やじうまの杜
Adobe製品で「基本利用条件」が変更、コンテンツの所有権やAI訓練への転用に懸念の声
Adobeは公式ブログで釈明
2024年6月10日 14:03
「やじうまの杜」では、ニュース・レビューにこだわらない幅広い話題をお伝えします。
最近、米Adobeが行った「アドビ基本利用条件」の変更をめぐり、作成したコンテンツを勝手にAIモデルのトレーニングに使われるのではないか、所有権がAdobe社に奪われるのではないかという懸念が広がっているようです。「解約して他のツールへ移行する」と宣言するユーザーまで現れる事態に……。
I just cancelled my Adobe licence after many years as a customer.
— Sasha Yanshin (@sashayanshin)June 7, 2024
The new terms give Adobe "worldwide royalty-free licence to reproduce, display, distribute" or do whatever they want with any content I produce using their software.
This is beyond insane. No creator in their…pic.twitter.com/8UK3ur3WtH
同社によると、今回の変更は モデレーションプロセスの改善について、より明確にするため とのこと。Adobeはさまざまな生成AI機能を自社製品へ積極的に統合していますが、その一方で同社には「責任あるイノベーション」の義務があります。つまり、同社は生成AI機能が不正な行為――おそらくはフェイクコンテンツや児童ポルノの生成――に用いられないように審査しなければならず、そのためにコンテンツへアクセスするための「限定的なライセンス」が必要なのだそうです。
規約の変更を懸念するユーザーの意見と、それに対するAdobeの答えをまとめると、以下のようになるでしょう。
Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツを、Adobeが見ることはできるのか?
A. 「Photoshop」のニューラルフィルターやリキッドモード、背景を削除といったクラウドベースのAI機能を利用する際は、それがクラウドに送信される。
クラウドへ送信されたコンテンツを、Adobeはすべて見ているわけではない。ただし、児童への性的虐待に関わる素材、スパムやフィッシングを示す行動パターンなど、違法・不正と疑わしいものがスクリーニング(選抜)されることがある。そうしたコンテンツは手動によるレビューなどが行われることがある(今回の規約変更の要点)。
不安であれば、ユーザーはAI機能を無効化できる。
Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツが、勝手にAIモデルのトレーニングに使われることはあるのか?
A. ない。「Adobe Stock」などのライセンスコンテンツや、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツのデータセットでのみトレーニングされる。
Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツが、Adobeの所有になることはあるのか?
A. ない。
結局のところAdobeを信じるか、信じないかという話に行きつくのですが、悪いことをしない限りはなにか不利益を被ることはなさそうです。Adobe側のミスや故意によりユーザーが不利益を被った場合に、どうなるのかという不安は残りますが……。
なお、生成AIとは別にAdobeがユーザーのコンテンツを「製品の改善」のために用いることがあります。しかし、それは基本的にAdobe Accountからオプトアウト(無効化)できます。心配であればデータと[プライバシー設定]ページの[コンテンツ分析]の設定を見直してみるとよいでしょ
ただし、プレリリース(ベータ、早期アクセス)版の製品は、品質改善への協力を前提に提供されているため、「コンテンツ分析」の対象となります。嫌ならばプレリリース版の利用や製品向上プログラムへの参加は避けましょう(製品版だけ使いましょう)。また、ユーザーが自らの意思で「Adobe Stock」に寄稿したコンテンツや、フィードバックのためにユーザーがAdobeで送信したコンテンツに関しても、「コンテンツ分析」の対象となります。