石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

巨大甲殻類たちの超絶プロレス「カニノケンカ・ニ」の体験版でズワイガニを育ててみた

色物だと思わせておいて、実は物理演算によるハードなアクション

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「カニノケンカ・ニ」のタイトル画面

「Fight Crab」の名前で既に勝利

 カニやエビなどの甲殻類が戦うアクションゲーム「カニノケンカ・ニ」が、2月13日に早期アクセスを開始する。これに先駆け、体験版の配信が始まっている。

 甲殻類が戦うという題材や、タイトルの英語表記である「Fight Crab」のダジャレ感からして、色物感がすごい本作。そこは半分当たり、半分ハズレという感じ。早速、体験版を見ていこう。

カニノケンカ・ニ Fight Crab 2 アーリーアクセス開始発表トレーラー

俺はこの赤いズワイガニを選ぶぜ

 本作では人間が巨大な甲殻類に乗って戦う。操作するのは基本的には甲殻類なのだが、人間が降りて別行動もできる。人間と甲殻類はどちらも無敵で、人間が巨大な甲殻類の攻撃を受けても死亡するということはない。

 ではどう勝敗を決めるのかというと、相手の甲殻類をひっくり返して3カウントを取れば勝ち。つまり本作は甲殻類を題材にしたプロレスゲームである。基本的には。

 ゲームをスタートすると、ガイドキャラクターの潮音マキが説明を始める。その間、プレイヤーキャラクターは水に浸かった状態で謎のダンスを踊り始める。このゲームの方向性がシリアスでないことはここで理解できる。

かわいいガイドキャラと謎のダンスを踊るプレイヤーキャラクター

 ゲームモードは、オンライン対応の対戦モードや、操作練習用のトレーニングモード、特定のミッション達成を目指すチャレンジ、そして自分の甲殻類を育てていくキャリアモードがある。まずはキャリアモードをプレイしていく。

 キャリアモードは、3年間という期限の間に甲殻類を鍛えていくもので、敵とのバトルを繰り広げる中で成長させていく。育てる甲殻類はケガニやロブスターなどが10種類並んでいるのだが、どう違うのかさっぱりわからないので、今回はズワイガニを選んだ。「ズワイガニを選んだ」と文字にする違和感がすごい。色も選べたので赤にしておいたが、これは茹で上がった色だろうか?

好みの甲殻類を選択できる
ズワイガニは平均的な能力らしい

 甲殻類は巨大なハサミでもって敵と戦うのかと思いきや、剣や槍など武器を持って戦う。素手(素ハサミ?)でも戦えるようだが、武器を持つ方が強そうだ。

 攻撃は、マウスの左右クリックがハサミの左右に対応しており、クリックで攻撃する。[Shift]キーで防御、スペースキーでジャンプ。マウスカーソルを動かした方向にハサミも動く。操作方法は他にもいろいろあるのだが、とりあえず戦ってみよう。

装備セットも選べる。ズワイガニに向いた装備はどれだろうか……

甲殻類は思うようには動かない

 敵の甲殻類に攻撃するとダメージを与えられる。ダメージは%で書かれた数字で示され、ダメージに応じて増えていく。ダメージを与え続ければ倒せるわけではなく、ダメージが蓄積されるほど裏返りやすくなるようだ。また裏返ったとしても、パンチを繰り出すことで起き上がり、再び戦える。

攻撃を当てると、%表示された数字が増えていく。どうやらダメージ蓄積量らしい

 とにかく敵に攻撃を当ててダメージを当てて入ればそのうちひっくり返せるわけだが、攻撃するのが想像以上に難しい。近づいて左右クリックでいいのだが、格闘ゲームのようにクリックした瞬間に素早く攻撃を繰り出すという感じではない。動きがかなりゆっくりで、思ったところに攻撃を当てられない。重い武器を操っている時は特に難しい。

持っている武器を有効に使えているのかどうかがわからない

 本作は物理演算を積極的に使っており、ハサミや武器の挙動、敵との接触など、さまざまな場面がリアルな挙動になっている。ハサミで挟んだ武器も、持ち上げて振り下ろすまでに時間がかかるし、体全体のバランスによっては武器を振る感じすらない時もある。

 まずはマウスカーソルを上に動かし、ハサミを上に持ち上げてから攻撃すると、そこそこ振る感覚になるのだが、今度は体ごと押されてひっくり返りやすいようにも思う。それならガードを固めてから少しずつ反撃して蓄積ダメージを狙っていくのがいいのかもしれない。あるいは体を振り回すようにして、慣性も使って武器を当てる方法もあるのか?

どう戦えばいいのかわからないまま戦っている

 戦いが始まる前までは色物のにおいが漂っていたのに、戦い始めればいきなり物理演算の挙動に振り回されて思うように操作できず、真面目に攻略法を考えさせられる。ここまで思ったように動かせないアクションゲームは他にないというくらい難しいのだが、それでも近寄ってガチャガチャやっていると、いつの間にか相手をひっくり返せていたりもする。

ダメージでは勝っていたものの、のしかかられて起き上がれなくなった模様。物理演算がよく効いている

 難しいようでも何とかなる、このギャップは本作の魅力になっていると感じる。やり込めばまだまだうまくなる余地があるように感じるし、わからないなりにやっていても怪獣同士の激闘を見ているような迫力もある。さらに戦闘中には実況音声もあり、プロレス感をより高めてくれている。見ている分にはとても馬鹿馬鹿しくて面白い。

巨大なハンマーを脳天から振り下ろす。うまくいくと気持ちよく、見た目はとってもシュール

 体験版では3年の育成期間のうちの1年目しか遊べないのだが、どんなゲームかということは十分に味わえる。この説明で本作が気に入った方はぜひ一度お試しいただきたい。操作を全部覚えようとすると、チュートリアルの段階で心が折れてしまう人も多いと思うので、最初は「近寄って殴ればいい」くらいのつもりで遊ぶのがおすすめだ。

 ちなみに別のゲームモードであるチャレンジを選ぶと、車に乗ったカニの群れが轢き殺す勢いで突っ込んでくるという無茶苦茶な内容も出てくる。もはや世界観がさっぱりわからないのだが、深く考えるのはアクション性だけにして、他はゲラゲラ笑いながら見ていく作品という理解でいいと思う。

これは「カニノケンカ」ではなく世紀末救世主伝説か何かなのでは?
【今回使用したPC】
マウスコンピューターG-Tune E4
スペックはCPUがCore i7-12650H、GPUがGeForce RTX 4060(GDDR6 8GB)、メモリが16GB DDR4-3200、ストレージがSSD 500GB(M.2 NVMe PCIe 4.0 x4)、ディスプレイが14型非光沢液晶(1,920×1,080ドット、144Hz)、OSがWindows 11 Home。重量は約1.8kgで、価格は199,800円

 なお、今回本作をプレイするにあたり、GeForce RTX 4060を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「G-Tune E4」を使用した。本作の設定でクオリティを最も高い「高」、フレームレート上限を120Hzにし、解像度をフルHDにしたところ、高いフレームレートを維持してプレイできた。3Dグラフィックスと物理演算を使用した作品だが、比較的動作は軽めだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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