.
【第15回】
「クリケット・クロック」の作者
Wanderluster
生きていれば何か表現したいものがあると思います
(03/02/27)
窓の杜の読者のみなさんなら、それぞれに気に入って使い続けているオンラインソ
フトがあるはず。そしてそのソフトに愛着がわけばわくほど、どんな人が作ったのか
が気になってくるから不思議。そこで「このソフト作った人はどんな人?」では、普
段はお目にかかれないオンラインソフト作者さんに、「普段はどんなことをしているん
ですか?」「他の作者さんのオンラインソフトのなかでオススメのソフトはあります
か?」など、みなさんの代わりにお話を伺って、ソフトを作っている作者さんがどん
な人なのか、お伝えしていこう。
第15回目は、「クリケット・クロック」の作者、Wanderluster代表、三嶋さんだ。
まず職業、年齢と、趣味など普段なさっていることを教えて下さい。
|
三嶋さん |
パッケージソフトの製作及び販売を行う会社の開発部でSEをしています。年齢は36歳です。最近アウトドア系の趣味に走っていまして、山歩きなどしてます。アキバ巡りも好きですが(笑)。
オンラインソフトはいつ、どんな時間帯に制作していますか。
ソフトは企画が命ですから、いつでもです。たとえば、電車の吊り革につかまっているときや、風呂につかっているときなど、日常生活の中でアイデアがひらめくことは珍しくありません。実際の開発はほとんどは土日などの休みにします。
パソコン歴と最初に使ったパソコンを教えて下さい。
最初のパソコンは高校2年生の頃に買ったNECのPC-8801で、最初はもっぱらゲーム
をプレイして遊んでいました。そのうちゲームの仕組みに興味をもったのが、ソフト
制作をするようになったきっかけですね。その後PC-9801シリーズを使っていた時期
もありましたが、いわゆるWindowsブームの頃に富士通のFMVを買いました。そのうち
既製品では飽き足らなくなって、自作するようになって現在に至っています。ほかに
もショップブランドのパソコンや、ジャンク店で見つけてきた中古パソコンも使って
ます。
現在のオンラインソフトの開発環境を教えて下さい。
|
ソフトの開発に使用しているというマシン。開発は「Visual Studio 6.0」を利用しているそうだ |
“プログラム”“サウンド”“グラフィック”“ソフトを公開する為の各種サーバー”
など、何台かのマシンを目的別に負荷分散しながら使い分けています。これらのマシン
は切替器を2台を使うことにより、モニターやマウス、キーボードを2組用意するだけ
で済んでます。
プログラム作成用にはショップブランドのパソコンを使っていて、CPUがPentum 4
1.8GHzで、メモリ768MBで、「Visual Studio 6.0」で開発しています。
|
グラフィックスタッフ1氏は、紙、ペン、水彩、油彩などで絵を描いているそうだ |
|
|
グラフィックスタッフ2氏は、ソフトに使用しているグラフィックパーツやWebサイトの画像を作成しているとのこと |
グラフィックスタッフ1は、絵を描くときに紙、ペン、水彩、油彩などを使ってい
ますので、パソコンは主に通信に使用しています。
グラフィックスタッフ1の作成したグラフィックをデジタル化する場合は、グラ
フィックスタッフ2が取込み・編集作業を行います。グラフィックスタッフ2は、ソフ
トに使用しているグラフィックパーツのデザインと作成や、Webサイトの画像の加工
や編集を行っています。
グラフィックのリソース作成用のパソコンは、CPUにAthlonXP 1800+、メモリは512MB
で、ビデオカードにはATI製のALL-IN-WONDERを積んだ自作マシンです。
□Microsoft Visual Studio ホームページ
http://www.microsoft.com/japan/msdn/vstudio/default.asp
オンラインソフトを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
インターネット上には様々な人が色々なコンテンツを公開していますよね。みな
さん、たとえば日記や音楽や絵画など何らかの形で自分を表現しているわけです。そ
れで私も何かコンテンツを公開してみたいと思い、私の場合それがたまたまオンライン
ソフトという形をとっているのだと思います。
継続してソフトを作ろうと思う理由は何ですか。
私の場合、物事を多面的に見ようとする傾向があって、自分が見た一面に対してほ
かの人の意見を聞いてみたいというのがソフトを公開している理由です。オンライン
ソフトを作って公開すれば、ユーザーさんからそういう意見をいただくことができ、
