【第30回】
オートアップデートが拓く未来(前編)
~自動で最新版になるソフト~
(01/10/15)
アップデートもソフトにお任せ!
使っているオンラインソフトのバージョンアップ作業は、従来ならばまず作者のホームページや窓の杜などソフトのアップデート情報を扱っているサイトにアクセスし、最新版が公開されていることをチェックし、ダウンロードページを開いて配布ファイルをダウンロードして、必要ならアーカイブを解凍してからREADMEファイルを読み、それからインストール、という手順を踏むことになるのが一般的だ。
しかし最近のソフトの中には、インターネットを介してアップデート情報を自動的にユーザーに通知する機能をもつものや、最新ファイルの自動ダウンロード、自動インストールまでしてくれる機能を備えたものもある。さらに最近では、そういったオートアップデート機能をオンラインソフト側に提供するソフトまで登場している。オートアップデート機能は、まさに今オンラインソフトの世界で急速に普及しようとしているようだ。そこで今回のよもやま話では、一度使うとやめられなくなる(?)オンラインソフトのオートアップデートについて、あれこれと書いてみたい。
オートアップデートの魅力
オートアップデートの魅力をまず改めて整理してみよう。オンラインソフトの内蔵機能として、最新版のリリースをユーザーに通知する機能があれば、ユーザーは作者ホームページや窓の杜などに愛用ソフトがバージョンアップしているかどうかを意識的に見に行かなくてもよくなるし、作者側もバージョンアップをユーザーに確実に知らしめることができるようになる。また、オンラインソフトに自分で自分をバージョンアップする機能があれば、ユーザーにとってはバージョンアップのたびにダウンロードやインストールする手間がぐっと軽減されることになるし、そうした魅力からユーザーが定着すれば、作者にとっても大きなメリットになる。
もちろんこのようなオートアップデート機能の実現には、例えばインストールされたPCにインターネット環境が不可欠になってくる。しかし、現在ではインターネットにつなげられないスタンドアローンのPCのほうがむしろ少ないと思われるし、さらにブロードバンドサービスなどによる常時接続環境が普及しつつあることも手伝って、オートアップデート機能の搭載は今後ますます多くのオンラインソフトに期待されると言ってよさそうだ。
オートアップデートにもいろいろある
さて、実際に現在公開されている数々のオンラインソフトを見てみると、オートアップデートを実現しているレベルによって、いくつかのグループに分けることができる。
まず第1に、アップデート通知のみをサポートしているソフトがある。これは割とよく見られ、タスクトレイなどに常駐して、定期的に作者サイトを自動チェックし、ファイルが更新されていればアイコンを変化させたり、ダイアログメッセージなどでユーザーにバージョンアップを通知するというものだ。Windowsの「重要な更新の通知」と同種の機能と言えばわかりやすいだろうか。
常駐しないソフトの場合は、[最新バージョンのチェック]といったメニューを選択してから行うことになる。いずれにしろ基本的には更新通知だけで、ダウンロードとインストールはユーザーが手動で行わなければならない。しかし、タスクトレイアイコンやダイアログのボタンをクリックすることでダウンロードページを開いてくれるといった機能はついていることが多い。
次に、通知機能に加えてアップデート用ファイルのダウンロードまでを自動、もしくは半自動で行ってくれるソフトがある。ファイルを保存した後にユーザーがプログラム本体を終了して、あとは普通にインストール作業を行うことになる。プログラミング的に考えてもここまでなら比較的容易に実現できるかと思われるが、ぼくが知る限りではこのタイプのソフトは意外に少ないようだ。
第3に、更新通知からアップデート用ファイルの自動ダウンロード、さらにインストールまでを自動で行ってくれるソフトがある。狭義の「オートアップデート」と言えば、この自動インストールまでをサポートした機能を指すのかもしれない。今のところ著名なオンラインソフトでは、動画再生の「Real Player」やアーカイバーの「Explzh」などが挙げられる。アップデートインストールまでを自動でやってくれるので、ユーザーはラクチンこの上ないし、インストール方法を間違えて失敗するようなことも起こりにくいと言えよう。
そのほか、データベースを利用するソフトなどでは、プログラム本体ではなくデータファイルを最新のものに自動アップデートするといったものも多い。特定のWebページから株価情報やニュースヘッドラインなどを自動ダウンロードして利用するようなソフトも、広義ではこの部類に入るだろう。データファイルのバージョンアップは、上書きインストールのためにプログラム本体をいったん終了するといった処理が不要なためか、作者にとっては比較的簡単に実現できるようだ。
画期的な「autoUpdater」
さて、そんな便利なオートアップデート機能だが、オートアップデートの機能そのものを、オンラインソフトに提供するオンラインソフト「autoUpdater」というのが先日登場し、窓の杜のニュース記事にもなったのを皆さんはご存じだろうか。
「autoUpdater」は、オンラインソフトにオートアップデート機能を付けることができるソフトだ。いわばオンラインソフト作者のためのオンラインソフトで、作者が自作ソフトをプログラミングする際、ちょっとしたAPIを組み込むことで「autoUpdater」を内部から呼び出し、アップデート用のファイルをインターネットから自動ダウンロードしてインストールプログラムを起動する、という一連の機能を自作ソフトに簡単に付けられるのだ。
□自作ソフトに自動アップデート機能を追加できる「autoUpdater」v1.0が公開
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/10/10/autoupdater.html
インストーラーの登場と似ている?
オートアップデート機能がいくら便利だということがわかっていても、それをいざ自作ソフトに付けるためにプログラムを自分で組むとなると、おっくうになる作者も多いことだろう。「autoUpdater」はそんな作者の福音になる、実にユニークで画期的なソフトと言えそうだ。
そう言えば思い出すのが、オンラインソフトにインストール機能を提供するインストーラーソフト。Windows 95以降、いわゆるインストールウィザードがソフトをインストールする際の標準的なインターフェイスになり始めた頃、そのインストール機能だけを専門に提供するインストーラーソフトというものがオンラインソフトとしていくつか登場し、話題になった。今ではすっかり普及しているインストーラーソフトだが、同じように「autoUpdater」のようなソフトも今後、オンラインソフトの世界で広く利用され、普及していくのではないだろうか。
便利さの裏側に…?
こうして考えると実に便利で今後が期待されるオートアップデート機能だが、果たしてよいことばかりだろうか。世の常として、何かが便利になればなるほど、その裏側には意外な落とし穴が隠れていたりすることは多い。次回のよもやま話では、オンラインソフトの世界で今後さらに普及していくであろうオートアップデート機能を検証し、オートアップデート機能を搭載するオンラインソフトの作者に期待したいことなどについて、あれこれ書いてみようと思っている。
(ひぐち たかし)