石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
いきなり発売された「無双アビス」、無双×ローグライトの面白さとは?
やられるたびに強くなる繰り返しプレイ前提の2Dアクション
2025年2月20日 16:45
いきなり安価で登場した「無双」新シリーズ
コーエーテクモゲームスが2月13日、「無双アビス」というゲームを発表した、と同時に発売した。
ゲームソフトは発売前に情報を出すのが一般的で、昔は問屋やゲームショップが何本発注するかを決めるために事前情報は必要だった。本作はダウンロード販売のみなので、発表即発売というAppleみたいな売り方もできるのはわかる。それでも先に配信日を明かしておくに越したことはないわけで、あえての話題作りのためかもしれないが、思い切ったやり方だ。
突如売り出された本作だが、ジャンルはローグライト無双アクションとある。ローグライトという名前が聞きなれない方もいらっしゃるかもしれないが、これがまた聞き慣れた筆者ですら厄介な単語なのだ。これはまた次回解説するとして(突然の大ニュースでも入らない限りは)、今回は本作がどんなゲームかを素直に見ていきたい。
PC版はSteamで販売されており、価格はコーエープライス……と思いきや2,970円と控え目。「無双」といえば、歴史シミュレーションシリーズと並んで同社を代表するアクションシリーズだが、それが安価に出されたところからも本作の立ち位置を読み取れる。
2Dベースのアクションゲームになった
本作の主人公は、地獄の閻魔大王に呼び出された英傑達。地獄が強大な力を持つゴウマに支配されたため、閻魔大王が英傑の力を借りてゴウマを討伐を目指す。英傑は「真・三國無双」および「戦国無双」シリーズに登場するキャラクター達。2つの世界のキャラクターが入り混じって、地獄でゴウマ一派と戦う、という話だ。
ゲームは3D空間で戦う「無双」シリーズとは違い、俯瞰視点で戦う2D操作となる。地獄にいる多数の敵を、英傑達が超人的な力でまとめて吹っ飛ばす。見た目こそ違えど、アクションの方向性は「無双」シリーズの伝統にのっとったものだ。
操作もシリーズに従い、通常攻撃とチャージ攻撃の組み合わせで異なる連携技を出せる。このほかに高速に移動する回避と、敵を倒して貯められる無双ゲージを消費する無敵の大技「無双乱舞」が使える。
これらを駆使して敵を倒し、地獄の奥へと進んでいく。基本的なシステムは「無双」の流れをくんだ2Dアクションゲームである。
ゲーム進行はステージクリア型で、何匹の敵を倒すなどのミッションを達成すれば次のステージへ進める。特定のステージまで進むとボスが登場する。
何度もやられて、繰り返しプレイして強くなっていく
本作のオリジナル要素としては、英傑を召喚して補助役にできること。各ステージのクリア報酬として、自分が操作している以外の英傑と盟約を結べる。
盟約を結んだ英傑は、連続攻撃の後で召喚し、それぞれの能力に応じた強力な攻撃を1回だけ発動する。つまり連続攻撃の最後に1つ、新たな攻撃が追加されるという仕組みだ。
召喚した英傑は攻撃を発動し終えると消えてしまい、一定時間が経過するまでは再度召喚できない(クールタイムがある)。英傑は6人までセットでき、7人以上に増えた場合はその中から6人を選ぶことになる。
英傑には「印」という能力が設定されており、盟約を結ぶとその英傑の印を取り込んで、操作キャラクターを強化できる。ステージをクリアして盟約を結ぶ英傑の数が増えるほど、キャラクターが成長していくという仕組みだ。
また英傑には勢力や特性が設定されており、個別の条件を満たすことで召喚攻撃を強化できる。例えば劉備は、関羽、張飛を同時に盟約に加えることで、3人とも召喚時の攻撃力が倍増する。
こうしてゲームを進めていくうち、どこかで倒されてしまうこともある。ライフが0になったら、その時点で終了。英傑選択画面へと戻る。次は再び最初からやり直しとなり、盟約を結んだ英傑もリセットされる。
ただし、持ち帰れるものもいくつかある。最も重要なのが「業蛍火」という魂のようなもので、プレイ中に集めることで、新たな英傑と「魂結」できる。その英傑はその後、プレイヤーキャラクターとして選択できるとともに、盟約を結んで召喚できる補助英傑としても登場するようになる。
