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日本一高いビルがメタバースに! クラスターと近鉄不動産がタッグを組んで「バーチャルあべのハルカス」構想を発表

「つくる体験」と「コミュニティ」の組み合わせが新しい街づくりの形に

「バーチャルあべのハルカス」構想

 クラスター(株)と近鉄不動産(株)は11月9日、メタバースプロジェクト「バーチャルあべのハルカス」構想を発表した。同日に行われた発表会の場では、近鉄不動産・経営企画室部長の楠浩治氏とクラスター・代表取締役CEOの加藤直人氏が登壇。本事業の目的や意気込みを語った。

 舞台となる「あべのハルカス」は、大阪市阿倍野区にある日本一の高さを誇る地上約300mの超高層ビル。近畿日本鉄道の大阪阿部野橋駅、近鉄百貨店あべのハルカス近鉄本店、大阪マリオット都ホテルのほか、大阪の夜景が一望できる展望台「ハルカス300」や、イベントも開催可能な「天空庭園」といった施設が集まった複合商業ビルだ。

「あべのハルカス」

 今回発表された「バーチャルあべのハルカス」は、その「あべのハルカス」と周辺をバーチャル空間上に構築するという都市型メタバース構想。このバーチャル空間は、実際の「あべのハルカス」の管理・運営を手掛ける近鉄不動産と、国産メタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターが制作。クラスターが手掛けてきた法人イベントの中でも過去最大級規模となるバーチャル空間が新たに誕生することになる。

 本事業では、リアル空間での事業展開に強みがある近鉄不動産と、メタバースプラットフォーマーとしてバーチャル空間での事業展開に強みがあるクラスターがタッグを組むことで、リアルとバーチャルが融合した新たな「街づくり」の可能性を追求するという。

「バーチャルあべのハルカス」構想が達成しようとする3つの目的

 まず最初に登壇した近鉄不動産・経営企画室部長の楠浩治氏は、今回の「バーチャルあべのハルカス」構想の目的を説明した。その目的とは「リアルとバーチャルの融合」、「業種に応じたビジネスモデルの実証実験」、「インキュベーション機能を持つバーチャル空間」の3つだ。

近鉄不動産・経営企画室部長の楠浩治氏。3つの目的を達成するべく、クラスターと協力して「バーチャルあべのハルカス」を構築すると説明した

 1つ目の「リアルとバーチャルの融合」については、バーチャルイベントの動員実績や、巨大なコミュニティの構築などの強みがある国産メタバースプラットフォーム「cluster」と協力することで、リアルとバーチャルが融合した新たな「街づくり」の可能性を追求するという。

リアルとバーチャルが融合した新たな「街づくり」の可能性を追求

 また2つ目の「業種に応じたビジネスモデルの実証実験」については、近畿日本鉄道や近鉄百貨店、大阪マリオット都ホテルなど、それぞれの業種に応じた新たなビジネスモデルの実証実験を行うことを意味する。あわせて、この実証実験で得た顧客情報データを分析し、今後のビジネスに役立てる予定だ。

それぞれの業種に応じた新たなビジネスモデルの実証実験を実施予定

 最後の「インキュベーション機能を持つバーチャル空間」については、これまで天王寺エリアにはなかった若者やクリエイターが自由に創作できるインキュベーション機能を持つ空間を提供したいとの思いがあるという。そこでは同じ価値観を持ったユーザーの交流の場として、イベントなどを開催したいと考えているとのこと。

インキュベーション機能を持つバーチャル空間

 近鉄不動産によると、本構想の将来性としては「あべのハルカス」を舞台にした「都市型メタバース」の構築に続き、今後は「観光型」・「郊外型」といった「沿線全体」のメタバース化を図りたいと考えているとしている。

将来的には「観光型」・「郊外型」など「沿線全体」のメタバース化を図るという

リアルとバーチャルを融合させた体験を作っていく

 続いて登壇したクラスター・代表取締役CEOの加藤直人氏は、本構想について「これまでバーチャル空間だけに特化した施策は多く存在したものの、その中で『リアルとバーチャルを融合させた体験を作っていく』というのは世界的に見ても稀有なモノ」だと話す。

