Blender ウォッチング
「Blender」ユーザーのお祭り「Blender Conferences」レポート
名物のBlender Foundation最高責任者Ton Roosendaal氏がGPLに関する誤解について熱弁
2023年11月2日 16:12
本連載では、無料の高機能3DCG統合環境「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
今回は、10月26日~28日に去年に引き続き開催された「Blender Conferences」にて行われました「keynote」(基調演説)についてご紹介したいと思います。
Blender Conferenceとは
「Blender Conferences」とは、毎年オランダで行われる催しで、「Blender」ユーザーが一堂に会し、様々なパネルディスカッションやワークショップに参加します。
その様子は動画として、YouTubeのBlenderチャンネルにて配信されており、下記プレイリストにてまとめられています。
Ton Roosendaal氏について
今回の基調演説を行う「Ton Roosendaal」氏は、オリジナルの「Blender」の作者であり、現在の開発元の「Blender Foundation」の最高責任者です。
GPLに関する誤解の払拭
(2:24)
Ton氏は参加者への挨拶の後、最近は「Blender」のユーザーが大幅に増えており、映画業界やゲーム産業のみならず、ドイツでは自動車企業に使用されるなど、様々な国の様々な企業・用途で使用されるようになったと語ります。
しかし、あることが原因で法務部の承認が得られないケースが多々あるとのこと。それは「GNU Public Licence」(GPL)。
「Blender」がソースコードにGPLを採用していることから、いまだに『「Blender」を使用するとライセンス汚染がおきる』という誤解があるようで、問い合わせも多いようです。
Ton氏はそんな状況にウンザリしたのか、今回の基調演説でいくつかの質問をあげ、それぞれに箱を使って解説を始めました(上図)。
……しかし、これがなんと 約18分 と非常に長いため、本記事ではここはバッサリ割愛させていただきました。
ただ、代表的な上記の誤解については同じように不安を持つ方が多いと思われるため、簡単に要約すると、
「Blender」の出力物(レンダリング後の画像、動画、データ)にはGPLは適用されない
と理解しておけばOKです。ただし、3Dモデルや画像テクスチャなど「他の人が作成したデータ」(アセット)を利用する場合は、そのデータのライセンスの影響を受けますので、ご注意を。
2022年の活動報告
(18:10)
一気に飛んで18分10秒あたりから、過去一年間の活動の報告になります。
収入の内訳の報告
まずは一昨年と去年の収入の内訳です。企業の援助と個人の支援の比率が変わっていることがわかります。これが後述の「December: donation campaign month(寄付キャンペーン月間)」につながります。
この収入のおかげで、2022年は開発者・アーティスト50名と契約できたとのこと。
開発サイトの一新
「Blender」の開発サイト(https://projects.blender.org)の管理ソフトウェアが、Gitea」に移行しました。現在バージョン管理システムのスタンダードとなりつつある「Git」を利用した管理になり、新規参入者による開発の活発化が期待できます。
オープンムービーとドキュメンタリー
今年9月に、オープンムービーの「Pet Project: Wing」が公開されています。
また、今年の初めに始まった、Blender Foundationの裏側のドキュメンタリーシリーズ「BlenderHeads」も紹介しています。
現在進行中のプロジェクト
現在作業中のプロジェクトのリストです。すでにGPU(リアルタイム)コンポジターはビューポートコンポジターの名前で3.5で実装)されており、他にも今月リリース予定の4.0にて実装されている物があります。
今後の予定
(22:10)
Everything Nodesプロジェクトの一部である「シミュレーションノード」や、「ノードによるリアルタイム」のコントロール強化、他にもアニメーション機能を強化する「Animation 2025プロジェクト」、「Blender Studio のパイプラインツール」、新作短編アニメーションの「Project Gold」、来年4月に行われる「Blender Conference LA」について紹介しています。
他にも、まだ具体的な情報はありませんでしたが、12月には「December: donation campaign month(寄付キャンペーン月間)」を予定、前回に発表されていた、10年後の「Blender」の戦略を考えるプロジェクト「Blender LAB」にも触れていました。
終わりに
本記事では文字数の都合もあり、最初の部分以外にも割愛しています。もう少し詳しくて長い物は、Blender.jpにて近日公開予定ですので、よろしければそちらでご覧ください。
ではまた。