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【第20回】
「RealSync」「DPEx」「Exif Reader」の作者、吉本龍司さん
「DPEx」は処理の速さを重視して作りました
(03/08/08)
窓の杜の読者のみなさんなら、それぞれに気に入って使い続けているオンラインソフトがあるはず。そしてそのソフトに愛着がわけばわくほど、どんな人が作ったのかが気になってくるから不思議。そこで「このソフト作った人はどんな人?」では、普段はお目にかかれないオンラインソフト作者さんに、「普段はどんなことをしているんですか?」「他の作者さんのオンラインソフトのなかでオススメのソフトはありますか?」など、みなさんの代わりにお話を伺って、ソフトを作っている作者さんがどんな人なのか、お伝えしていこう。
第20回目は、「RealSync」「DPEx」「Exif Reader」の作者、吉本龍司さんだ。
まず職業、年齢と、趣味など普段なさっていることを教えて下さい。
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吉本 龍司さん |
某大学の3年生で、21歳になったばかりです。そのほか高校3年のときに設立した、ソフト開発やシステム構築を行う有限会社アール・ワイ・システムの社長をしています。
プログラミング以外によくすることとしては、ビデオの撮影や編集が好きで自分でドキュメンタリータッチのビデオを作って楽しんでいます。「私的プロジェクトX作り」とでも言うのでしょうか。それでも、やはり趣味と言えるのはプログラミングだと思います。
オンラインソフトはいつ、どんな時間帯に制作していますか。
いつでもやっています。学校の授業中にもリモートデスクトップで自宅の開発用マシンに接続して、開発していますし(笑)。自宅では、一般的なプログラマのイメージと違って朝早く起きてやっていることが多いですね。夜12時頃に寝て、朝起きてやったりしてます。結構健全です(笑)。
パソコン歴と最初に使ったパソコンを教えて下さい。
はじめてパソコンを買ったのは小学校3年生の終わり頃で、日立製の“B16EX”という当時としても珍しいマシンでした(編集部注:“B16EX”は、MS-DOS 3.Xを搭載したAT互換機)。ですからパソコン歴は12年位でしょうか。
当時はNECのPC-98シリーズが全盛期で、BASICと言えば「N88BASIC」という時代だったのですが、“B16EX”に入っていたBASICは座標などのパラメーターが異なっていました。そのため、雑誌に掲載されているBASICのソースコードを入力してもパラメーターが違うので動作せず、自分で座標を計算して入力してました。とは言っても、当時はの僕にとってのパソコンはあくまでも“雨の日の遊び道具”という感じだったので、それほど夢中になっていたというわけではありません。
その後、小学校5年生の頃に、何故か高価な「Microsoft C」を購入してC言語に手をつけたのですが、その頃使っていたWindows 3.0を搭載したNEC製の“PC-98 CanBe”では、なぜかコンパイルに失敗していました。結局はハードディスクの空き容量が足りなかったことが原因でしたが、でも、当時はエラーの意味すらわかりませんでしたね。
□窓の杜 - N88互換BASIC for Windows
http://www.forest.impress.co.jp/library/n88basic.html
現在のオンラインソフトの開発環境を教えて下さい。
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お宅のマシン環境。各マシンを切り替えつつ、普段持ち歩いているノートPCも併用 |
CPUにPentium 4の1.5GHz、640MBのメモリを積んだ自作マシンで行っています。どこにいても開発できるよう、リモートデスクトップでこのマシンに接続できる環境を構築してあります。また、動作テスト用の2台のマシンには、Windows 95から、Windows Server 2003までのWindows OSをインストールしてあります。英語版もインストールし、切り替えて使っていますので、管理は大変です。
開発言語は「Delphi」のバージョン5/6/7を使い分けています。以前は「Borland C」や「Microsoft Visual C」、「Microsoft Visual Studio」も使ってみましたが、作成したソフトにDLLが不要なことや、メンテナンスが楽という理由で、今は「Delphi」に落ち着いてます。
オンラインソフトを作ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
“そこにパソコン通信があったから!”ということになると思います。パソコン通信も、最初はアクセスしていろいろな人の書き込みを見たり、メールをするくらいでしたが、様々なソフトが公開されているのを知ると、すぐに僕も作ってみたいと思うようになりました。
そして小学校6年生の終わり頃、パソコン通信サービスの“PC-VAN”と“NIFTY-Serve”にオンラインソフトを公開しました。宇宙船を着陸させるというようなゲームです。公開してみたかったから作ったソフトでしたし、非常に単純なゲームでもあったので、皆さんに使って頂けるとは思いませんでしたが、結構反響があってビックりしました。雑誌にも掲載されてうれしかったことを覚えています。
継続してソフトを作ろうと思う理由は何ですか。
基本的には“自分がほしいから”ということになります。でも、ソフトの名前を考えたり、ドキュメントを書いたり、アイコンを作るのが面倒で、公開せずに自分だけで使っているソフトもたくさんあります。
オンラインソフトを作っていて辛いと思ったことはありますか。
自分自身がアバウトな性格で、“致命的なバグがなければいいや”といった気持ちで作っているからでしょうか。あまり辛いと感じたことはありません。とはいえ、僕が作ったソフトのせいでみなさんにご迷惑をかけることはできませんから、公開前の動作テストは慎重にやっています。このアバウトな性格のせいで、バージョンを上げてリリースしたのにバージョン表記が古いままだったりすることはありましたね。
強いて辛いことを挙げるとすれば、SPAMメールやウイルスメールが本当にたくさん送られてくることですね。
