【第4回】
「Collector」の作者
高橋 弘さん
いかにほかの人が手を付けていない機能を見つけるかが大事です
(02/03/14)
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高橋 弘さん |
窓の杜の読者のみなさんなら、それぞれに気に入って使い続けているオンラインソフトがあるはず。そしてそのソフトに愛着がわけばわくほど、どんな人が作ったのかが気になってくるから不思議。そこで「このソフト作った人はどんな人?」では、普段はお目にかかれないオンラインソフト作者さんに、「普段はどんなことをしているんですか?」「他の作者さんのオンラインソフトのなかでオススメのソフトはありますか?」など、みなさんの代わりにお話を伺って、ソフトを作っている作者さんがどんな人なのか、お伝えしていこう。
第4回目は、IEとNetscapeをタブ切り替え型Webブラウザーにするソフト「Collector」などの作者「高橋 弘」さんだ。
まず職業、年齢と、趣味など普段なさっていることを教えて下さい。
業務用ソフトを開発する会社に勤めるSE兼プログラマーの会社員で、31才です。趣味は子どもが生まれてからないに等しいですね。
オンラインソフトはいつ、どんな時間帯に制作していますか。
会社から帰った後の時間からや休日は子ども達の相手をしているので、子ども達の寝た後の深夜だけが自由時間です。でもその自由時間で持ち帰った仕事をしなければならないこともあるので、現実的にはオンラインソフトの制作に充てられる時間は少ないです。世帯をもつと本当に自分の時間がないですね(笑)。
パソコン歴と最初に使ったパソコンを教えて下さい。
実はパソコンを使い始めたのは5年ほど前からで、それ以前は会社で原子力プラントの構造解析をしていました。本格的にコンピューターに接したのも会社に入って、原子力プラントの構造解析をするようになってからで、それ以前はパソコンには興味すらありませんでした。強いて言うならば、中学生の頃に友人の持っていたシャープの“X1”でゲームをやった覚えがあるくらいです。
仕事で初めて使ったパソコンはPentium 100MHzのもので、OSはWindows 3.1を使っていました。個人用に初めて買ったパソコンは、Pentium II 233MHzを搭載した富士通の“FMV-DESKPOWER”で、Windows 98が発売される数ヶ月前に購入しました。
現在のオンラインソフトの開発環境を教えて下さい。
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ソフトの開発は主に中央の“バイオノート”で行っているという |
ソニーのノートパソコン“バイオノート PCG-Z505C/BP”で、モバイルCeleronを積んでいます。動作が遅くてソフト制作にはパワーが足りないのが悩みですね。あとはCeleron 1.2GHzを1.4GHz程度までオーバークロックした自作マシンを家族で共用しています。
オンラインソフトを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
窓の杜のようなオンラインソフトのサイトやパソコン雑誌のオンラインソフトコーナーなどを見て、“自分も載ってみたいな”思ったのがきっかけです。今ではそれも達成できたようで検索エンジンで自分のソフトをキーワードに検索すると、自分のホームページ以外にもたくさんヒットするのがうれしいですね。そこにある自分のソフトに関する見知らぬ人の書いたコメントなどを読むのも楽しいです。
継続してソフトを作ろうと思う理由は何ですか。
まず、仕事でもプライベートでも、自分で使いやすいようにパソコンをカスタマイズしたり、パソコンの環境を整えてラクになりたいという気持ちがあるんです。そのソリューションの1つにオンラインソフトがあるのですが、やはり自分で作れば自分の思い通りにできるので理想的です。ですから、今後もオンラインソフトを作り続けていくと思います。また、今後もプログラマーとして仕事をしていくつもりですので、流れの速いこの業界に身を置き続けるための自己研さんという意味もあります。
オンラインソフトを作っていて辛いと思ったことはありますか。
プログラマーが職業ですし前提として自分用ということがあるので、ソフト制作そのものは苦ではないです。ただ公開すると自分が常用していなかったりもっていない環境での不具合への対処が必要になるので、辛いと感じることもあります。
あなたのソフトを利用しているユーザーに望むことはなんですか。
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キーボードは特にこだわりがなく、あるものを使っているそうだ |
掲示板などで不具合報告をしてくださるのは大変嬉しいのですが、不具合の具体的な内容が書かれていないことがあり、困ってしまいます。環境や不具合の詳細な内容など、不具合を再現して原因を突き止めるのに必要な情報を書いていただければと思います。あと、オンラインソフト制作はあくまで趣味の範囲なので、温かく見守っていただければありがたいです。
お作りになったソフトの中で一番自信のあるものはどれですか。
