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メタバースはビジネスシーンで活用できるのか? Metaverse EXPOレポート【CEATEC 2022】
2022年10月21日 06:55
日本国内でそれなりにメタバースを使ってあれこれしている層からすると、美少女アバターでいちゃいちゃするのが主たる用途になるが、もっぱらビジネス要件が中心のCEATEC 2022ではどうなのか。直近にはMeta Connectにおいて、MicrosoftとMetaの提携が発表され、「Meta Quest」に「Microsoft Teams」や「Microsoft 365」などが使えるようになる以外にも、ローソンがアバターによる接客の人員募集を始めるなどの動きもある。
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ビジネス方面でのメタバースは、先行する俺たちの「VRChat」などと比べると模索段階にある上、ARやMRも並走しており、VRに特化してといった動きはまだ少ない。マニュアルを参照しながらの作業やトレーニングへの利活用があるため、これはMRが先行気味だ。
もちろん、企業主導のメタバースとしては、KDDIとclusterがバーチャルイベントを展開 しているし、イベントの「バーチャルマーケット」も経済圏として機能しつつある(個人的には唯一の萎えどころである決済回りがよくなるとうれしいのだが)し、TGS2022においてもVR空間のウケはよかった。
そういったタイミングでのCEATECであり、またMetaverse EXPOであるため、注目度は高い。ただ、Metaverse EXPOの内容は以前に開催されたそれをそのまま持ってきたような雰囲気であり、各社ともに反応を見ているようだった。ビジネスユースとなると事情は異なるし、「Teams」でコラボできますといっても、「Excel」や「PowerPoint」であれば、従来通りの画面共有で済む。
複数のメーカーに取材をしてみたが、現時点では「人数を集める」のが目標との回答が多かった。当然、人が多くなければさらなる集客も期待できないし、新たなツールの登場も遠のく。そのため、もっともシンプルにブース展開をしていたMetaがもっともわかっていた 可能性もあるのだが、ともあれざざっとみていこう。
動向が気になるブースは別途記事を用意するとして、傾向としてみると「人数を集める」段階ながら、アプローチはイベント型、人材型、販売型、アバターに分けられた。パーソルマーケティングであれば、人材派遣をプッシュしており、HIKKYであればすでに一定の成果を出している「バーチャルマーケット」、楽天や凸版印刷は販売、pixivやREALITYはアバターとなる。そのほかにも大日本印刷はMR寄りでインカメラVFXのデモを行っていた。
トッパンから見ていくと、「MiraVerse」ショールームが注目を集めていた。トッパン自体はすでにデジタルアーカイブを展開しており、そのノウハウから色再現や質感に重点を置いたサービスになる。また販売についてもバーチャルショッピングモール「メタパ」を用意しており、商品を好きな角度から見たり、実寸大でAR表示をしたりできる。メタバースショッピングモールと謳っているサービスだが、トッパンによるとまずは従来のECサイトを拡張する形でといった相談を多く受けているとのことだ。
HIKKYはどうだろう。導入のしやすさや、メタバースへのアクセス手段のアピールが目立った。先行イメージはPCとゴーグルだが、実際にはPCでもスマホでもアクセスできる。これまで縁のなかった企業からすると、先行イメージがどうしても付きまとうため、その払拭の狙いもあったようだ。会場にはARグラス「nreal」とVRエンジン「VKET CLOUD」を利用したアプローチや、ポータブルゲームPC「Steam Deck」で「VR Chat」にログインしての体験もできた。個人的には2000年代のMMO PRG大繁殖期の雰囲気を思い出すが、そのときもっとも都合のいいデバイスで誰でもアクセスできることは重要だ。
NTTコノキューは「XR World」や「XR City」を展示。NTTコノキューはXR空間プラットフォーム「DOOR」も展開しているが、どちらかというと遠隔支援に力を入れているようだった。5G関連でもときどきデモとして登場するが、低遅延と接続安定性をもってリモートで物理的な作業を補助したり、またはロボットを操作したりといった狙いがある。リモート操縦についてはCEATECだと慶應義塾大学ハプティクス研究センターも出展しており、もっともイメージしやすいソリューションであったかもしれない。
JAXAブースは、国際宇宙ステーションの位置をリアルタイムで再現したVR空間を移動できる体験型のもので、長い列ができていた。身近でありつつ、2022年時点では遠い場所であり、メタバースの雰囲気つかみとしてよい素材ともいえる(無重力状態を経験したことがないため、没入的な要素は弱めだったが)。
Metaverse EXPOに訪れていた人たちにもいくつか話を聞いてみた。目立ったのは「上司からやれと言われた」であり、現状の報告資料作成のためが主な目的だった。アバターがあればできると想定されてしまっているケースもあれば、開発のコストはほとんどない前提のケースもあるなど、映像だ!配信だ!といったときと同じ展開なもするが、ともあれ、それだけ注目を浴びているし、少し前進したともいえるだろう。
中にはプライベートで「VRChat」にどっぷりな分、メリットやデメリット、導入上での問題点を把握しているが、その辺がバレないようにしつつ、わかりやすい資料が必要との声もあった(ところで、微妙な内股具合でハマり具合が分かったりしないだろうか。椅子に座るとき、すっかり脚を閉じるようになった皆さん)。
CEATECではこれまで遠隔操作の類は多くあり、その点では馴染みやすい要素もあるが、メタバースとなるとまた話は異なるし、「Second Life」の前例がどうしても出てくる企業もあるだろう。ただCEATECを見る分には、企業は慎重になりつつも前のめりであり、エコシステムもいくつか登場しているため、堅実に攻めやすくなっているともいえる。「アバターでパワポ投影会議」だけに終わらないことを期待したい。