あなたのソフトを利用しているユーザーに望むことはなんですか。
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「DPEx」「Exif Reader」各英語版公開後、サポートのために利用している英語用例辞典 |
シェアウェアとして公開している「DPEx」については、やはり料金は払ってほしいとは思っています。お支払いいただければ、お持ちのカメラでの動作など、サポートもしていますので。
話は変わりますが、各ソフトのアイコンをアイコンを作ってくれる方を募集しています。僕自身あまり絵がうまいと思っていませんので、有志の方がいてくださるとうれしいのですが……。
□窓の杜 - DPEx
http://www.forest.impress.co.jp/library/dpex.html
お作りになったソフトの中で一番自信のあるものはどれですか。
やはり「DPEx」ですね。処理の速さを優先して開発しましたから、この点についてはそれなりに自信があります。短時間に大量の画像ファイルを見て判断するような場面で利用するのに適したソフトではないかと思います。想定している場面としては、医療現場とか報道現場でしょうか。
逆に速度などの機能面を優先した結果、インターフェイスが少々特殊で使いにくいことがあるかと思いますが、今後は対応機種もどんどん増やしていますので、どうぞよろしくお願いします。
影響を受けたソフトはありますか(オンラインソフトでなくても構いません)。
「OPTOPiX」(編集部注:現在はバージョンアップして「OPTPiX webDesigner」という名称で公開されています)でしょうか。非常に高機能でありながら、シンプルなインターフェイスをもつソフトがスキですね。たまたま社長さんとお会いしたことがあって、そういう意味でも影響を受けたかもしれません。
□窓の杜 - OPTPiX webDesigner
http://www.forest.impress.co.jp/library/optpix.html
他の作者さんのオンラインソフトのなかで、オススメのソフトはありますか。
定番ですし、当たり前すぎる気もしますが、やっぱり「秀丸エディタ」ですね。ほかのテキストエディタも使ってみましたが、やはり「秀丸エディタ」です。使い慣れているというのもありますが、処理が速いほか、マクロ機能が非常が便利です。
また、「カシミール3D」は、本当にすごいソフトだと思います。感動したソフトのトップクラスに入りますね。フリーソフトなんですが、2、3万円で売られていてもおかしくないほどの高機能にも関わらず、実に動作が安定している点は、頭が上がりません。自分の住んでいる町を上からみて、フライトしたりして楽しんでます。
□窓の杜 - 秀丸エディタ
http://www.forest.impress.co.jp/library/hidemaru.html
□窓の杜 - カシミール3D
http://www.forest.impress.co.jp/library/kashmir3d.html
ソフトを作ってみたい人、ソフト作者になりたい人へアドバイスをお願いします。
抽象的な言い方ですが、抱え込まないことでしょうか。バグを抱え込まない、硬くならずに、軽い気持ちで作って、軽い気持ちで出すといいかなと思います。使ってくれているユーザーのことを考えると、“軽い気持ちで”とは言っていられないことが多いですから、あえて気楽に作るように心がけることをおすすめします。
今後、オンラインソフト全体はどうなっていくと思いますか。
多く使われているソフトの世代交代が進むのではないかなと思ってます。かつて、オンラインソフトと言えば、ゲームやテキストエディターなんかが主流だったと思いますが、最近のソフトを見ていると、徐々にジャンルが変わってきていると思います。マシンがスタンドアローンだった時代とは違って、前提としてネットワークが最初から存在する環境では、ネットワークを利用するソフトが多くなるといったことでしょうか。例えば「Winny」なんかはその典型ではないでしょうか。
また、ソフトの制作方法も変わってきていると思います。先の「Winny」もそうですが、まず最初にソフトの雛形になるようなものを一人がババッと作ってソースを公開し、それをあとからみんなで成長させていくというような感じに変わってきたと思います。そうなるとオンラインソフトは、作るのと同時に、どうやってコミュニティを作っていくのかというのも大きな部分を占めていくのではないでしょうか。
□Winny2 Web Site
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/2949/
窓の杜へのご意見やご要望など、窓の杜に望むことはありますか。
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学内のみで公開しているソフトの解説をしてくださった |
昔から見ていますが、収録しているソフトの更新が大変そうだなぁと思います。ご苦労さまです。
それから、先ほども話に出ました「カシミール3D」の作者さんにインタビューしてほしいですね。同じ作者として、ぜひお願いします。
読者のみなさんに一言お願いします。
前回のH.TOYOさんのインタビューで、“ユーザーからのメールが少ない”というお話がありましたが、僕もそれは感じます。大学内で口コミだけで公開しているソフトがあるんですが、ほとんど反響はないです。また、僕のホームページや窓の杜などで公開しているソフトも、若い人からのメールというのはほとんどないですね。かつて、パソコン通信の“NIFTY-Serve”のフォーラムで発言していたような世代からの反響は、現在でもありますから、やはり世代の違いかなと思います。
□Ryuuji's Homepage
http://www.takenet.or.jp/~ryuuji/
□HOME - RY SYSTEM
http://www.rysys.co.jp/
□窓の杜 - RealSync
http://www.forest.impress.co.jp/library/realsync.html
□窓の杜 - Exif Reader
http://www.forest.impress.co.jp/library/exifreader.html
(川中 良二)