使ってわかるCopilot+ PC
第17回
Arm版Windowsで仮想マシンを作るべく「Hyper-V」を導入してみる
Windows Insider Programに参加し、仮想マシンで最新要素を体験する準備
2024年11月8日 09:53
一般提供前の要素を試せるWindows Insider Program
本連載ではCopilot+ PCの魅力や活用法を伝えるべく、AI関連の要素を中心に機能を紹介してきた。現時点でCopilot+ PCの持つ要素は概ねカバーできたかなと思っている。
Windows 11のバージョン 24H2の実装に合わせて、新たなAI機能の追加も告知されているのだが、今のところは筆者のPCには実装されていない。ただ新要素が降ってくるのを待っていてもいいのだが、Copilot+ PCの魅力をいち早くお伝えするためにも、新要素を先行して触れるようにしたい。
マイクロソフトはWindows Insider Programというものを提供している。これに参加すると、一般提供される前のWindowsの新要素を試せるようになる。意欲的なユーザーに新要素を先行して触れてもらい、そのフィードバックを得ることで、Windowsのクオリティを高めようという取り組みだ。
参加するには、MicrosoftアカウントでWindows Insider Programに参加登録し、Windows Insider Previewビルドをインストールする。つまり、新たにWindows Insider Previewビルド用のPC環境が必要になる。新たなPCを用意するか、そうでなければ既存の利用環境をWindows Insider Previewビルドに変えてしまうことになる。
筆者が今回試してみたいのはArm版Windows 11の先行要素なので、そのためのCopilot+ PCをもう1台調達する……というのはさすがにハードルが高い。そこで別の方法として、仮想マシンにWindows Insider Previewビルドをインストールする方法を考えた。これなら元のWindows環境を残しつつ、1台のハードウェアで、新要素も試す環境を用意できる。
ということで今回は、Arm版Windowsで仮想マシンを作るための手順を解説していく。AIの話ではないが、そのための下準備ということでやっていきたい。
どの仮想化ソフトを使うのか?
仮想マシンを作るためのソフトウェアはいくつかある。まずは無料で商用利用できる「VirtualBox」を導入してみる。公式サイトから「Oracle VM VirtualBox Base Packages」のWindows版をダウンロードし、インストールする。
筆者はこの時点で怪しいなと思ったのだが、実際にインストールしてみると、途中で致命的なエラーが発生してインストールに失敗してしまった。
「VirtualBox」のWindows版はx64版となっており、Arm版Windowsで動かすとエミュレーターを通して動作する。エミュレーターの「Prism」は、ユーザーモードコードのみサポートしており、カーネルモードコンポーネントは動作しない。そのためインストールできないのだと思われる。
解決策は、Arm64版アプリを用意してもらうことだが、ないものをねだっても仕方ない。ということで「VirtualBox」は諦めて、別の方法をとる。
この時点で、選択肢はほぼ1つしかない。マイクロソフト純正の仮想化ソフト「Hyper-V」を使用することだ。これならArm版Windowsにも用意されている。
ただし使用できるのはWindows 11 Pro以上となる。筆者が使用している「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」はWindows 11 Homeを搭載しているため、Proへのアップグレードが必要になる。
アップグレードの方法は、[設定]の[システム]から[ライセンス認証]に進み、[Windowsのエディションをアップグレード]を選択。[Microsoftアプリでのアップグレード]にある[Microsoft Storeを開く]ボタンを押せば、Microsoft Storeアプリからオンラインで簡単に実行できる。価格は税込13,824円と結構かかる。
「Hyper-V」はArm版Windows 11でも使える
無事にOSがWindows 11 Proになったら、次は「Hyper-V」のインストールを行う必要がある。Windowsの検索を使うなどして[Windowsの機能の有効化または無効化]を開き、[Hyper-V]にチェックを付ける。すると必要なソフトが自動でインストールされ、再起動した後に機能が有効化される。
あとは[Hyper-V マネージャー]を開けばいい。なおOSのアップグレードから「Hyper-V」を導入するまでの手順は、x64版Windows 11と全く同じだ。
これでArm版Windowsでも仮想マシンを構築できる。今回はWindows Insider Previewビルドを目的にしているが、それ以外のOSももちろん導入できる。他社からもArm版の仮想化ソフトが増えてくれればいいのだが、現時点では「Hyper-V」が確実で手っ取り早い。
続きは仮想マシンにWindows Insider Previewビルドを導入する話になるのだが、長くなるので次週に持ち越し。そもそもちゃんと導入できるのか、そして仮想マシンでNPUが動作するのか、実際に確かめていきたい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/