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【第19回】
「NextTrain for Windows」の作者
H.TOYOさん
これからはフリーソフト化、オープンソース化が進むのではないでしょうか
(03/07/03)
窓の杜の読者のみなさんなら、それぞれに気に入って使い続けているオンラインソフトがあるはず。そしてそのソフトに愛着がわけばわくほど、どんな人が作ったのかが気になってくるから不思議。そこで「このソフト作った人はどんな人?」では、普段はお目にかかれないオンラインソフト作者さんに、「普段はどんなことをしているんですか?」「他の作者さんのオンラインソフトのなかでオススメのソフトはありますか?」など、みなさんの代わりにお話を伺って、ソフトを作っている作者さんがどんな人なのか、お伝えしていこう。
第19回目は、「NextTrain for Windows」の作者、H.TOYOさんだ。
まず職業、年齢と、趣味など普段なさっていることを教えて下さい。
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H.TOYOさん |
某大学の教員で、37歳です。家を買ったばかりということもあって、最近の趣味は庭いじり、いわゆるガーデニングです。それから、プログラミングに限らず何かを“作る”ことも好きですね。休みには、家で何かを作ったり、修理できるものはないかと探し回っています。
オンラインソフトはいつ、どんな時間帯に制作していますか。
子どもがまだ小さいので、休日にはできるだけ子どもと遊ぶようにしたいと思っていますので、オンラインソフトに関しては、たまの休日にまとめてバグ取りをやるといった状態です。こういう状態でも制作を続けられるのは、公開しているソフトにはもうそれほど問題が起きていないということがあると思います。
パソコン歴と最初に使ったパソコンを教えて下さい。
大学の2~3年生の頃に初めてパソコンに触りました。年上の従兄弟から使わなくなった富士通製の8ビットパソコン“FM-8”をもらい、ちょうどその頃流行り始めた“NiftyServe”などのパソコン通信にハマリました。その後は“PC-98シリーズ”のパソコンを何台か買って、それからはDOS/Vマシンを使っています。DOS/Vマシンは、最初の1台だけDELL製のものを買って、それ以降、現在まで自作機を使っています。
現在のオンラインソフトの開発環境を教えて下さい。
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愛用の「iPAQ Pocket PC」のH3950では、「NextTrain for PocketPC」v1.05も日常的に利用しているという |
CPUはPentium 4の1GHzくらいのものを使っています。OSはWindows XP、メモリは512MB、HDは40GBという構成ですが、HDDは同じものを2台入れていて片方をバックアップに利用しています。
開発環境は「Visual C++ 6.0」です。「Visual Studio .NET」もインストールして開発してみたのですが、「Visual Studio .NET」のライブラリでは、Windows 98上で動かないなどのトラブルがいろいろあったため、結局「Visual C++ 6.0」での開発に戻ってしまいました。
□Microsoft Visual C++ ホームページ
http://www.microsoft.com/japan/msdn/visualc/
オンラインソフトを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
私が最初にパソコンを触った頃は、今のようにオンラインソフトがいくらでもある時代ではなかったので、ほしいソフトは自分で作るしかなかったというのがきっかけですね。FM-8を使っていた頃は、オンラインソフトとして公開はしませんでしたが、通信ソフトを作って使っていました。
ソフトの制作を本格的に始めたのはPC-98シリーズのパソコンを買ってからです。オンラインソフトとして最初に公開したのはOSがまだDOSの頃で、「PRT」というテキストを整形して印刷するソフトでした。その後、これをバージョンアップした「PRT++」をシェアウェアとして公開しました。「PRT++」は、実はパッケージソフトとして販売もしていただいたんですが、すぐにWindowsの時代になってしまったので、あまり売れなかったんじゃないかと思います。
また、「NextTrain for Windows」の開発のきっかけですが、「NextTrain」は元々DOS版のソフトで、Windows CEが出てきたときに“Windows CEにも対応してほしい”という要望がありました。しかし、私のところに開発環境がなかったことや、新しいプラットフォームに対応させるのは難しいのではないかと悩んでいたところ、J.MASAMITSUさんから“「NextTrain」のWindows CE版を作ってもよいか?”というメールをいただきました。こちらとしてもぜひ制作したかったので、“ソースを提供するので、共同で開発しませんか”いう返事をして、共同で開発を始めました。
DOS版の「NextTrain」のエンジン部分はそのまま使うことにし、Windows CE版のインターフェイスとアラームの部分をJ.MASAMITSUさんが作ってくださって、Windows CE版が完成しました。この際、MFCを利用して開発していたためそのままWindowsに移植できるということで、エンジン部分を私が担当し、インターフェイス部をJ.MASAMITSUさんが作るというように、分担してWindows版を完成させました。
現在はJ.MASAMITSUさんから“公開等は自由にやってくれて構わない”言われているため、その後は私一人公開しています。とはいえ、実はJ.MASAMITSUさんとは一度も会ったとことはないんです(笑)。J.MASAMITSUさんは元々は囲碁が趣味で、当時も囲碁ソフトを作っていましたが、現在は独立されて“囲碁きっず!”という子供向けの囲碁のサイトを運営されていますので、興味のある方はぜひのぞいてみてください。
□Office TOYO
http://www.toyolab.com/office/
□囲碁きっず!
