石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

ゲーム画面が見づらい……でも治す方法もない? 40代の筆者に起きた目の老化問題4例

眼科で定期検診を受けよう!

ゲーマーの目の老化は早い?

40代にして目の老化が始まる

 半年ほど前、老後のゲーム趣味について考えた記事を掲載したところ、想像以上に多くの反響をいただいた。問題提起であり、解決方法を示さなかった(そもそも解決方法がない問題も多いのだが)ことで、思ったよりダメージを受けた方が多かったようで……。

 今回はこれに続いてというわけではないが、高齢のゲーマーに最も大きな障害を生む器官であろう、目についてお話しする。内容は完全にノンフィクション。48歳の筆者が今まさに悩まされている、目の老化についてお伝えしたい。

 解決方法や回避方法はない話が多く、それでいて遅かれ早かれ、ほとんどの方がいずれ経験することになる。知識として持っておくと有意義だと思うのでお伝えするが、覚悟してご覧いただきたい。

もともと強度近視

 筆者はもともと目が悪い。強度近視と少々の乱視・斜視があり、視力はおそらく0.02か0.03くらい。中学生の時の視力検査で、先生が棒で指し示した際、『棒の先が見えません』と答えた(強度近視あるあるネタ)。なお0.1も真円に見えたので、最初から検査の意味はなかった。

 これは近視であって、老化とは違う。この状態で眼鏡やコンタクトレンズをして、長年ゲームを楽しんできたが、あまりデメリットを感じたことはない。強いて言えばVRゲームの時に眼鏡が邪魔になるくらい。

 40代までは特に問題なく過ごしてきたのだが、48歳現在、新たに4つの症状に襲われている。いずれも老化が原因となり得るものだが、近視も影響したと思われるものもある。

第1の症状、ドライアイ

 1つ目はドライアイ。涙の量が減ったり、質が変わったりして、涙が目の表面をうまく覆えなくなる症状だ。

 ドライアイというと、目が乾くだけだと思われがちだが、まばたきして治るというものではない。涙が目の表面を覆えなくなると、目の表面が傷つきやすくなる。目のかすみや痛みも出るし、そのせいで逆に涙が出ることもある。もちろん涙が出ても改善はしない。

 原因は、ゲーム画面をずっと見つめていたライフスタイルにもあるようで、以前から症状はあったが、最近悪化した。加齢により涙の量が減ったり、質が悪くなったりすることもあるという。また加齢によって目の表面にある結膜にしわができることがあり(筆者はこれもある)、涙の流れを妨げてドライアイにつながることもあるという。

 目が乾いたなら目薬を点せばいいと思い、市販のビタミン目薬を点しても、効果は一時的だ。今のところ最も具合がいいのは、眼科にかかり粘性の高い処方薬を出してもらうこと。以前は「ヒアレイン」という目薬を出されたが、筆者にはあまり効果がなく、今は「ジクアス」という目薬をもらっている。こちらはかなり効果を感じる。

 また目に傷がついて炎症を起こすこともたびたびあるので、炎症止めの目薬をもらうこともある。筆者は市販されている1回使い切りタイプの抗炎症点眼薬を常備して、目の調子が悪くなったら使い、数日経っても改善しない時は眼科にかかるようにしている。

普段はビタミン目薬と「ジクアス」を併用。目に異常がある時は使い切りタイプの抗炎症点眼薬を足す。他にもアレルギー用などいくつかある

第2の症状、老眼

 2つ目は老眼。医学用語では老視という。目のピント調節機能が衰えることで、近くのものに焦点を合わせにくくなる。40代くらいから症状が出始めるそうで、筆者は少し症状を自覚し始めた。

 近視の人は老眼になりにくいという話を聞いたこともあったのだが、実際はそうでもないらしい。筆者の場合、眼鏡をかけて近くを見るのが辛くなってきて、見ようとしてもぼやけてしまう。眼鏡を外すと見やすくなるので、これも立派な老眼だ。

 ゲームで老眼が問題になるのは、まずはスマートフォンやポータブルゲーム機だろう。PCゲームを広い画面でプレイする場合にはさほど問題にはならないが、最近はPCゲームを遊びながら情報検索はスマホでやる方が楽だったりして、影響がないとは言いづらい。

 治療方法はないため、対策は老眼鏡。筆者の場合は遠近両用眼鏡が便利そうだ。最近は高性能化しており、見え方もとても自然になったと聞くが、強度近視と合わさると薄型レンズが必要になり、値段もさらに高くなる。筆者の眼鏡は近視用でさえ1セット10万円ほどするのだが……。

筆者が原稿書きで使っている屋内用の眼鏡。レンズのサイズが小さいフレームと、最も薄いレンズを選ぶことで、厚さと重さを軽減している。ただ遠近両用には向かない形かもしれない

第3の症状、後部硝子体剥離

 3つ目は、後部硝子体剥離。筆者も自分がかかってから初めて聞いた名前なのだが、目の老化現象としてはとてもありふれたものだそうだ。

 眼球の中には、硝子体と呼ばれる透明なゼリー状のかたまりが詰まっている。この硝子体が老化によって液化し、縮んで、眼球の後方にある網膜との接点から剥がれていく。これだけ聞くと大事のように思えるが、硝子体が網膜から剥がれていたこと自体は、見え方にはほとんど影響しない。これによって視力が落ちるというものではないという。

 筆者は1年ほど前に左目で発症し、そして先日、右目も発症した。40代ではまだ稀だそうだが、強度近視の人は早くなりやすい。平均では60代が多く、70代では7割以上の人が発症するという。遅かれ早かれ多くの人が発症するのだが、近視の人は眼球が前後に長く変形しており、後部硝子体剥離を発症しやすいそうだ。

