やじうまの杜

語彙が17個しかない謎の言語「パニパニ」を学ぶためにAIの力を借りてみた話

英語を駆逐して新しい世界共通語になるべく生まれた人工言語

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「新たな世界共通語を目指す」「英語を駆逐したい」――そんな思いから作られたという人工言語「パニパニ」(pa ni pa ni)

 「新たな世界共通語を目指す」「英語を駆逐したい」――そんな思いから作られたという人工言語「パニパニ」(pa ni pa ni)が面白そう。「窓の杜」で紹介するので「プログラミング言語かな?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は計算機とではなく、人間と会話する言葉の方です。

 「パニパニ」の詳しい文法は、「Twitter」で公開されています。表紙も入れて10ページで収まってしまうほどの簡単さ。

 特徴をかいつまんで紹介すると――

  • 語彙が合計17個しかない
  • 発音も簡単。母音は3つ、子音は10個だけ
  • 文法もシンプルで、語順にあまり縛りはなく、格変化などもなし。主語は2回言うだけ。時制なし!
  • そのため、1~2時間ほどで習得できる

といった感じです。筆者はパニパニネイティブではないので、まだうまく話せないのですが、音の繰り返しが多いのかな? 読み上げてみると、ちょっとかわいい印象を受けますね。

 「パニパニ」は英語を駆逐して新しい世界共通語になるべく生まれた言語ですが、残念ながら誕生してまだ日が浅く、手掛かりは生みの親であるしろすけ2号(@shirosuke_2)氏のドキュメントぐらいしかありません。文法は簡素ですが、「DeepL」がまだ対応しておらず、翻訳は独力でやらなければいけないのも初学者にはしんどいですよね。

 そこで、今流行りの「ChatGPT」が使えないかなぁと思いました。筆者はプロンプト(生成AIへの指令)にあまり詳しくないのですが、しろすけ2号さんのドキュメントをもとに簡単な言語の説明をAIに対して行い、簡単な翻訳をお願いしてみました。

「パニパニ」という言葉があります。主な語彙は以下の通りです。

・kai:行く、来る、歩く、動く、変わる
・kim:得る、食べる、飲む
・ma:いる、ある、生きている
・mai:生物
・na:私、あなた、あの人(たち)、これ、それ、あれ
・ni:大きい、高い、多い、たくさん、とても、成長する
・pa:言う、話す、聞く、書く、見る、読む、言葉、音、文字、絵、写真、刺激
・pu:~ではない、~しない
・sin:使う
・sa:知る、わかる、知識、習う、教わる、考える、考え
・sai:よいこと、楽しい、美しい
・sin:使う
・ta:誰
・tin:する、作る

 文法もシンプルです。以下に例を示します。

・あれはさくらです:「na sakura.」または「sakura na.」
・さくらです:「sakura.」
・太郎は行きます:「taro taro kai.」または「kai taro taro.」
・太郎はパニパニを使います:「taro panipani taro sin.」または「sin taro panipani taro」
・太郎は使います、パニパニを:「taro na taro sin, na panipani」
・太郎は大きくない:「pu ni taro」または「taro pu ni」
・美しい生き物:「mai sai」または「sai mai」
・暗いところ:「ru pu pin」または「pu pin ru」
・この生き物はよい知識を得る:「mai nana mai na kin. na sa sai.」
・あれはいきものですか?:「pu pu na mai?」
・太郎は楽しんでいますか?:「pu pu taro taro sai?」

「太郎は生き物ですか?」をパニパニに翻訳してください。

 本当はもっと細かく文法を説明したほうがいいのかもしれませんが(編集部注:「kim」は「kin」の誤字ですがプロンプトに入力したまま記載します)、まぁ、試しにやる分にはこんな感じでよいでしょう。面倒くさいし。

「ChatGPT」に「パニパニ」語のあらましを伝えて、翻訳してもらう。

 しかし、こんなお願いでも、割ともっともらしい答えが返ってきました。「taro na mai?」

 しかし、パニパニを学び始めて10分の私にも、この答えは間違いだとわかります。そこで、文法の説明を加えて、もう一回翻訳をお願いしました。

「ChatGPT」の誤りを指摘して、もう一回翻訳をお願い

 これを繰り返すと、ごくごく簡単な文章であればちゃんとパニパニ語に翻訳できるようになりました! なにぶん私も入門して間もないので、これが正しいパニパニ語の文章なのかは自信ありませんが、なんとなくパニパニ風になっているような気がします。

 AIはすぐに知ったかぶりするので、ちゃんと間違いを指摘する必要がありますが、こうやってAIを教えていけば、パニパニ翻訳を任せられるようになるのかも? あとはプロンプトのうまい人に任せたいと思いますが、「ChatGPT」、なかなか面白いですね。

ごくごく簡単な文章であればちゃんと(?)パニパニ語に翻訳できるように

 一方、モノを教えるということの難しさも感じました。自分ではちゃんと言葉で説明したつもりでも常に「抜け」はあり、AIはなかなか正しい答えを出してくれません。正しく、漏れなく、簡潔に表現するのは一筋縄ではいかないですね。そうこう工夫するうちに、自分の脳みそも整理されてきて、教えているのにわかってきたような、よくわからない気分になってきました。「ルンバを買うと、ルンバが通れるよう床にモノを置かなくなるので、家がキレイなる」みたいなヤツですかね。

 それでは、今日はこのあたりで。na na kin sai !(がんばれ!)