レビュー

「CD2WAV32」が令和に復活。寿命間近かもしれないCDをリッピングしてみた

CDDBの生存を確認。「午後のこ~だ」との連携機能も

「CD2WAV32」のメイン画面

令和に復活したCDリッピングツールを試す

 CDで音楽を聴く人を見かけなくなった令和7年、CDリッピングツール「CD2WAV32」の最新版が公開された。

 CDリッピングツールとは、音楽CDのデータをPCなどで扱える音声ファイルに変換して保存するもの。購入したCDをリッピングし、MP3プレイヤーに入れて外で聴く、ということが20年ほど前には行われていた。その後は音楽配信サービスが中心になり、CDの販売数も減ったことで、リッピングツールは必要とされなくなっていった。

 そんな現代において、なぜか約20年経って「CD2WAV32」の最新版が登場した。本ソフトをご存知の方なら『なぜ今頃?』と首をかしげたことだろう。それが冒頭で紹介したニュースである。

 最新版の主な変更はWindows 11への対応で、新機能はWMAへのエンコードが可能になったことくらいだ。WMAも古くから使われている音声圧縮ファイルなので、特に目新しいということはない。

 筆者も本ソフトを前世紀から使用した記憶があり、懐かしさを覚えながらインストールしてみたのだが、画面を見ても当時の記憶は全くなく、本当に使っていたのか自分でも疑わしく感じる(間違いなく使ってはいた)。もちろん使い方もさっぱり覚えていなかった。

 だが、本ソフトには今だからこそ価値がある。CDの耐用年数にはいろいろ説があるのだが、30年程度という話が多い。生産品質や保存状態によっても変化するので、必ずしも30年でダメになるわけではないが、前世紀に発売されたCDが聴けなくなってもおかしくない状況にあるのは確かだ。

 皆様の自宅にある思い出のCDが、ダメになる前にリッピングしておくのはいかがだろうか。筆者が本ソフトのヘルプを読みつつ試してみた手順をご紹介しよう。先に言っておくと、そう難しい作業ではない。

使い方はとても簡単。CDDBもまだ使える

 筆者が今回使用したCDドライブは、LITE-ON製のポータブルDVDマルチドライブ「eTAU108-28」。おそらく15年くらい前に購入したもので、内蔵型光学ドライブの使用頻度が落ちて廃棄した後に、念のため購入した安価な商品だ。

筆者所有のポータブルDVDマルチドライブ。もはや年に1回も使わないが、こういう時だけ出す

 「CD2WAV32」を起動してみると、「eTAU108-28」を正しく認識できていた。音楽CDを挿入すると、ウィンドウの右下のエリアにCDの内容が表示された。

 テストするなら古いCDの方がいいだろうということで、筆者所有のCDの中では比較的古い、1990年発売の『ファイナルファンタジーIII 悠久の風伝説』を使用。ほぼ発売日に購入したはずなので、丸35年が経過している。

今回のテストに使う「ファイナルファンタジーIII 悠久の風伝説」。サントラだと思って買ったらアレンジ版だった、という記憶がある

 右下のエリアに表示されている中からリッピングしたいトラックを選択し(全て選択も可能)、右クリックして[取り込み開始]を選ぶ。ファイルの出力先を尋ねられるので選択する。

CDのトラックを全て選択して右クリックし、[取り込み開始]

 この状態では出力ファイルの名前が付いていないので、ファイル名の入力を促される。1つずつ入力してもいいし、面倒なら先の右クリックの段階で[ベースファイル名の設定]を選ぶと、入力した名前の後ろにトラック番号を順に振ってくれる。

ファイル名を入力する
1つ1つ入力するのが手間なら、[ベースファイル名の設定]で連番のファイル名にしてくれる

 ファイル名を指定した状態で[取り込み開始]を選べば、リッピングが開始される。作業が終わるまで待てば、音楽ファイルが生成されている。これで基本的な作業は終了だ。今回は無事にノーエラーで読み出しが完了した。

リッピング開始。終わるまで待つだけ
筆者のCDは無事ノーエラーで完了した

 音楽ファイルは初期設定ではWAVEになるが、WMAやMP3に変えたい場合は、上部のアイコンから「WAVE」をクリック。WMA、MP3と順に変わっていく。

 [設定]-[設定の変更]-[出力ファイル]と進み、[出力ファイルの種類]でも選択できる。MP3ではWindows内蔵エンコーダのほか、外部圧縮プログラムも使用可能。さらにMP3変換ソフト「午後のこ~だ」をインストールした環境では連携動作もできる。これまた当時の定番ソフトで懐かしい。

[出力ファイル]の設定では、エンコーダやビットレートなども選べる

 WAVEは無圧縮なのでファイルサイズは大きくなるものの、CD1枚あたり650~700MB程度。1TBに達するためには約1,500枚ものCDをリッピングする必要がある。数TBのHDDがある現代ならWAVEで保存しておくのもいいだろう。

WAVEでリッピング完了の図。今回のファイルサイズは約543MB

 ファイル名の設定については、音楽CDのデータベース「CDDB」を使うと便利。上部のアイコンから[CDDB]を選択し、開いた[CDDB情報]ウィンドウで[受信]アイコンをクリックすると、CDの情報を自動で検索してダウンロードできる。さらに[ファイル名に設定]アイコンをクリックすれば、トラック情報がファイル名として指定される。

『ファイナルファンタジーIII 悠久の風伝説』の情報もCDDBで見つかった。ただし発売年のデータが違うようだ。ファイル名はこのデータをもとに修正もできる

 CDDBについては、CDDBサーバー「freeDB.org」は5年前に閉鎖されており、現在は「freedb 日本語(https://freedbtest.dyndns.org/)」のデータが呼び出される。なお本ソフトのマニュアルによると、Revision 4.00では登録処理が禁止されているので注意が必要だ。

CDDBサーバーの設定もあるが、事実上「freedb 日本語」のみ使える状態

 他にも細かい使い方の違いや機能はあるのだが、単にリッピングするだけならこの手順で十分だ。もし取り込みが上手くいかない場合は、データの読み出し時に補正や検証をかける機能もあるので、試してみるといいだろう。

CDDBを使うと、ファイル名をトラック名にできる(画像は同じCDを2回リッピングした状態)
設定を開くと、読み出しに関する細かい項目が用意されている。ヘルプを見ながら好みの設定を選ぶといい

 筆者は最後まで当時の記憶がよみがえることはなかったが、リッピングツールとしては今なお手軽なものだ。手持ちのCDをリッピングするなら、Windows 11に対応してくれた今がチャンス。こんなきっかけでもなければ、なかなか重い腰は上がらないだろう……。