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無料デザインツールの新鋭「Adobe Express」は試す価値あり! 生成AIの可能性は「Firefly Design Model」でさらに広がるか
AIが編集可能なデザインテンプレートを生成する新機能を試してみた
2023年11月14日 09:00
Adobeの商用利用可能な生成AI「Adobe Firefly」はその登場と同時にPhotoshopやIllustratorなどのアプリケーションに実装され、さまざまな強力な機能が使えるようになりました。
そして10月には「Adobe MAX 2023」において、Adobe Expressに新機能「Adobe Firefly Design Model」がベータ版として搭載されることが発表されました。
今回は、まだまだ新しいアプリケーションであるAdobe Expressの紹介と、新機能である「Adobe Firefly Design Model」を実際に使ってみての感想を交えながら解説していきます。
Adobe Expressとは?
「Adobe Express」は、ロゴやチラシといったコンテンツ制作に最低限必要な機能を搭載したデザインアプリです。PhotoshopやIllustratorに比べてできることは少ないですが、その分、ノンデザイナーやノンプロの人でも使いやすく簡単にデザインを楽しめるアプリとなっています。
特徴としてWeb上で操作できるほか、非常に多くのテンプレートが実装されており、好きなテンプレートを選んでから自分で各要素をカスタマイズすることで、手軽にコンテンツを作ることができます。さらに画像だけではなく動画を作ることも可能です。
また、Webアプリとモバイルアプリで利用できるスタータープランであれば、無料で使用回数に制限がないのもうれしいポイント。生成AIと組み合わせて非常に強力な機能も続々と搭載されている今、Adobeが力を入れているアプリケーションのひとつです。
Adobe Expressにできること
Adobe Expressはデザインアプリと一言でいってもできることが幅広いです。PhotoshopやIllustrator、PremiereProは狭く深い専門的なアプリケーションだとすると、Adobe Expressは広く浅く使い勝手のいいアプリケーションだと言えるでしょう。
テンプレートを使って簡単にデザインを作る
Adobe Expressの魅力のひとつであるテンプレートを使えば、簡単にデザインを作ることができます。Adobe Expressにアクセスすると、画面上部に「SNS」や「動画」「写真」「ドキュメント」などが表示されていて自分の作りたいテンプレートへのアクセスが簡単です。
「SNS」の中だけでもYouTubeのサムネイルやX(旧Twitter)、Facebook、Instagramの正方形投稿やストーリーズなど、おそらく「これがない!」と困ることはそうそうないと思います。
今回は試しに「Instagram」を選択して「Instagram投稿(正方形)」を作ります。
Instagram投稿のテンプレートを選ぶこともできますし、適したサイズの白紙を選択して最初から自分でデザインすることも可能です。今回はテンプレートを選んでみます。
すると画面左に膨大な数のテンプレートが表示されます。ここから選ぶか、検索窓から検索をかけて使いたいテンプレートを選びます。
あとは各要素を移動させたり、画像を差し替えたりしながら自分のデザインを作れば完成です。できた画像は右上からダウンロードすることができます。
動画もテンプレートを使えば簡単に作れてしまう
デザインもやりたいけど、ちょっとした動画も作れるようになりたい人も多いと思います。個人的にAdobe Expressでの動画制作は非常におススメです。もちろん、PremiereProやAfterEffectsのような複雑な編集はできませんが、ちょっとしたSNSに出すような動画であれば、Adobe Expressでも十分な機能がそろっています。
今回は試しに「Instagram リール」のテンプレートを選択して動画を制作してみます。
「Instagram リール」のテンプレートを選択すると編集画面に移動します。
画面左にテンプレートが表示されるので好きなものを選びます。すると画面下にはタイムライン、右にはレイヤーが現れます。
画像を差し替えたり、テキストを打ち換えたりして自分の動画をデザインしていきます。
できた動画は右上からダウンロードが可能です。映像に詳しくなくてもわかりやすいUIになっています。