クラスター・代表取締役CEOの加藤直人氏。近鉄不動産と協力して「リアルとバーチャルを融合させた体験」を作っていきたいと語る

 加藤氏は「バーチャル空間には歴史やストーリーというのがまだ存在していない」として、バーチャル空間はなんでもできる空間で、いろんなキレイなものや、いろんな演出ができるのがバーチャル空間である。だが、何もないところに演出が入っているというのは人の心を動かさないと強調。「あべのハルカスに登った時に心を打たれる感覚はわかると思うのですが、そういった景観をリアルとバーチャルで融合させていく」というのが1つの取り組みになるという。

 その一方で「ただ、『あべのハルカスの展望台をバーチャル空間から見れます』だと片手落ちなので、バーチャルの強みであるなんでもできるということを活かし、例えば、外を近鉄の電車が走っているような、そういった世界観も十分に作れるというのもバーチャル空間の強みです」と説明した。

一例として「バーチャルあべのハルカス」から見れる夜景を紹介。バーチャルの強みを活かした演出を行うことを考えているという

 「あべのハルカス」にあるのがリアルのイベントスペース。「バーチャル空間にも同じスペースを作ることにより、連動型のイベントが行うことができるのではないか、とディスカッションを続けており、そこにいろんな可能性が秘めていると考えている」と語った。

 今回の発表会はリアル会場(大阪マリオット都ホテル)とバーチャル会場(cluster)の両方で行われたが、そのようにインタラクティブに何かが行われるというようなことが作れると、本当にここから先かなりの可能性を秘めていると考えているという。

リアルのイベントスペースを活用し、リアル空間とバーチャル空間が連携したインタラクティブなイベントの実施を想定

 ほかにも、加藤氏は「あべのハルカス」から外から広がっていろんな人を巻き込んでいくのが重要になってくると考えているという。

 近鉄不動産とクラスターが提供するものだけを楽しんでもらうのみでは片手落ちで、重要なのは「つくる」というキーワードだと語った。「メタバース」という世界がなぜここまで人の心を動かすかというと、「こんなものが欲しい、こんな世界があったらいいのに」というのを作れてしまうことにある。もう1つが「コミュニティ」で、ただ1回のイベントの施策に終わるのではなく、継続的に場を作り、コミュニティを作っていく、ということを通じて、最終的に生まれてくるのが新しい「街づくり」にほかならないと締めくくった。

「つくる」体験を大事にしたいと語る加藤氏
「つくる体験」と「コミュニティ」の組み合わせで生まれるのが新しい「街づくり」ではないかと強調

新しい「つくる」と「コミュニティ」の作用に期待

 これまでclusterには「バーチャル渋谷」、「バーチャル原宿」、「バーチャル丸の内」、「バーチャル大阪」など、リアルな場所を題材にしたさまざまなバーチャル空間が作られてきた。「バーチャル渋谷」はイベントなどで使われることが多いが、ほかのバーチャル空間は数回のイベントが行われたのみで、あまり活性に使われてるとは言えない状況だ。

 今回の「バーチャルあべのハルカス」の発表では、加藤氏から「つくる」というキーワードと「コミュニティ」というこれまでのリアルなバーチャル空間では存在しなかったキーワードが登場した。これまでのバーチャル空間は、運営側がユーザーに対して一方的にコンテンツや場所を提供するというもので、ユーザーから働きかけられるものはほとんどなかった。今回新しく登場したこの2つがうまく作用すれば、これまでのバーチャル空間とは異なる利用方法が生まれるだろう。また、リアル空間とバーチャル空間との連動も強調しており、それが上手く作用すれば面白いことができそうだ。

 「バーチャルあべのハルカス」は2023年3月にオープン予定で、具体的な内容は今後改めて発表される予定だ。