http://www.igo-kids.com/
継続してソフトを作ろうと思う理由は何ですか。
現在は、公開しているソフトに新たな機能を搭載するということはあまりやっていませんが、やはりバグがあると気になります。機能追加はしなくても、バグをなくしたいという気持ちがあれば、自然に継続していくことになりますね。
バグについては、自分で発見するよりもユーザーの方にご指摘頂くことが多いのですが、例えば私のところへは1人しかバグを報告してくれなかったとしても、メールは出していないけれど困っているというユーザーさんがもっとたくさんいるということも十分あり得るわけですから、早く直さなくてはという気持ちになりますね。
オンラインソフトを作っていて辛いと思ったことはありますか。
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おじゃました職場の机はPCを中心とした配置になっている |
バグ報告があって、それを何度やっても直せないとストレスを感じますね。特にシェアウェアだった「PRT++」は、お金をいただいてしまっているので、バグが出たときは徹夜してでも直さなくてはと感じてしまって、かなり大変でした。
もとは趣味で作っていたオンラインソフトですが、お金をいただいてしまうと趣味とは言えなくなってしまいますから、「NextTrain」は絶対にシェアウェアではなくフリーソフトとしてリリースすることにしたんです。
また、「NextTrain for Windows」用に各ユーザーさんが作ってくださった時刻表のデータも、以前はホームページに掲載していたんですが、これは管理が大変でした。その後、みなさんが手軽にホームページを開設できるようになったこともあって、私が管理するよりもっとよいサイトがたくさんできて来ましたから、私のサイトでの時刻表データの掲載は終了させていただいています。
あなたのソフトを利用しているユーザーに望むことはなんですか。
これからも使っていってください。みなさんにとって「あるのが当たり前」というソフトになれれば、うれしいです。
お作りになったソフトの中で一番自信のあるものはどれですか。
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お仕事に関連する英語文献の数々。多くがコンピュータやプログラミングに関するものだ |
先ほどお話した「PRT」をバージョンアップした「PRT++」でしょうか。一番気合を入れて作ったものですし、だからこそ初めてシェアウェアとしてリリースしたということもありますので。
影響を受けたソフトはありますか(オンラインソフトでなくても構いません)。
DOS時代にはいろいろとオンラインソフトを使っていましたし、よいオンラインソフトはないかと探し回りましたので、直接の影響はなくても知らない間に影響を受けていたと思います。とはいえ、OSがWindowsになってからはWindowsに標準で付属しているソフトを使うことが多くなりましたね。
私がオンラインソフトを探し回っていた頃、影響を受けたということではなく印象に残っているという意味では、ファイル管理ソフトの「FD」や、アーカイバの「LHA」をよく使っていた覚えがあります。またエディターですと「VZ editor」でしょうか。現在のプログラミングには、定番の「秀丸エディタ」を使っています。
□FD for DOS-V(MS-DOS/ユーティリティ)
http://www.vector.co.jp/soft/dos/util/se020040.html
□LHA(MS-DOS/ユーティリティ)
http://www.vector.co.jp/soft/dos/util/se002413.html
□VZ Editor Version1.6(ビレッジセンターサイト)
http://www.villagecenter.co.jp/soft/vz16.html
□窓の杜 - 秀丸エディタ
http://www.forest.impress.co.jp/library/hidemaru.html
他の作者さんのオンラインソフトのなかで、オススメのソフトはありますか。
「nPOP」ですね。Windows版だけでなくWindows CE版などがあるので、気に入って使っています。
□窓の杜 - nPOP
