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【第11回】
「EdMax」「EdTex」「EdBin」の作者
宮崎 年之さん
ユーザーあってのソフトですから、使っていただかなければ意味がありません
(02/10/17)
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宮崎 年之さん |
窓の杜の読者のみなさんなら、それぞれに気に入って使い続けているオンラインソフトがあるはず。そしてそのソフトに愛着がわけばわくほど、どんな人が作ったのかが気になってくるから不思議。そこで「このソフト作った人はどんな人?」では、普段はお目にかかれないオンラインソフト作者さんに、「普段はどんなことをしているんですか?」「他の作者さんのオンラインソフトのなかでオススメのソフトはありますか?」など、みなさんの代わりにお話を伺って、ソフトを作っている作者さんがどんな人なのか、お伝えしていこう。
第11回目は、「EdMax」「EdTex」「EdBin」の作者「宮崎 年之」さんだ。
まず職業、年齢と、趣味など普段なさっていることを教えて下さい。
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趣味のランニングではフルマラソンの出場経験もあるという |
48才のオンラインソフトプログラマーです。大学卒業から8年ほど前までは、(株)東芝に務めていましたが、現在は独立しています。趣味はランニングやハイキングです。以前はサークルに入ってあちこちの山に登っていましたが、今は主に近場の山で気軽なハイキングを楽しんでします。
オンラインソフトはいつ、どんな時間帯に制作していますか。
家業の手伝いも兼ねて、基本的には昼間、自宅で開発しています。最近は老眼のせいで、暗くなると資料などが見づらくなってきたということも、開発を昼間行っている理由ではあるのですが(笑)。
パソコン歴と最初に使ったパソコンを教えて下さい。
大学時代は大型機しかなかったので、プログラムした内容をカードパンチでカードに記録して、センターでプリントアウトするという方法でデバッグをしていましたね。東芝に就職してからはミニコンのOSの開発など基幹系の仕事をしていました。いわゆるパソコンと初めて接したのは、1986年にワープロ専用機“Rupo”の機能をパソコン用のワープロソフトとして移植する仕事ででした。そのパソコンというのが、国内初の16bitラップトップパソコンの“J-3100”です。
現在のオンラインソフトの開発環境を教えて下さい。
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開発にはWindows XP搭載の“VAIO PCG-GR3F/BP”と、「Visual Studio .NET」「Visual C++ 6.0」を利用している |
Windows XP上で、最新版の「Visual Studio .NET」と旧バージョンの「Visual C++ 6.0」を使い分けています。たとえば、シェアウェア版の「EdMax」は前者で開発していますが、「EdMaxフリー版」は後者です。
□窓の杜 - EdMax
http://www.forest.impress.co.jp/library/edmax.html
オンラインソフトを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
初めてパソコンの仕事をしたのはアプリケーションの開発で、私にとってはアプリケーションの開発も初めてのことでした。アプリケーションの開発はそれまでの基幹系の仕事と比べて、多くのユーザーさんの個々の感想をハガキなどで直接聞くことができますので、非常に面白いと感じたのを覚えています。このとき「こうやってユーザーさんの声を聞きながらソフトを作っていきたい」と思ったことが、現在のオンラインソフトの開発につながっていると思います。
また、会社という組織の中では、必ずしも自分がアプリケーションの開発に継続して携われるわけではありません。ですから独立して、アプリケーション、つまりオンラインソフトの開発に専念することにしました。
継続してソフトを作ろうと思う理由は何ですか。
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これまでで最も使いやすいキーボードは、“J-3100”に搭載されていたもの |
現在私が作っているアプリケーションは、OSとは違ってユーザーが直接使うソフトで、自分自身も日常的に使うわけです。自分でも使っているわけですから、ユーザーから届いた声の一つ一つを肌で感じることができるんですね。そうして肌で分かった機能なりを、実感を込めてソフトにフィードバックすることができる。これはとても面白い仕事だと思っています。
ちなみに、私の運営しているサイトの“Edcom”というのは、“Excellent”と“milD”に“COMmunication”を合わせた造語で、高機能だけれども使いやすく、そしてコミュニケーションによってさらに進化していくソフトといった意味を込めています。