また「魂結」すると、全英傑の攻撃力や体力といったステータスの一部が僅かに底上げされる。英傑1人と「魂結」するだけでは微々たるものだが、全部で100人いる英傑を「魂結」していくことで、トータルの能力はかなり上がっていく。
つまり本作は、ゴウマ討伐のために地獄の奥へ進み、途中でやられたら新たな英傑をアンロックして強化する……という繰り返しで進んでいく作品だ。やられたら最初からとはいえ、少しずつ強化された状態で何度でもやり直せる。このシステムがローグライトと表現されているのだろう。
「無双」の面白さを信じて作られたローグライト
他にもシステムの細かい解説をしたいところだが、説明書にならないよう今回は省く。大事なことは、本作は何度も挑戦して少しずつ強くなっていく、という点だ。
筆者は始めの5プレイほどは、最初のボスに撃退されるのを繰り返し、ゴウマを討伐するには10時間近くかかった。だが苦手ならばもっとかかる方もいると思う。敵の攻撃は紫色で発動予告が出るので、そこから素早く移動するか、反撃して攻撃させないようにするのだが、敵が増えるとあちこち発動予告だらけになり判断が難しい。
こういったアクションが苦手な方でも、ひたすら挑み続けていれば、能力がどんどん上がって戦いやすくなっていく。キャラクターを成長させたり、新たな英傑をコレクションしていくことに楽しさを見いだせれば、それだけで本作を遊び続けられる。何度も挑戦することが楽しいと思えるように作られている。
しかし、本作の柱はそこではないと筆者は思う。本作はあくまでも「無双」シリーズであり、大量の敵を薙ぎ払う爽快感という、シリーズならではのアクションの楽しさを信じているように見える。
ゲームが終盤に近づくにつれ、敵は数が増え、強くなっていく。しかしこちらも強化された英傑を召喚し、画面を埋め尽くさんばかりの敵の群れを吹き飛ばしていく。見た目は大味なのだが、緻密な移動による回避と、適切なタイミングの攻撃をメリハリをつけてやっていく必要がある。この感覚は確かに「無双」のアクション性だ。
面白さとしてある意味完成されている「無双」のアクションを使って、もっと別の遊びが作れないだろうか、と考えた結果、ローグライトと言われるものと相性が良さそうだ……と考えて作られたのではないかと思う。これはあくまで筆者の想像だが、そういうゲームだと思ってもらえれば、本作の魅力が伝わるはずだ。
ただ、不満点も少しある。ステージ進行が1パターンしかなく、4つのエリアに分けられた地獄を、必ず最初からやり直していく。各エリアの最後に待ち受けるボスも毎度同じで、遊びとしてはどうにも単調になってしまう。クリア後には難易度を上げて挑戦できるようになるが、やっていることは大して変わらない。
またアクションも、2つの攻撃を組み合わせた連続攻撃と、その後の英傑召喚という攻撃パターンは全キャラクターで共通だ。他には回避と無双乱舞、超必殺技的な一斉召喚があるが、アクションとしてはだいたい同じパターンの繰り返しになる。ボスも同じなのでそうならざるを得ない。
では本作をどう楽しめばいいかと言えば、100人いる英傑を使い分けていくこと。それぞれ基本能力や攻撃アクションは異なるのでプレイ感が変わる。また英傑召喚も、どの英傑と盟約を結ぶかで能力が大きく変わる。カードゲームのデッキを少しずつ組んでいくような楽しさもある。
そしてその基礎になるのが、やはり「無双」としてのアクション性だ。このアクションは面白いんだと信じていなければ、このゲームデザインはできなかっただろう。その潔い割り切りからは、シリーズの広がりを持たせたいという意図も感じられる。
本作は発売後も武将を追加するなどのアップデートを予定しているようだ。システム周りにどこまで改善を施せるのかはわからないが、「無双」シリーズの新たな魅力を引き出すコンテンツとして、この先もがんばって欲しいと願う。
【追加アップデート第1弾 2/25配信決定】#三國無双シリーズより「晋」の英傑が追加される
— 『無双アビス』公式 (@musou_abyss)February 18, 2025
無料アップデートの配信日が2/25(火)に決定!
あわせて「晋」の英傑の懐かしの衣装など有料DLCも配信!
好きな英傑で地獄の底を目指そう!#無双アビスpic.twitter.com/yWzrTa4Bif
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。