http://www.forest.impress.co.jp/library/npop.html
ソフトを作ってみたい人、ソフト作者になりたい人へアドバイスをお願いします。
漠然と「オンラインソフト作者になりたい!」と思う人がいるかもしれませんが、やはり自分がほしいもの、自分で使いたいものが最初にあって、それを作るというのが基本ではないかと思います。そしてそのソフトが、ほかにはない便利なソフトだから他の人にも使ってほしいという気持ちで公開するのがよいのではないかと思いますし、そのソフトがみなさんに受け入れられれば、シェアウェアの場合は儲かるということもあるでしょう。最初から流行させよう、儲けようというのは、私は何かが違うのではないかと思いますね。
私の「PRT++」の場合も、最初はフリーソフトの「PRT」を公開してみたら、思いの外みなさんに使っていただけたことと、それから各種OSの対応版を開発するためにたくさんのコンパイラーを買ったことがあって、少し寄付があればいいなという気持ちでシェアウェアとして公開したわけです。そんなわけで「PRT++」には機能制限も設けませんでしたが、それでも1万人くらいの方に登録料を払っていただきました。とはいっても、今とは状況も違いますし、古き善き時代だったのかなと思います。
今後、オンラインソフト全体はどうなっていくと思いますか。
私個人の考えとしては、シェアウェアという形態はなくなることはないと思いますが、今後は減っていってほしいと思っています。オンラインソフトの作者は同時にオンラインソフトの利用者でもあるため、開発者と利用者の双方にとって利益となるように、まずソフト自身はフリーで配布して、できるだけ多くのユーザーに使ってもらうのがよいのではないかということです。そしてソフトは無料でも、ソフトとは違った形態でサービスなどを有料でユーザーへ提供し、結果的にシェアウェア代金をいただいたことと同じになるという収益構造ができれば、ビジネスとしても成立させることが可能ではないかと思っています。
窓の杜へのご意見やご要望など、窓の杜に望むことはありますか。
「窓の杜」の前身である「秋保窓」は、私がソフトを探し回っていた時期でもあったのでよく見ていました。今は、編集部で選んだソフトを掲載するという方針で運営されているようですが、ある程度知識のある人から見れば、ソフトの数が多い方が探す楽しみがあって面白いのではないかと思います。
とはいえ、オンラインソフトのユーザーがこれだけ増えてしまうと、初心者の方にとっては定番だけあった方が便利かもしれませんね。窓の杜は作者さんのインタビューをしたり、いろんな記事が載っているあたりが、独自の方向性を打ち出せていると思いますので、がんばってほしいと思います。
読者のみなさんに一言お願いします。
もっとメールください(笑)。パソコン通信の頃は、ユーザーさんによるフォーラムへの書き込みやメールは当たり前だったのですが、今のユーザーさんは作者にメールを送るのは失礼だと感じてしまうのでしょうか。感想で構いませんので、もっと気軽にメールしてほしいですね。バグの報告や要望も、私ができる範囲でソフトへ反映したいと思っています。
これからもWindows CE、Pocket PC以外にたくさんのPDAが出てくると思いますが、「NextTrain」のデータを利用できる“リアルタイム時刻表ソフト”を、有志の方が各PDA向けに開発して下さればと思っています。また最近、OSにLinuxを搭載した“Zaurus”に注目していまして、こちら向けの「NextTrain」を誰か作ってくれないかなあと思っていたのですが、やはり出てきましたね。「ntrain」というソフトです。ソフトは違っても各プラットフォームで同じ「NextTrain」のデータが使えるよう、「NextTrain」の輪をこれからも広げていってもらいたいと思います。
□NextTrain on the Web
http://nexttrain.info/
□ntrain (SL-Zaurus用時刻表表示プログラム)
http://homepage.mac.com/tomorrows/zaurus/ntrain.html
□窓の杜 - NextTrain for Windows
http://www.forest.impress.co.jp/library/nexttrain.html
(川中 良二)