。

Illustratorが得意とするベクター画像。アイコンやロゴなどに適したデータです

イラレの生成AI「Adobe Firefly Vector Model」を使ってみた

 ここからは実際にIllustratorに実装された生成AI「Adobe Firefly Vector Model」を触りながら、基本的な使い方を解説していこうと思います。

 まずは簡単な使い方から見ていきましょう。

基本的な使い方

 Illustratorを起動したら、プロパティパネルのプロンプト入力部分に生成したいものを入力します。今回は「シンプルな子猫のキャラクター」とします。そして種類が「被写体」になっていることを確認して[生成]をクリックします。

「テキストからベクター生成」からプロンプトを入力していきましょう

 すると猫のイラストが生成されました。一度で3種類の画像を生成するので気に入ったものを選択します。

一度に3種類の画像が生成されます

 このイラストが、すでにベクターデータになっています。

生成されたイラストはベクターデータとして出力されています

 種類を変えるとまた違ったイメージを生成することができます。また「シーン」を選べば背景が生成されます。

「シーン」から背景も生成できます

 「アイコン」を選べばシンプルな画像が生成されます。

このようなシンプルな画像にすることも可能です

 「パターン」で生成した画像をクリックして長方形ツールなどでドラッグすると、パターンで塗られた長方形が作られます。

パターン画像の生成も簡単にできます

別画像のテイストを取り入れる

 さらにプロンプト入力部分の下にスポイトのアイコンがあるので、任意の画像をクリックしてから[生成]を押すことで、そのテイストに合わせた画像を生成することができます。

モチーフ画像のテイストに合わせた画像を生成することも可能です

ほかにもイラレのAI新機能「モックアップ」がすごい!!

 Illustratorの生成AIも強力ですが、ほかにもAIを使った新機能があります。

 それが「モックアップ」です。こちらも強力な新機能なので合わせてご紹介します。「モックアップ」はその名の通り、モックアップを作成する機能です。

 「モックアップ」を利用するには、メニューバーの[ウインドウ]から[モックアップ(Beta)]を選択します。

イラレのAI新機能「モックアップ」も使ってみましょう

 もし、次のような画面が出たら案内に従ってインストールをしましょう。

インストールの案内画面

 インストールが完了したらベクター画像をクリックして選択します。そして[モックアップ]をクリックすると、一瞬でいろいろなモックアップが作成されます。

トートバッグやキーホルダーといったいろいろなモックアップがすぐに作れます

 画面上部からアパレルやパッケージなどのジャンルを選択すれば、ほかにも多くのモックアップが表示されます。

モックアップイメージは「アパレル」「ブランディンググラフィック」「デジタルデバイス」「パッケージ」のカテゴリから選べます

 また、プレビュー画面の下にあるアイコンをクリックすることで、モックアップを調整することも可能です。

モックアップを調整することもできます

 マグカップや箱などはAIが画像の面を判断して、移動させると面に沿わせるように位置を変えることができます。

AIが画像の面を認識しています
移動させると対象の面に沿わせるように位置を変えることができます。これはすごい!

 さらに事前に搭載された画像だけでなく、自分で準備した画像を使ってモックアップを作ることも可能です。

 ベクターの画像と自分で準備したモックアップ用の画像を両方選択して[モックアップ]をクリックすると、その画像にモックアップとして画像を貼り付けることができます。

モックアップ用の画像は自分で用意したものも使用できます
ご覧の通り、モックアップとして画像を貼り付けることができました

実はデスクトップ版だけじゃないAdobe Illustrator

 少し余談にはなりますが、Adobe Illustratorはデスクトップ版以外にも、iPad版やWeb版もあります。

 iPad版はなんとなく耳にしたり、使っていたりする方もいるのではないでしょうか。もちろんデスクトップ版のIllustratorと互換性があります。ただし、iPad版はデスクトップ版よりも機能が制限されているため、デスクトップ版にしかない機能は編集できません。それでもUIが最適化されて場所を選ばずに作業することができる点は大きいです。またデスクトップ版に比べて機能が制限されてはいるものの、iPad版の機能だけでも十分制作は可能です。

場所を選ばずに作業することができるiPad版Illustrator
デスクトップ版に比べて機能に制限はあるものの、iPad版の機能だけでも制作は十分可能ですよ

 illustrator Web版は、2021年にPhotoshop Web版と同時に発表されました。iPad版と同様、デスクトップ版に比べて機能は制限されるものの、Webブラウザー上でベクターの編集をすることができます。また、大きな特徴としてリンクでファイルを共有することで、Adobe Illustratorを持っていない人とも共同作業をすることができます。

Illustratorを持っていない人とも共同で作業できるillustrator Web版

可能性が広がるAdobe Illustrator

 最近では、Adobeの生成AIはWeb版のAdobe FireflyやPhotoshopに目が行きがちでしたが、Illustratorにもついに実装されました。ベクターで生成するといった実用的な機能で一気にIllustratorの生成AIにも注目が集まりました。またひとつ生成AIの使い方の幅が広がりそうです。

著者プロフィール:パパ

映像制作会社などを経て2017年フリーランスとして独立。現在はSNSを中心にPhotoshopの作品メイキング、チュートリアルを投稿している。複数の写真を使い1枚のアート作品を作るフォトマニュピレーションの動画は200万回再生を超え、現在YouTubeのチャンネル登録者数は約11万人、Twitterフォロワーは約6万5千人。また2022年10月からAdobe Community Evangelistとして 講師やセミナー、メディア出演、書籍執筆などを通しノンデザイナーやノンプロ向けに「作れる面白さ」を精力的に発信している。Twitterは@StudioT_ppp