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「Excel」「PowerPoint」もLaTeX記法に対応 ~「Microsoft 365」の数式対応が拡充
Windows/Mac版を中心にMathML貼り付け、数式オートコレクト、読み上げ対応などを導入
2025年9月2日 15:46
Windows/Mac版「Microsoft 365」アプリ(Word、Excel、PowerPoint)の開発チームは、数式のサポート強化に引き続き取り組んでいるとのこと。米Microsoftが8月29日(現地時間)に公式ブログ「Microsoft 365 Insider」で公開した記事で、その最近の成果が紹介されている。
デスクトップ版「Microsoft 365」アプリにおける「MathML」のサポート
ローカルアプリやWebページの多くは、数式を表示するためにXMLベースのマークアップ言語「MathML」を採用している。「Microsoft 365」アプリも当然この「MathML」をサポートしており、コピー&ペーストで簡単にドキュメントやスライドに挿入できる。
「MathML」をレンダリングするためにJavaScriptライブラリ「MathJax」を利用しているWebページの場合、数式を右クリックして[Copy to Clipboard]-[MathML Code]というメニュー項目を選択すると、クリップボードに「MathML」コードがコピーされる。あとは、「Word」や「Excel」、「PowerPoint」へ貼り付ければ、ファイルに数式を挿入できる。数式のプルダウンメニューを利用すれば、表示レイアウトの調整も可能。
「Visual Studio Code」などのアプリから「MathML」コードをコピー&ペーストする場合は、書式なし貼り付けがおすすめ。貼り付けたあとのメニューで[テキストのみを保持]を選択するか、専用のショートカットキー[Ctrl]+[Shift]+[V]を利用するとよい。
ちなみに、この方法は「Microsoft 365 Copilot」で数学に関する質問をしたときなどにも応用が可能だ。回答の数式をコピー&ペーストすれば、「Microsoft 365」ドキュメントに数式が挿入される。
対応環境は、以下の通り。
- Windows:ベータチャネルの「バージョン 2508」(Build 19220.20000)およびそれ以降。「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「Outlook」、「OneNote」で利用可能
- Mac:ベータチャネルの「バージョン 16.100」(Build 25081948)およびそれ以降。「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「OneNote」で利用可能
数式のオートコレクト
また、「Microsoft 365」ドキュメントへ数式を直接入力することもできる。
これにはオートコレクト機能が便利で、たとえば数式に「¥subset」と入力してスペースバーを押すと、包含記号(⊂)へ自動的に変換される。最近の改善では、このタイプの数学記号コードが、よく使うものを中心に100以上も追加されているとのこと。この機能はDAISYコンソーシアム(アクセシビリティに配慮した電子書籍の国際標準規格を策定する団体)や数学の専門家と緊密に連携しながら開発されている。

数式のオートコレクトに対応する環境は、以下の通り。
- Windows:ベータチャネルの「バージョン 2508」(Build 19220.20000)およびそれ以降。「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「Outlook」、「OneNote」で利用可能
- Mac:ベータチャネルの「バージョン 16.100」(Build 25081948)およびそれ以降。「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「OneNote」で利用可能
「Excel」「PowerPoint」が「LaTeX」に対応
数式を含む論文の組版の多くには「LaTeX」が用いられており、研究者の利便を考慮してWindows版「Word」や「Outlook」、Mac版「Word」では以前から「LaTeX」構文での数式入力をサポートしている。
これに加え、最近になってWindows/Mac版「Excel」および「PowerPoint」でも「LaTeX」構文がサポートされた。「LaTeX」に精通したユーザーであれば、使い慣れた書式を使って素早くスプレッドシートやスライドに数式を入力できる。
「LaTeX」に対応する「Excel」「PowerPoint」は、以下のバージョンに展開中。
- Windows:ベータチャネルの「バージョン 2508」(Build 19220.20000)およびそれ以降
- Mac:ベータチャネルの「バージョン 16.100」(Build 25070600)およびそれ以降
数式へのアクセシビリティ
さらに、「Microsoft 365」ドキュメントに挿入した数式はスクリーンリーダーにも対応している。Windows環境の場合、数式のテキストボックスや図形を選択した状態で[CapsLock]+[B]キーを押してテキストの先頭へ移動し、[CapsLock]+[C]キーで読み上げを開始するとよい。数式の読み上げは、Windows環境の場合「ナレーター」、Mac環境の場合「VoiceOver」が最適とされている。
数式の読み上げは、Windows版「Word」、「Excel」、「PowerPoint」、「Outlook」、「OneNote」で利用可能。「Microsoft Teams」ミーティングのためのプレゼンテーション補助機能「PowerPoint Live in Teams」でも利用できる。
Mac環境では、最新チャネル(プレビュー)の「バージョン 16.99」(Build 25062900)およびそれ以降で利用可能。「Excel」「PowerPoint」が対応している。
「MathML」のPDF対応
そのほかにも、「Word」、「Excel」、「PowerPoint」ではPDFエクスポートが「MathML」に対応している。PDFドキュメントのアクセシビリティ規格「PDF/UA」(ISO 14289)で既定された「Formula」要素に数式の読み上げが含まれるため、スクリーンリーダーでもアクセスが可能だ。「Word」ならば「MathML」コードがPDF/UAに含まれるため、他のアプリでエクスポートした場合よりも優れたエクスペリエンスが得られるという。
PDFの「MathML」対応は、Mac/iOS/Android/Web版「Word」で一般提供中。Windows版「Word」でも、「バージョン 2506」(Build 18925.20000)以降であれば対応しているとのこと。