そこが本当に楽しいのです。
オンラインソフトを作っていて辛いと思ったことはありますか。
|
部屋の水槽の様子は、ストリーミング配信されている |
実際の作成する作業は苦しいですけれども、辛いと思ったことはありません。登山
と同じで、作成の最中は苦しいですけれど、作成を終えて公開後のユーザーの方々か
らの反響は、登頂を終えた山頂からの素晴らしい眺めのようで、達成感と爽快感に満
たされます。
あなたのソフトを利用しているユーザーに望むことはなんですか。
私とは違う視点での意見を頂けだけたら幸いです。たとえばソフトに登場する桜の
木などのモノや動きは私なりのイメージで作成しているわけですが、ユーザーの方は
違ったイメージを抱くかもしれないですよね。それにまつわる思い出や印象といった
ものかもしれませんが、そういったものを聞かせてもらえるのがうれしいんです。
また、そのようにしてみなさんから頂いた意見を、新しいソフトの企画を考える際の
参考にさせていただくこともありますね。
お作りになったソフトの中で一番自信のあるものはどれですか。
現時点では「窓添水」ですね。一番バランスがよいと思っています。
□窓の杜 - 【今日のお気に入り】“ししおどし”をデスクトップ上で楽しめる「窓添水」
http://www.forest.impress.co.jp/article/2002/01/11/okiniiri.html
影響を受けたソフトはありますか(オンラインソフトでなくても構いません)。
ソフトというより、自然界のあらゆるものから影響を受けています。たとえば「窓
風鈴」は、浅草の朝顔市に行ったときに、軒先にかかっている風鈴を見て刷り込まれ
たイメージと、それとは別に尾根づたいを山歩きしていた際に受けた清涼感のある風
が、あいまって思いついたソフトです。
他の作者さんのオンラインソフトのなかで、オススメのソフトはありますか。
なんといっても「秀丸エディタ」で、HTMLやPerlを記述したり、ちょっとしたテキ
ストデータの加工など、あらゆる場面で利用しています。あと、最近タブ切り替え型
Webブラウザーの「Sleipnir」を使い始めたのですが、使いやすくて気に入ってます。
□窓の杜 - 秀丸エディタ
http://www.forest.impress.co.jp/library/hidemaru.html
□窓の杜 - Sleipnir
http://www.forest.impress.co.jp/library/sleipnir.html
ソフトを作ってみたい人、ソフト作者になりたい人へアドバイスをお願いします。
|
キーボードは、IBM製のものを利用している |
先ほども申し上げましたが、私の場合伝えたいことがパソコン上ではたまたまオン
ラインソフトという形で表現されているに過ぎません。ですから、ソフトを作る前段
階として、何を伝えたいのかを客観視して考えてみて、伝えたいことに合った表現方
法を選んでいけばよいのではないでしょうか。それがオンラインソフトでなくても、
広い意味でオンラインコンテンツ、たとえば俳句や写真といったものでも構わないと
思います。
生きていれば何か表現したいものがあると思います。まずはそれを見つけることが
重要ですね。
今後、オンラインソフト全体はどうなっていくと思いますか。
今後インフラの整備が進んでいくと、オンラインソフトというものを特に意識して
使うことがなくなっていくんじゃないでしょうか。
現在では、太い回線を手軽に利用できるようになり、ネットワークも昔とはだいぶ
変わってきました。OSも変化したと思います。そうなっていくとオンラインソフトは、
もっと当たり前のものになっていて、“インストール”という行為自体もなくなって、
気がついたらオンラインソフトを使っていた。そういう空気のような存在になるんじゃ
ないですかね。これはオンラインソフトに限らずほかのコンテンツもそうなると思い
ます。
窓の杜へのご意見やご要望など、窓の杜に望むことはありますか。
オンラインソフト作家達と窓の杜とのコラボレーションで作り上げるソフトの企画
や、その開発工程の始終を日記風に読者に伝えるような企画があると面白いですね。
読者のみなさんに一言お願いします。
上述しましたが、オンラインソフトという形にこだわらず、自然界全般を見て面白
いものの見方があれば、教えていただければと思います。
□Wanderluster
http://www.wnd.2y.net/
□窓の杜 - クリケット・クロック
http://www.forest.impress.co.jp/library/cricketclock.html
(齋藤 正穂)