「WindowTP」の透明化処理に一番の自信がありますね。透明化するソフトには同類のソフトもありますが、「WindowTP」の透明化処理は見栄えを良くするなどの苦労したこともあって自信があります。
□窓の杜 - 【NEWS】マウスドラッグで移動しているウィンドウを半透明化する「WindowTP」v1.2.2
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/08/23/windowstp.html
影響を受けたソフトはありますか(オンラインソフトでなくても構いません)。
「WindowTP」は当初、ウィンドウを半透明にする際に一瞬黒くなる現象が起きていました。ところが、同じく半透明機能のあるStardock Corporationの「WindowFX」というソフトでは、黒くならずにすんなりと半透明になることに気付いて、ショックでした。それで、「WindowTP」でも実現させようと手本にしていました。しかし、シェアウェアである「WindowFX」の試用期間が終わってしまったり、仕事が忙しくて時間がなかったりで、実現するのに1年近くかかってしまいました。
一方、「Collector」を作る動機になったのは、元祖タブ型Webブラウザーの「NetCaptor」です。始めは、使い勝手も見た目もIEと同じタブ型ブラウザーを作ろうと思ったのですが、やはり使い慣れたIEに勝るものはないし、ラクでもあると思って現在のような形になりました。その後、同僚の要望でNetscapeにも対応しました。
□窓の杜 - 【NEWS】ウィンドウの動きをカスタマイズする「WindowFX」v1.0
http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/07/05/windowfx.html
□窓の杜 - Collector
http://www.forest.impress.co.jp/library/collector.html
□窓の杜 - 【NEWS】タブを駆使したWebブラウザー「NetCaptor」v6.1.0
http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/09/27/netcaptor.html
他の作者さんのオンラインソフトのなかで、オススメのソフトはありますか。
あまり他の作者さんのオンラインソフトは使わないのですが、エクスプローラのコンテキストメニューの[送る]からファイル名やパス名をクリップボードにコピーできる「ClipName」というソフトが気に入っています。
あと、圧縮・解凍用に「+Lhaca」をやはり[送る]に入れて愛用しています。また、メールソフトは「Becky! Internet Mail」を使っています。
□Hirayamas ソフトの小物たち(「ClipName」)
http://www.alles.or.jp/~hrymktnr/
□窓の杜 - +Lhaca
http://www.forest.impress.co.jp/library/pluslhaca.html
□窓の杜 - Becky! Internet Mail
http://www.forest.impress.co.jp/library/becky.html
ソフトを作ってみたい人、ソフト作者になりたい人へアドバイスをお願いします。
ソフト制作は、まずは気に入ったソフトを真似てみるのが上達への近道だと思います。そうやってソフト制作の方法を身に付けてから、独創的なアイデアをソフトにするようにすることをおすすめします。
また、ソフト作者になりたいのであれば、まだ人の実現していない機能をもったソフトを公開するのがポイントだと思います。すでにあるソフトと同じ機能を実現しても面白くありませんし目立てませんので、いかにほかの人が手を付けていない機能を見つけるかが大事です。あと、アイコンは第一印象になるので、思いのほか重要です。私もなのですが、見栄えの良いデザインにするように心がけたいですね。
今後、オンラインソフト全体はどうなっていくと思いますか。
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休日にうかがったので、“パパ”としてのお役も果たしながらのインタビュー。お疲れさまでした! |
これからは良質でフリーのオンラインソフトが増えていくと考えています。そのほかパソコンの専門家でなくとも、気軽にソフトを制作できるようになっていくのではないでしょうか。また、そうなってほしいと思っています。
窓の杜へのご意見やご要望など、窓の杜に望むことはありますか。
もっと海外のオンラインソフトを紹介してほしいと思います。簡単でも使い方を紹介すれば良質の海外オンラインソフトを使う人も増えるのではないでしょうか。
読者のみなさんに一言お願いします。
ぽっと出の私がこんなインタビューを受けいていいのかなとも思いますが、これからもよろしくお願いします。
□hiro's area
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/6494/
(齋藤 正穂)