オンラインソフトを作っていて辛いと思ったことはありますか。
う~ん、あまりありませんねえ。作成すること自体をつらいと思ったことは、一度もありません。どちらかというと没頭してしまう方なので……。まあその分、視野が狭くなったり、目を酷使してしまうということはあります(笑)。
あなたのソフトを利用しているユーザーに望むことはなんですか。
ユーザーあってのソフトですから、使っていただかなければ意味がありません。ですからみなさんに使っていただいて、ありがたい気持ちでいっぱいです。
お作りになったソフトの中で一番自信のあるものはどれですか。
今のところ、やはり「EdMax」ですね。たとえば、複数のサーバーへの接続をマルチスレッドで同時にこなしたりと、高度な処理も盛り込んでいます。もちろん、以前OSの開発に携わっていた経験が生きています。
影響を受けたソフトはありますか(オンラインソフトでなくても構いません)。
基本的にはあらゆるものから影響を受けていると思いますが、特に「Netscape Navigator」の初期バージョンに付属していたメールソフトが印象に残っています。パソコン通信系のソフトに慣れていた目には、3ペイン構成のウィンドウが斬新に見えたものです。いわば「EdMax」の原点ですね。
□Netscape Products Archived Products(Netscape Communications Corporationの過去のWebブラウザーをダウンロードできるページ)
http://wp.netscape.com/download/archive.html
他の作者さんのオンラインソフトのなかで、オススメのソフトはありますか。
オススメというわけではありませんが、自分でリリースしていないジャンルのソフトは、当然ほかの方のソフトを使わせていただいていますね。アーカイバーの「LHMelt」やFTPクライアントの「FFFTP」などを使っています。
□Micco's HomePage(「LHMelt」)
http://www2.nsknet.or.jp/~micco/micindex.html
□窓の杜 - FFFTP
http://www.forest.impress.co.jp/library/ffftp.html
ソフトを作ってみたい人、ソフト作者になりたい人へアドバイスをお願いします。
自分で使うもの、使えるものを作るべきです。そうでなければ、ユーザーからの意見もよく理解できませんよね。ですから、自分がほしいと思うソフトを作るのが良いのではないでしょうか。
今後、オンラインソフト全体はどうなっていくと思いますか。
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大切に保管されていた“J-3100”。電源を入れていただいたが入らず。無念 |
長い目でみたら、やはりグローバル化、国際化でしょうか。これからは、オンラインソフトも世界に目を向けて行く必要があるのではないかと思っています。日本の中だけではユーザーの数も頭打ちになりますからね。英語版をはじめとした外国語版のソフトを作る人が増えていくのではないでしょうか。
窓の杜へのご意見やご要望など、窓の杜に望むことはありますか。
同じく、窓の杜も国際化しないのでしょうか? また、例えば国産オンラインソフトの英語化を代行するのはどうでしょうか。オンラインソフトの国際化に何か役に立つことをしていただけたらと思っています。
読者のみなさんに一言お願いします。
昨年9月末にリリースした「EdRex」というテキストビューワーがあるのですが、このビューワー機能を活かしつつ、動作の軽快なテキストエディターをということで「EdLeaf」を先月公開しました。ぜひ使っていただければと思います。また「EdMax」のさらなる機能向上のほか、「EdMaxフリー版」はもっといろいろな方にお使いいただけるよう、インターフェイスの向上などを予定しています。これからもどうぞ“Edcom”のソフトをよろしくお願いします。
□窓の杜 - 【NEWS】テキストファイルの文字列を着色したりマーキングできるソフト「EdRex」v1.00
http://www.forest.impress.co.jp/article/2001/10/30/edrex.html
□窓の杜 - 【NEWS】アウトライン機能付きでSDI形式のタブ型テキストエディター「EdLeaf」v1.00
http://www.forest.impress.co.jp/article/2002/09/26/edLeaf.html
□窓の杜 - EdTex
http://www.forest.impress.co.jp/library/edtex.html
□窓の杜 - EdBin
http://www.forest.impress.co.jp/library/edbin.html
□Edcom Home Page
http://www.edcom.jp/
(齋藤 正穂)