これだけは知っておいてほしいクイックアクション
ここまでで、Adobe Expressで画像と動画を作れることがわかったと思いますが、それとは別にぜひ知っておいてほしいのがAdobe Expressの「クイックアクション」です。
「クイックアクション」は、モノ作りのちょっとした手間を解消してくれる機能です。種類も多くすべては紹介できませんが「背景を削除」「画像や動画のサイズを変更」「MP4に変換」「QRコードを生成」「PDFに変換」「GIFに変換」などなど、ちょっとした作業を担ってくれます。
これまでいろいろなサイトやアプリケーションを行ったり来たりしていたところが、Adobe Expressひとつで解決するのはとても便利です。
テンプレートを自動生成する新機能「Adobe Firefly Design Model」を試してみた
さて、ここからが今回のメイントピックです。
非常にシンプルで直感的なAdobe Expressですが、AI機能も日々のアップデートで実装されています。そんな中、冒頭でお伝えした通り、Adobe Expressに生成AIの新機能「Adobe Firefly Design Model」がベータ版として搭載されました。
生成AIと聞くと、テキストプロンプトから画像や文章を生成するイメージですが、「Adobe Firefly Design Model」はテキストからテンプレートを生成するという機能です。
ここでは「Adobe Firefly Design Model」を実際に試してみながら、基本的な操作方法や使ってみた感想を紹介していきます。
使い方は非常に簡単で、Adobe Expressにアクセスして[テキストからテンプレート生成]をクリックします。
テンプレートの種類を検索窓から選択してプロンプトを入力します。なお、現在はベータ版で、プロンプトは英語のみになります。
今回はポスターを選択し、「A sword and sorcery fantasy film to be screened in January 2023. The main character is a young man. Set in medieval Europe.」と入力しました。英語は機械翻訳で「2023年1月上映の剣と魔法のファンタジー映画。主役は若い男性。中世ヨーロッパが舞台。」という意味です。
生成が終わると4つのバリエーションが生成されます。
ここから[その他の結果を生成]をクリックすると、さらに別のバージョンが4つ生成されます。
加えて、イメージに近いものをひとつ選び[バリエーションを見る]をクリックすれば、似たバリエーションで新たに4つのテンプレートが生成されます。
生成されたテンプレートは、クリックすれば編集可能となり、画像やテキストなどを変更することができます。
使ってみた感想ですが、ノンデザイナー向けとしては使える場面がありそうな機能でした。ただ英語入力ということ、生成の精度にブレがあるので画像などを差し替えるのが前提となる場面も多そうな印象でした。
現状ではすでに多くのテンプレートがあるので、そこから作ってもいい気がします。とはいえ、「Adobe Firefly Design Model」もまだベータ版です。今後、精度があがってさまざまなテンプレートを生成できるようになれば、生成AIの新たな可能性が広がりそうです。
デザインが身近になるデザインソフト「Adobe Express」
ノンデザイナー向けのAdobe Expressは、デザインの知識がなくてもコンテンツ制作をすることができる機能や工夫が多くあります。AI機能もそのひとつで、今回ご紹介した「Adobe Firefly Design Model」以外にも、「テキストから画像生成」や「生成塗りつぶし」「テキスト効果」などがあります。公開からアップデートを重ねて非常に使いやすくなっているAdobe Express、一度試してみてはいかがでしょうか。
著者プロフィール:パパ
映像制作会社などを経て2017年フリーランスとして独立。現在はSNSを中心にPhotoshopの作品メイキング、チュートリアルを投稿している。複数の写真を使い1枚のアート作品を作るフォトマニュピレーションの動画は200万回再生を超え、現在YouTubeのチャンネル登録者数は約11万人、Twitterフォロワーは約6万5千人。また2022年10月からAdobe Community Evangelistとして 講師やセミナー、メディア出演、書籍執筆などを通しノンデザイナーやノンプロ向けに「作れる面白さ」を精力的に発信している。Twitterは@StudioT_ppp