やじうまの杜

Adobe製品で「基本利用条件」が変更、コンテンツの所有権やAI訓練への転用に懸念の声

Adobeは公式ブログで釈明

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今回変更された「アドビ基本利用条件」の箇所

 最近、米Adobeが行った「アドビ基本利用条件」の変更をめぐり、作成したコンテンツを勝手にAIモデルのトレーニングに使われるのではないか、所有権がAdobe社に奪われるのではないかという懸念が広がっているようです。「解約して他のツールへ移行する」と宣言するユーザーまで現れる事態に……。

 同社によると、今回の変更は モデレーションプロセスの改善について、より明確にするため とのこと。Adobeはさまざまな生成AI機能を自社製品へ積極的に統合していますが、その一方で同社には「責任あるイノベーション」の義務があります。つまり、同社は生成AI機能が不正な行為――おそらくはフェイクコンテンツや児童ポルノの生成――に用いられないように審査しなければならず、そのためにコンテンツへアクセスするための「限定的なライセンス」が必要なのだそうです。

 規約の変更を懸念するユーザーの意見と、それに対するAdobeの答えをまとめると、以下のようになるでしょう。

Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツを、Adobeが見ることはできるのか?

A. 「Photoshop」のニューラルフィルターやリキッドモード、背景を削除といったクラウドベースのAI機能を利用する際は、それがクラウドに送信される。

 クラウドへ送信されたコンテンツを、Adobeはすべて見ているわけではない。ただし、児童への性的虐待に関わる素材、スパムやフィッシングを示す行動パターンなど、違法・不正と疑わしいものがスクリーニング(選抜)されることがある。そうしたコンテンツは手動によるレビューなどが行われることがある(今回の規約変更の要点)。

 不安であれば、ユーザーはAI機能を無効化できる。

Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツが、勝手にAIモデルのトレーニングに使われることはあるのか?

A. ない。「Adobe Stock」などのライセンスコンテンツや、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツのデータセットでのみトレーニングされる。

Q. 私たちがAdobe製品を使って制作したコンテンツが、Adobeの所有になることはあるのか?

A. ない。

 結局のところAdobeを信じるか、信じないかという話に行きつくのですが、悪いことをしない限りはなにか不利益を被ることはなさそうです。Adobe側のミスや故意によりユーザーが不利益を被った場合に、どうなるのかという不安は残りますが……。

 なお、生成AIとは別にAdobeがユーザーのコンテンツを「製品の改善」のために用いることがあります。しかし、それは基本的にAdobe Accountからオプトアウト(無効化)できます。心配であればデータと[プライバシー設定]ページの[コンテンツ分析]の設定を見直してみるとよいでしょ

心配であれば[コンテンツ分析]の設定を見直しを

 ただし、プレリリース(ベータ、早期アクセス)版の製品は、品質改善への協力を前提に提供されているため、「コンテンツ分析」の対象となります。嫌ならばプレリリース版の利用や製品向上プログラムへの参加は避けましょう(製品版だけ使いましょう)。また、ユーザーが自らの意思で「Adobe Stock」に寄稿したコンテンツや、フィードバックのためにユーザーがAdobeで送信したコンテンツに関しても、「コンテンツ分析」の対象となります。