 では発症するとどうなるのか。硝子体と網膜がくっついていた部分には、模様のようなものがついているらしく、目の中に浮かぶような感じでぼんやりと見える。これは飛蚊症と呼ばれ、視界にぼんやりしたゴミのようなものがチラチラと見える。

 この飛蚊症は人によっても度合いが違い、1年ほどすると慣れるという話も聞くが、消えるわけではない。剥離が進行することで飛蚊症が見えにくくなることもあるそうだが、筆者は1年経ってもはっきり見えたままだ。しかも右目は飛蚊症と呼ぶにはかなり巨大なかたまりが見え、視界の大半を塞いでぼやっとすることがある。

 片目がぼやけるとピントを合わせにくくなり、見づらいだけでなく、集中して見るのが非常に疲れる。筆者の場合、仕事で撮影した写真を選定する時が一番辛く、写真の微妙なピントのズレを、自分の視界のぼやけと脳が勘違いするのか、画面にピントを合わせられなくなってしまう。

 治療法はなく、予防法もない。剥がれた硝子体を戻すことはできないそうだ。飛蚊症に関しては、保険適用外のレーザー治療があるそうだが、綺麗に消える保証はなく、治療費も高額だ。

 発症に気づくのは急に増えた飛蚊症であることが多いが、筆者の場合はそれに加え、視界の端が光る光視症という症状もあった。剥がれた硝子体が網膜を引っ張り、光として見えるものだそうだ。また硝子体が網膜から剥がれる際に、網膜に穴が開く網膜裂孔、さらに網膜自体がはがれる網膜剥離等を起こすこともある。そうすると視界が欠ける症状が出て、失明につながる。飛蚊症が急に増えたら、必ず眼科医に診てもらって欲しい。

飛蚊症のイメージ。筆者は小さい頃から飛蚊症持ちだが、後部硝子体剥離の飛蚊症はより濃く見え、かたまりのようなサイズのものも多い

第4の症状、白内障

 4つ目は、白内障だ。これは名前を知っている人も多いと思う。目の中でレンズの役割をする水晶体が、加齢などによって濁ってしまい、視界を妨げるというもの。これも40代で発症するのはそう多くないが、50代では半数近くが発症するというデータもあり、80代ではほぼ100%症状が現れるという。

 筆者の場合、後部硝子体剥離の診察を受ける中で、『白内障も進んでいる』と言われ、『初耳なんですが!?』と驚いた。ただ、最近気になっていた症状として、夜の運転で対向車のライトが妙にまぶしく感じられたり、テレビの明るさが以前より明るくなったように感じられたりした。光をまぶしく感じるのは白内障の典型的な症状だそうだ。

 放っておくと濁りはどんどん酷くなり、視力が低下していく。現在は白内障の進行を遅らせる点眼薬があるそうだが、濁りを取るわけではなく、悪くなる一方なのは変わりない。

 ただ白内障は、今回の症例の中では唯一、根本的な治療が可能だ。濁った水晶体を取り、代わりに人工レンズを入れる手術ができる。手術もそう難しいものではなく、数十分で終わり、日帰りできる。ただし費用は保険適用で3割負担でも、片目で5万円程度はかかる。

 予防方法は、禁煙、糖尿病の回避に加え、紫外線からの保護やサプリメントも効果があると言われている。筆者はブルーライトカットの眼鏡を長らく使っていて、ルテインやゼアキサンチンのサプリも飲んでいる。タバコも吸わず生活習慣病もないが、なる時はなる、ということだ。

 白内障も悪化すると視界がぼやけたりするそうで、後部硝子体剥離やドライアイの症状と重なって、ぼやけが加速しそうだ。しかもそれを放置すると、緑内障など別の重大疾患に気づきにくくなる危険性もある。

治らない症状は多くとも、定期的な検診が重要

 これらを発症して現在どうなったかというと、目は常にしょぼしょぼしていて開けづらく、明るい場所では巨大な飛蚊症が漂う。モニターの明るさを下げたが、白背景はまぶしくて見づらい。3~4種類の目薬をそれぞれ1日数回点して現状維持しているが、根本治療は何もできることがない。正直なところ、原稿を書くのも楽ではなく、タッチタイピングができて良かったと思うくらいだ。

 これでゲームができるかというと、不快ではあるができる。対戦ゲームでは集中力を切らす原因にもなりストレスが溜まりがちだ。後部硝子体剥離が進行して、巨大な飛蚊症が見えづらくなってくれるといいのだが、もっとひどくなる可能性もある。

 読者様には、目の定期検診を受けよう、とお伝えしたい。何の自覚症状もなくとも、眼科に行って『検診したい』と言えば、ひととおりのことを調べてくれる。目に問題があり、視野が欠けてきていても、片目の症状は意外と気づかないらしい。眼科医は問題があればしっかり見つけてくれるので、早期発見につながる。

 以降は1年ごとくらいで定期検診を受けるといい。花粉症の方であれば、市販されていない最新の点眼薬や飲み薬も処方してもらえるし、今だとインフルエンザの予防接種をやっている眼科もある。オンライン予約できるクリニックも増えていて、あまり待たずに診てもらえるところも多い。

 ここで書いたこともあくまで筆者個人の体験であり、より正確な情報は眼科医に尋ねて欲しい。目はゲーマーにとっては五感の中で最も重要であり、それでいて問題があっても治療が難しい器官。ゲーマー的に言えば、替えが効かないデバイスの定期メンテナンスだと思って、ぜひ目の検診を受けていただきたい。

目の症状がなくても、眼科で検診してもらえる
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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